寂しがりやの猫「はち」 留守番はホテルをやめてペットシッターに託すことに
元野良猫「はち」を家に迎えてから半年が経った頃、はちが家に慣れたことを機に、ツレアイと私は2泊3日で旅行に出かけた。はちは、かかりつけの動物病院のペットホテルに預けたが、ケージ内で鳴き続け、帰宅して2日後に体調を崩して発熱した。
ペットホテルでおとなしく過ごせる猫もいる。先代猫の「ぽんた」はそうだった。だが、はちはそういう性格ではなかった。
だからそれから2カ月後、再び数日間家を空けることが決まったときは、ペットシッターを頼むことにした。
ペットシッターにお願いすることに
動物を飼った経験のない人にペットシッターについて話すと「そんな職業があるの」と驚かれる。
ペットシッターとは、おもに飼い主の留守中に、飼い主に代わって動物の世話をする専門家だ。食事の世話、トイレの清掃、散歩など、飼い主が旅行だったり、出張だったり、または入院中などで不在の間、動物の生活に不自由がないようにしてくれる。
ペットシッターを頼む一番のメリットは、動物たちが普段と変わらない環境で過ごせるため、ストレスがかからないことだろう。ペットホテルへの送迎の手間や時間も省くことができる。しかも部屋の換気や、郵便物の取り込みもやってくれるので、防犯対策にもなる。
だが、他人に自宅の鍵を預けることや、留守中に家に入られることに抵抗を示す人はいる。その気持はわからなくはない。
私が、ペットシッターを依頼することに躊躇(ちゅうちょ)しなかったのは、一人暮らしで猫を飼っている叔母が、長年このサービスを利用していたからだ。
叔母は、猫を専門とした、キャットシッティングを行う会社に斡旋(あっせん)を頼み、毎回、決まった人に来てもらっていた。海外旅行にでかけることも多かった叔母は、このシッターさんを大変信頼していた。やや気難しく叔母以外には気を許さない彼女の愛猫も、懐いていたと聞いた。
打ち合わせは綿密だった
叔母が頼んでいた会社は、私が住むエリアは出張対象外とのこと。それで、インターネットで検索し、いくつか同業者を調べた。その中で、大手ペットシッター会社とフランチャイズ契約を結び、私の自宅近所で猫を含めた小動物専門にシッティングを行っている女性を見つけた。Nさんといい、メガネをかけたショートカットの女性で、掲載されている写真のおおらかな笑顔にひかれた。
早速メールを送り、電話で話し、事前打ち合わせのために自宅にNさんが来ることになった。
Nさんは落ち着いた40代ぐらいの女性だった。「ペットカルテ」を作成するとのことで、聞かれるままにはちの年齢や性格、食事の回数や量、普段の過ごし方、トイレの回数、好きなことや癖などを話す。
人から、自分の猫のことを聞かれるのはうれしい。ついつい冗舌になる。
かかりつけの動物病院と、担当獣医師の名前も尋ねられた。何かあった場合は、病院にも連れて行ってくれるという。
そうこうするうちに、はちがトコトコとリビングに現れた。ものおじせずにそのあたりを徘徊(はいかい)し、壁や椅子に顔をこすりつけた。
「フレンドリーな猫ちゃんですねー」とNさんは笑顔になり、ソファから立ってしゃがみ込み、スマートフォンで写真を撮った。この写真は、あとでテストを兼ねて、メールで送ってくれるという。留守中の様子は、紙での報告書と、写真付きのメールで知らせてもらうことになっていた。
シッターさんの訪問時には隠れていっさい顔を見せない猫もいるそうだ。はちの場合は、まったく問題はなさそうだとNさんは言った。
続いて、具体的に世話をしてもらうための細かい打ち合わせをした。トイレの場所、食事や水を飲む場所を実際に見てもらい、猫砂の処理の仕方や食器の洗い方、使用する洗剤や布巾についても聞かれるので説明する。フードを保管してある棚、掃除道具をしまってある納戸などは扉を開けて中を見せた。
特に変わったことはしていないつもりだし、普通にやってくれれば、という気持ちだから、こちらの説明は大雑把になる。だがNさんは細かく私に質問をし、メモをとる。同じようでいて、各家庭にそれぞれやり方があり、それをしっかり把握するのがプロの仕事なのだろう。
シッティングは1日1回、所要時間は1時間程度、とのこと。
合鍵は、シッティングの日が近くなったら受け渡しを行うことにして、この日は終わった。
いよいよシッターさんに預ける、その直前に
無事鍵も渡し、私たちの出発が2日後に迫った朝だった。
キッチンの椅子に座って日なたぼっこをしているはちの顔を見ると、右目をしょぼしょぼさせている。
「どうしたの!」と駆け寄って確かめる。目やにがついているわけでもなく、目そのものに特に変わったところは見当たらない。だが、明らかに昨日までとは様子が違うので、すぐに動物病院へ連れて行った。
診察の結果、眼球にわずかだが傷がついているという。おそらく、おもちゃか何かで遊んでいるときについたものだろう、とのことだった。
「大したことはないので、毎日目薬をさしていれば治るでしょう」と、1週間分の目薬を処方された。
目薬を猫にさすのは初めてだ。果たして、ちゃんとできるのだろうか。
それ以上に留守中のことが気になった。
(次回は12月2日公開予定です)
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