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保護犬を迎えるという選択肢 犬と暮らしたいと思ったら、15年先まで見つめて考える

 犬を迎えたいと思ったら、選択肢に保護犬も入れてみませんか? 保護犬というと特別なイメージを抱きそうなところですが、犬を迎える、犬と暮らすという上では、他のそうでない犬とじつのところ大きな違いはありません。

 当連載では、7回にわたって「保護犬の迎え方」を紹介していきます。第1回は、そもそも保護犬とはどんな犬なのか、また行き場のない犬たちがいるのはなぜなのか、日本の現状についてもふれていきながら、「犬と暮らす」ということを改めて見つめていきます。

保護犬ってどんな犬?

 保護犬とは、さまざまな事情から保護された、行き場のない犬全般を指します。ブリーダー崩壊や多頭飼育崩壊の現場から救助された犬や、何らかの事情で飼育放棄された犬、山や街を放浪していて捕獲された元野良犬などが該当します。

(アニマルレフュージ関西提供)

 それでは「保護犬」と聞くと、どういうイメージを思い浮かべるでしょうか。飼い主に捨てられたかわいそうな犬? 子犬、それとも成犬や老犬? 純血種、それとも雑種? フレンドリーな犬、それともビビりな犬?

 これらはどれも正解と言えます。ひと言で「保護犬」と言っても、犬種や体のサイズ、年齢、経歴、性格など、じつにさまざまな犬がいるからです。

 このことは、ペットショップに並ぶ子犬たちも何ら変わりはありません。その歴史において異なる経歴をたどったいくつもの犬種が存在し、気質も体のサイズもそれぞれに異なります。さらに同じ犬種の犬であっても、同胎で生まれてきたきょうだいでさえも、おっとりしていたりやんちゃだったりと性格は異なります。保護犬であってもそうでなくても、その子はその子として向き合う必要があるという点では、みな同じなのです。

保護犬が生まれる日本の現状

 保護犬に共通していることは、飼い主のいない、行き場のない犬であるということ。ではなぜ、保護犬が生まれてしまうのでしょうか。現在における犬をとりまく日本の問題にふれながら、同時に何が必要であり大切かを見ていきましょう。

殺処分ゼロと同じぐらい大切な、保護犬のQOL

 保護犬の問題が注目を集めている昨今の風潮もあり、犬の殺処分数がなかなか減っていないような印象を持っている人も多いかもしれません。しかし、じつは日本における犬の殺処分数は、ここ数十年で飛躍的に減少しています。

 環境省の統計によると、2021年度の犬の殺処分数は2,739匹。10年前の10分の1以下、30年前と比べて250分の1ほどまで減っています。一方で、犬・猫を合わせるといまだに年間1万匹以上が殺処分されているのも事実ではあります。

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 環境省の動物愛護管理室に「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」が立ち上げられ、殺処分ゼロに向けた取り組みが本格的に始まったのは、2013年のこと。保健所に動物を持ち込んだ人を説得して引き取りを拒否したり、収容された動物の譲渡を促進したりといった取り組みが進められました。

 ただ、「殺処分ゼロ」を達成するために、動物愛護センターに収容し続けたり、民間の保護団体の引き取りを増やしたりした結果、パンク寸前になっている愛護センターや保護団体も存在しています。最近では、北関東のとある愛護センターで、犬の収容数が増えすぎ、犬同士の殺傷が起きるなど悲しい事故も起きました。

 単に殺処分数が減るだけでなく、生かされた犬たちのQOL(生活の質)が保たれているかどうかを考えることも、大切な視点なのです。

繁殖流通販売システムの問題

 日本で保護犬が生まれてしまうのには、「繁殖流通販売システムの問題」と「野良犬問題」が主な理由としてあげられます。

 まずは、繁殖流通販売システムの問題から考えていきます。

 ある犬種に人気が殺到すると、その子犬をたくさん用意するために、繁殖業者は繁殖犬に頻繁に妊娠・出産をさせたり、血統や遺伝病などを無視した交配をさせたりと、無理な繁殖を繰り返すことになります。その結果、繁殖犬が非人道的な扱いを受けたり、遺伝的に問題のある子犬が産まれたり、母犬から早く離されるなど子犬の生育環境が整っていなかったりといった問題が起こります。

 動物愛護法の2019年改正(一部を除き2020年施行)では、幼齢犬猫販売の56日規制や飼育環境の数値規制など、それまでより厳しい規制が導入されました。それでも、繁殖業者による悪質な繁殖がなくならないのが現実です。

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 また、ペットショップにお客さんが来たときに人気の子犬が店頭に並んでいる状態を保つためには、ある程度子犬の“在庫”を用意しておく必要があります。しかし、売れないまま時間が経つにつれて子犬は大きく成長し、最終的に遺棄されたり、営利目的で保護活動をする団体に引き取られ、「保護犬」と称して流通させていくというねじれ(下請け愛護)が生じたりしています。

 さらに、ペットショップだとお金を出せばすぐに子犬を購入できるため、よく考えず衝動買いした結果、犬との暮らしが想像と違っていたり、子犬の健康状態が悪かったりといった理由で飼い主が手放すということも起きています。

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 日本にある繁殖流通販売システムは、多くの人に幸せな犬との暮らしを届ける一方で、繁殖業者が虐待とも言える飼育や繁殖を行ったり、犬たちを世話しきれず崩壊したり、繁殖引退犬や売れ残った子犬が放棄されたり、飼育放棄されたりするという、保護犬の作出に加担する側面を持っているのです。

野良出身の保護犬たち

 繁殖流通システムと別にあるのが、野良犬問題です。都市部で野良犬を見かけることは少ないですが、地方には今でもたくさんの野良犬がいます。野良犬の中でも、人にはかかわらず、山中などで野生動物のように暮らしている犬を「野犬」と呼び分けることもあります。

 何も対策をしないと、不妊・去勢をしていない野良犬は妊娠・出産をして、どんどん増えます。日本では、狂犬病予防法によって、飼い主不明の犬を都道府県が抑留しなければいけないことになっており、地方の動物愛護センターや保健所には捕獲された野良犬やその子犬たちが多数収容されています。

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 収容された野良犬たちは、殺処分から救うため動物愛護センターのもとに置かれたり、保護団体などによって引き出されたりすることで保護犬となります。近年は、これらの元野良犬たちが、引き取り手のより多い都市部に送られ、譲渡されることも増えています。

 これまで人とのかかわりが少なかった元野良犬は、散歩やふれ合いなど、家庭犬として慣らしていくのに時間や労力が必要となることもしばしばあります。それでも、新しい家族とともに、見違えるような変化や成長を遂げた元野良犬は多く存在します。安心できる住処と健康的な食事、そして信頼できる家族に守られた生活はどの犬にも必要であり、人間のよきパートナーとなりうる犬本来の姿を呼び覚ますことにつながるのです。

保護犬でも、犬は犬

 殺処分される犬や、シェルターなどで暮らす保護犬を減らすためにできる大きなアクションの一つが、保護犬を家族に迎えることです。「犬を迎えたい」と思ったときには、選択肢の一つとして保護犬を検討してみましょう。

 いろいろな背景のある保護犬は初心者向きではないかというと、そんなことはありません。保護団体がマッチングやアフターケアをしてくれることで安心して犬との暮らしを始められるといったメリットもあります。

 犬と暮らすということは、その子が犬生をまっとうするそのときまで、ともに歩んでいくということです。相手が命ある生き物である以上、楽しいことばかりではなく、育犬の難しさや病気、老いなど、困難が立ちはだかることもあります。このことは保護犬であろうが、ペットショップやブリーダーにいる犬であろうが関係なく、すべての犬との暮らしにおいて等しく言えることです。

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「救うため」ではなく、「これから先の10年、15年を、犬とともに生きていきたい」、そんな思いで、ぜひ保護犬を迎えにいってあげてください。ここまで見てきたように、保護犬にもじつに多様な犬がいます。家族のライフスタイルにぴったり合う子が見つかれば、最高に幸せな犬との暮らしが待っているはずです。

●監修=奥田昌寿(認定特定非営利活動法人 アニマルレフュージ関西
(取材・文/山賀沙耶)

次回は、「保護犬はどこから迎える?」をお送りします。

(次回は10月27日公開予定です)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
保護犬の迎え方
日本には、さまざまな事情から保護された行き場のない犬たちがいます。犬を家族に迎えたいと思ったら、選択肢に保護犬も入れてみませんか?当連載では、7回にわたって保護犬の迎え方を詳しく紹介していきます。
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