愛犬とカフェでゆったり過ごすなら 「ダウン」を教えてみよう
サーフィンやスケボーが得意な愛犬コーダと保護猫たちと暮らすドッグトレーナーの浅野さんから見た、犬や猫たちとの暮らしをつづります。
犬は良い結果を得るために行動する
犬が同伴できる飲食店に愛犬のコーダを連れて行くと、お店に自分から進んで入りたがります。カフェ以外でもお店には進んで入りたがるタイプのコーダ。それは彼にとって「良いことが起きるかもしれない場所」だからです。
前回、飼い主とカフェに同伴した犬の気持ちになってみたら、目の前にあるいい匂いのする食べ物を食べられず、飼い主が帰るまで待つ、いつ終わるのかわからない、私が犬ならほえてます! とお伝えしましたが、飼い主に長居させないためには、ほえるのが1番簡単で効果がある方法なのです。
「ほえる」と言う行動は、状況を変えるための犬の手段のひとつ。ほえることによって、自分にとって良い結果が得られた経験があると、犬とってそれを使うのが得策だからです。
良い結果とは、欲しいものやことが得られた場合と、嫌なことが取り去られた場合です。
ほえたら飼い主が見てくれて、おすわりと言って「食べ物をくれた」。ほえたら飼い主がカフェを出たので「退屈から逃れられた」。そのような結果を得ると、当然、ほえるのが手っ取り早いのです。
「ダウン」を教える
そもそもなぜ犬にトレーニングをするのかというと、犬が自らの状況を変えるための手段を自分が知っている行動の中から選択して、上手に使えるようにするためです。そしてその行動が、人間にとっても犬にとっても都合のいいものだと、ベストなのです。
行動の「手段の引き出し」を増やすことで、人間社会での犬の生きづらさを解消することがトレーニングの目的なのであって、私たちに従わせるためではありません。それもふまえてカフェでの過ごし方のトレーニングをご紹介します。
カフェに連れて来られた犬の選択肢の中で、選ばれたら人間が困る行動は「ほえる」「飛びつく」「リードや家具、衣類をかむ」「不適切な場所に排泄(はいせつ)する」など。そして望ましい行動は、「座る」「ふせている」「寝ている」です。
愛犬にカフェ同伴の際に望ましい行動をしてもらうには、その行動を選択した方が犬にとって良い結果になるように教えます。
教えておくと犬も人も都合が良く役にたつ動作は、飼い主が席に着いたら、犬は自発的にふせてそのままリラックスして寝ていることです。しかしそこに到達するためには、キュー(合図)でダウン(ふせ)の姿勢になれることを覚えておきたいところです。(※従わせるためではありませんので「コマンド(命令)」ではなく「キュー(合図)」と言います)
ダウンとは犬のひじ・胸・後ろの脚裏が地面についている姿勢のことです。
<ダウンの姿勢を教える>
1. トリーツを片手に握り(この時手の甲は天井を向き、爪は地面を向いているように持つ)、犬の鼻先に近づけて、地面に向かってゆっくり降ろしていき、犬のひじ・胸・後ろの脚裏が地面につくのを待ちます。ついたら「YES」など、短くて聞き取りやすい「正解の合図」を言い、トリーツを食べさせます。
2. これを2、3回したら、今度はトリーツを持たないで握りこぶしを、トリーツを持っている時と同じように地面に下ろしていき、ダウンの姿勢になれたら「YES」でトリーツ入れからトリーツを取って食べさせます。
3. 手の動きに合わせてダウンしてくれるようになったら、「ダウン」のキューで手を地面に下ろす動きをします。ダウンの姿勢がキープされていたら「YES」と言って、再びトリーツを渡します。
これを練習すると「ダウン」と言って手を地面の方に下げると、ふせた姿勢になるはずです。
姿勢がキープされていたら「YES」で、再びトリーツを渡します。ダウンが終わったら次の行動のキューを出します。(うまくいかない場合は要因がさまざまありますし、教え方もいくつかレパートリーがありますので、スクールまで連絡をください)
ダウンが上達したら次は刺激を加えて練習してみましょう。
- 時間の長さ どのくらいキープできるか時間を長くしてみる
- 距離の長さ ハンドラー(飼い主やリードする人)とどのくらい離れられるか距離をとってみる
- 環境の多様性 室内、外、駅、カフェなど色々な場所や環境でできるか。立ったまま合図を出すのか、椅子に座って合図をするのかなどバリエーションを変えてみる
- 報酬の配分 トリーツのグレードや渡す頻度を変える
これと同時に、常日頃からやっておきたいのが「犬の自発的な望ましい行動に、YES&トリーツ」です。それができていると、犬は自分が持っている行動のレパートリーの中から、飼い主が望ましいと思う行動を自発的に選択しできるようになります。
「リラックスダウン」をしてみよう
たとえば落ち着いて横たわっている状態を増やしたいと思ったら、私は、家のなかでコーダがリラックスした状態でふせたり、横たわった姿勢になっていたりする時に「YES&トリーツ」をします。他の行動をしているときは、特に何もしません。
そうしたことで、特にキューを出さなくても「立ち話をする」「動物病院の待合室のベンチに座る」など、コーダが少し長く待つときに、この「リラックスダウン(リラックスした状態で地面に横たわる)」を自発的にしてくれるようになりました。私も助かるし、コーダ自身も楽なので「ありがとう」の声かけだけでも、行動は継続されています。
さらにカフェでの成功を助けるためには、リラックスダウンのためのカフェマットを使ってその上にダウンするトレーニングをして、カフェにそのマットを持って行ってみてください。愛犬は「どこに居ればいいのかな?」ではなくて、「いつものマットだからここにダウンしよう!」となります。
散歩や排泄も済ませて欲求不満ではないことや、他の犬、他人、音や物など犬が苦手な対象に心が追い詰められることのない場所に着席できるかどうか、成功しやすい環境をセッティングして、臨んでみてください。
上手に過ごしてもらえるようになると、ひとりでカフェへ行くより愛犬と一緒の方が心は安らぎます。愛犬用のフードも注文して、一緒に食事するのもなかなかいいものです。愛犬も食べ物を得る可能性があるという理由だけでカフェに入りたがるのではなく、飼い主と一緒に過ごせる時間を気に入っているかもしれません。
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