「マル」二度目の白内障手術 進歩する獣医療とそこにある思い
元繁殖犬で保護犬のマル(推定7歳)は、いわゆる“ブリーダー崩壊”から『Wonderful Dogs』の岩渕友紀さんにレスキューしていただいたときから、体重オーバーと白内障を抱えていました。
お兄ちゃん犬の保護犬、ハンターを連れてお見合いに行き、私たち家族がマルを迎えることを即決した帰り、岩渕さんはスタッフの皆さんと「本当にキャロット(岩渕さんがつけてくれた、マルの旧名)でいいのかなぁ」と話されたことを後から聞きました。
繁殖犬として、がんばったマル。おそらくただただ食べさせられ続け、体重が7キロ近くあったマルを、とにかくゆっくりさせてあげたい、愛してあげたい……の一心で、私には全く迷いはありませんでした。
進行してしまった右眼の白内障
以前も書かせていただいたように、当時からマルの左眼は素人目にもわかるほど白くなっていて、右眼は「まぁまぁ白いけれど、これはスルーしていただきたいなぁ」という希望的観測の状態でした。
昨夏、思い切って『安部動物病院』で左眼の手術をしていただき、大成功! 私は初めて見るマルの“黒目”に感動し、その黒目に映る自分の顔に喜びを感じたものです。
しかし、黒々と輝く左眼に比べ、右眼は以前より白くなってしまったような……。その素人目は正しくて、『安部動物病院』の院長先生も、「右眼が急激に進行してしまいましたね」と仰るではありませんか。
白内障手術への迷いと決意
うーん……、どうしよう……。まず頭に浮かんだのは金額のことでした。左目の白内障手術には約40万円かかったので、年末に向けて、何かとお金が出ていくというときに、また40万円??? と思ったのは正直なところです。
でも、左眼の術後検診は、間隔は空くようになったものの、まだ続いていたし、1日に4種類の目薬を3回に分けて点眼することも続いていました。「やっぱり……早めにやっちゃった方がいいですよね?」と、決意の後押しをしてくださいと言わんばかりの質問を院長先生にぶつけると、「……まぁ、そうですね」と。
2度目の手術も成功!
そこからは本当に速くて、12月の初旬にマルは右眼の白内障手術をしていただきました。
前回は、当日朝の絶食に少々失敗したのですが、今回は早朝からマルを外に連れ出し、ココとハンターには「戻ってからね」とおあずけすることで、マルの絶食に成功。
病院のある台東区入谷までの道中もスムーズで、マルも通い慣れていたことから、前回ほど不安な顔はしませんでした。
手術時間も前回より早かったような気がしますし、実際、麻酔から覚めた時間も早く、報告のお電話も早めにちょうだいできました。
当日の夕方、面会に行ったところ、マルは診察室からチョコチョコと歩いて出て来て、私を見つけ、大喜びで飛びついてきました。面会用の部屋を用意していただき、約30分、抱っこをしながらマルに「がんばったね」「あと3日、おうちに帰れないけど、ガマンしようね」などと話しかけていました。
術後も良好。早めの退院に歓喜
30分の面会後、別れを察知したマルは、再び私に飛びついてきました。その姿に、何度も入退院を繰り返した長女・ピンのことを思い出して、涙が出て来てしまいました。
犬はみんな、飼い主の家が大好きなのに、こうして入院させなければならないのは、犬も飼い主も本当に辛いこと。特にピンは家が大好きだったのに、動物病院の言いなりになって、なぜ、あんなにも入院させてしまったのか。また自分を責めまくりました。
翌日の夕方も面会に行くと、なんと院長先生が「経過が順調なので、もう、連れて帰ってもいいですよ」と言ってくださるではありませんか。実はその翌日は、私は仕事で名古屋に泊まらなくてはならず、もしもマルに何かがあったらすぐには飛んでいけない……と心配を募らせていたところだったのです。
「え? いいんですか? 連れて帰ります!」と即答させていただき、マルと一緒に大喜びで帰宅の途につきました。
左眼の手術のときには、あんなに心配だったのに、2回目はマルも私もド~ンと(?)構えていたように思います。
白内障手術を支える技術と思い
マルの白内障手術には、コンタクトレンズでおなじみの『メニコン』が人の眼科分野で培った技術をベースに動物眼科医療の分野へ参入し、設立した『株式会社メニワン』の犬用眼内レンズが使われています。
実は『メニコン』の田中英成社長は、『エンジン01文化戦略会議』の「動物愛護委員会」のメンバーでもあり、マルの最初の白内障手術の原稿を「sippo」で読まれたそうで、すぐにメールをくださいました。
3年前、『メニコン』の本社で「動物愛護委員会」のメンバーとトークセッションをさせていただいたことや、「川島なお美動物愛護基金」の贈賞式の際、毎年、田中社長が多くのメディアに声をかけてくださること。そして、日頃から犬や猫の健康をサポートする製品開発に熱心に取り組んでいらっしゃることなどをいっきに思い出しました。最初の時は、白内障手術をするという大きな決断と、たくさんの気がかりや心配のせいで、私は咄嗟に田中社長との御縁が浮かばずにいたのでした。
ちょうだいしたメールの中で田中社長は、犬や猫の眼科手術へのハードルが下がることも強く望んでいらっしゃいました。
『安部動物病院』の院長先生も、「こうした開発がなければ、動物の眼科治療がここまで進むことはなかった」と言います。さらには「採算度外視で開発されていらっしゃる」とも話しておられました。
決心し、左眼に続き、右眼の手術もやっていただき、本当によかった……と心から思っています。両目がクリアに見えるからなのか、マルは表情が豊かになり、ますますかわいくなりました。私の親バカもまた、進んでいます。
(次回は2月4日公開予定です)
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