音楽でネコのストレス行動が減る 無音とクラシック音楽、ネコ専用音楽で調査
ネコに聞かせるための音源やCDを愛猫に試したことはありますか? ヒトにとって音楽はリラックスする効果があると知られています。では、同じようにネコも音楽による癒やしの効果はあるのでしょうか。
今回は、ネコがストレスを受けた時に、音楽がどのような影響を与えるかについて調べた論文" Effects of music on behavior and physiological stress response of domestic cats in a veterinary clinic" を紹介します。
ネコ専用音楽ってどんな曲?
ヒトの医療現場では音楽療法が治療のひとつとして使われることがあります。例えば、治療の補助として音楽を導入することで、検査時の恐怖を緩和してくれたり、回復時間や入院期間が短縮するといった効果が知られています。
またイヌの場合、クラシック音楽がストレス行動を減らし、不安を軽減させるといわれています。一方で、動物病院での調査では、クラシック音楽を流すことで飼い主さんと獣医さんの不安は軽減したものの、イヌ自身への効果はみられなかったとか。さらに、ネコへの影響や効果についての調査はなされていませんでした。
そこで、アメリカ・ルイジアナ州立大学の研究チームは20匹の健康なネコを対象に、ネコと音楽の関係性について調査をおこないました。調査は2週間おき、全3回の健康診断中におこないました。用意した音源は、無音、クラシック音楽、ネコ専用音楽の3曲です。クラシック音楽だけでなく、ネコ専用音楽を用意して調査したところがこの論文の面白いところです。
クラシック音楽はGabriel Faureの「Élégie」という、ヒトの安静時の脈拍数 (毎分 66 ビート)に近い曲を使用しました。ネコ専用音楽はDavid Teie がプロディースした「Scooter Beer‘s Aria」という曲を使用しました。これは、ネコのゴロゴロ音やネコの安静時の心拍数に近いリズムかつ、ヒトの声域より2オクターブほど高いネコの声域(55-200ヘルツ)に近い周波数を用いた楽曲とのこと。実際の音源をYouTubeで聞くことができます(こちら)。
調査手順は、まず飼い主がネコを動物病院に連れてきたら、キャリーに入った状態のまま待合室で10分間曲に慣れさせます。次に、キャリーからネコを出し診察します。診察中も曲は流れており、診察が終わると曲を止めてキャリーに戻し終了します。
解析方法は、診察時に撮影したビデオデータから、ストレススコア(cat stress score (CSS))とハンドリングスケールスコア(handling scale score (HS))を解析し、さらに生理的な指標として採血した血液中の好中球とリンパ球の比率(NLR)を測定しました。
ネコ専用音楽を聞く聴くとストレス行動が減る!
調査の結果、無音とクラシック音楽を聴いている時のネコのストレススコア(CSS)に差はありませんでしたが、無音とネコ専用音楽、クラシック音楽とネコ専用音楽では、ともにネコ専用音楽を聴いている時にストレススコアが下がっていることがわかりました。
ハンドリングスケールスコア(HS)についても、ネコ専用音楽によって獣医師の扱いにおとなしく応じたという結果になりました。ただ、生理的な指標(NLR)については差がなかったとのこと。
今回の調査から、ネコ専用音楽が動物病院にきたネコのストレスを軽減させることがわかりました。長期入院中の影響などはまだわかっていないため、今後の研究に期待したいです。
動物病院という不慣れな場所で少しでもネコが落ち着けるよう、かかりつけの動物病院でどんな音楽が流れているかぜひ確認してみてください。もし何も音楽が流れていなければ、待合室で愛猫に「Scooter Bere’s Aria」をスマホなどで聴かせてあげてもよいでしょう。
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