猫の預かりボランティア涙の奮闘 出産に立ち会いホロリ、譲渡先が決まってホロリ

2匹の子猫
4回目の預かり猫、「ホップ」(左)と「ホッピー」

 幼い頃から猫を何匹も飼ってきた女性が、45歳を過ぎて、初めて「預かり」を始めた。保護主などから、家族が決まるまでの一定期間、猫を預かって育てるボランティアだ。怪我させないよう、病気にさせないよう、とにかく必死。問い合わせが来ても、送り出しても、幸せな報告を聞いても。ついぽろぽろ泣いてしまう……。アツく真っすぐに奮闘する日々を紹介します。

(末尾に写真特集があります)

心が忙しい、預かりボランティア

「グレーと白の子が雄のホップで、黒白の子が雌のホッピー。きょうだいです」

 10月半ば、東京都足立区に住む成田さん(46歳)の家を訪ねると、居間で2匹の可愛い子猫が仲良く遊んでいた。

「8月末からうちで預かっています。生後2カ月ちょっとですが、来た時から3倍以上の大きさになりました。よく育ってくれた!」

 そう言って2匹を抱き上げ、ほっとしたように笑う。

「もう毎日必死で。ちゃんと育つかなと不安で、育ったら、今度は家族を見つける時にドキドキして。大丈夫だろうか、幸せになるだろうかと心配して、預かりを初めてから 、世話の忙しさに重ねて“心”が忙しいんです。いろんなシーンで涙腺も崩壊、悲しくてもうれしくても(笑)」

預かりボランティアを始めたのは、1年前からで、ホップたちは4回目の預かりっ子だという。

2匹の子猫
思わずきゅんとなる「ホップ」と「ホッピー」の寝顔……(成田さん提供)

 成田さんの家には、20歳の雌の「9(きゅー)」を筆頭に、11歳の雄の「8(はち)」、4歳の雌の「3番(さんばん)」と、3匹の飼い猫がいる。成田さんは、幼い頃からずっと、拾ったりした猫を飼ってきた。実家にも現在2匹の猫がいて、そのうち1匹は21歳の大長寿。

 しかし、預かりは、これまで経験したことがなかった。

「きっかけは、近所で保護活動をする中山亜子さんと知り合ったこと。私の家の周辺に野良猫が増えて避妊去勢などが間に合わず、車にひかれた子猫の姿も目にするようになり、困っていた時に、(知り合いから聞いて)亜子さんに相談にいったんです。『どうしたらいいですかー?』と突撃する感じで」

 亜子さんは『猫部はなはた』として、地元足立区に限らず他地域の猫のTNR、子猫の保育・育成をすることも多く、自宅(のシェルター)には常に複数の猫がいる。近頃は飼育崩壊現場から救出することも増えて、譲渡してもすぐケージが埋まる……そんな現実を間の当たりにして、成田さんは胸を痛め、「いつか何か手伝いたい」と思ったそう。しかし、すぐにはできなかった。

「保護にしてもその後のことにしても簡単なことではないので、積極的には言いだせず……まずは捕獲のお手伝いから始めました。そのうちに、亜子さんのところに置く猫がいっぱいになって……。『預かりをしてみる?』と聞かれたんです。うちはおばあにゃん(9ちゃん)がいるので悩んだけど、“命は待ったなし”なので預かることにしました」

母猫と子猫
初めて預かった猫の「せせり」が家で3匹の子猫を出産(成田さん提供)

初めての預かりは“にゃんぷ猫”

 昨年10月。成田さんが最初に預かった猫は、神奈川海老名市で多頭飼育崩壊をおこした民家から救出された、推定2~3歳の1匹のキジトラの雌だった。

「1匹だけど、おなかには3匹……。にゃんぷ(妊婦)猫だったのです。今まで飼ってきた雌猫は、いずれも保護してすぐ避妊していたから、出産シーンを見たことがなかった。家で預かりながら出産シーンも見られるなら、と大興奮。にゃんぷ猫にせせり、と名付け、赤ちゃんが生まれる時までハラハラし通しでした……」

 2階の一部屋を「猫部屋」にして産箱を作り、高校生の娘、中学生の息子と見守ることにした。

「家に来て10日目くらいに、気になっていつもより早起きをして部屋(産箱)を覗いたら、すでに3匹出ていたので、『生まれてるよー!』と娘と息子を呼びました。せせちゃん、よくがんばったなあと思い、今でも思い出すと泣けてくる。そのあとさらに、泣けることがあって……」

 せせりは元々、猫風邪をひいていたのだが、出産で一気に悪くなり、病院で子猫とともに治療してもらうことになった。いちばん弱っていた、つくねと名付けた子猫は母猫からも離さないとならず、しかも、懸命な看病の甲斐なく、命を落としてしまったという。

「本当にショックで……。でも、はつと、ささみと名付けたあとの2匹は、無事に育ってくれました」

2匹の子猫
無事に巣立った、「ささみ」と「はつ」(成田さん提供)

 その後、2匹はそれぞれ知り合いを通して「もらいたい」と言う人が見つかったが、成田さんは「気が気じゃなかった」という。

「問い合わせが来た瞬間、『あ、チビたちがいなくなっちゃうんだ』と胸が締め付けられました。“うちの子”ではないのは重々承知だけど、いなくなるのが、やはりさみしくて。同時に、『どんなところにいくの?』という不安もあった。譲渡する方に直接会うまでは本当に心配でしたが、はつは今年1月、ささみは2月に無事に良いおうちに送りだすことができました。もちろん号泣(笑)」

飼い猫の反応と、子どもたちの変化

 子猫2匹が引き取られた後、4カ月ほど空けて、2回目の預かりとして赤トラの『まゆげ』と黒猫の『まつげ』のきょうだいを亜子さんより預かった。

 さらに、その1カ月後に、3回目の預かり猫として、黒猫『ぷる』と三毛猫『ぺる』のきょうだいがやってきた。

「寝る時と留守の時は猫部屋にいれるけど、(社会性もつくかなと思って)それ以外は家の猫と一緒にしていました。でも子猫が4匹もいると大変。とくに三毛の『ぺる』がやんちゃガールだったので、毎日振り回されて、ヘロヘロでした(笑)」

 元気な預かり猫たちに対し、家の猫の反応はまちまちだったという。

 最年長の9ちゃんは気が強く、子猫がちょっかいを出そうものなら、「あんたら10年早いよ!」とばかりにパンチする。8くんは父性たっぷりで、子猫と一緒に寝てあげたりするけれど、しつこくされれば教育的シャーも。いちばん年若い3番ちゃんは、「子猫に興味がなく、知らん顔」だった。

「8はもともと穏やかな猫ですが、雄猫って面倒見がいいなと改めて思いました。優しいといえば、うちの子どもたちも変わりましたね……。息子は、飼い猫だけが家にいる時は、“気が向いた時に可愛がる”という感じでしたが、猫を預かったら、軟便でよごれたお尻を拭いたりトイレを掃除したり、私がいない時でも、自然と世話をしてくれるようになったんです。娘も、『この子、元気ないんじゃない?』なんて、細かく見てくれるので、助かりました」

4匹の猫
左上から時計回りに、赤トラ「まゆげ」と黒猫「まつげ」、黒猫「ぷる」と三毛の「ぺる」(成田さん提供)

 成田さんの家には、子どもの友だちがよく遊びに来るが、友だちも、預かり猫の様子や行く先に興味を持つようになったという。

「息子の友だちが、『この子、大きくなったね』と声をかけてくれたり、(譲渡後に)『僕が可愛がっていたあの子、どんな家にもらわれたの?』と気にかけるようになったんです。本で読んだり誰かに聞いた話でなく、実際に触れ合っていたからこそ、生まれた感情でしょう。なんなら、月曜日の1時間目はクラスの皆に家に来て欲しいくらい(笑)。動物と暮らしたことのない子どもは、体温の温かさや、猫が爪を出すと痛いことも知らない。死ぬということ、その悲しみもよくわからないのではないかな……」

 成田さんは、家に遊びにきた子どもたちに、表で弱って保護される猫や、多頭飼育崩壊や、ペットショップの裏側(店に出すために無理な繁殖を強いられる親犬や親猫もいること、売れ残ったペットが引き取り業者の手に渡ったりして不幸になるケースも起きうること)についても、時々話すのだという。

「娘の友だちは『ペットショップでは飼いたくないし、私もいつか保護活動をしたい』と言っていました。ここは、預かり猫が、猫や人になれるだけでなく、猫を通して、子どもたちが生き物の命について考える場にもなっているんですよね。おとなにも知ってほしいことがたくさんあると思っています。世の中で猫のために動いている人が多いのに、なぜか救うべき猫の数は減らない。保護活動のことを知らない人もまだまだ多いので、不幸な猫たちにもっと目をむけてほしいなあ……」

預かりに向くのはフットワークの軽い人

 成田さんの家で話を聞いた日、猫を託したボランティアの亜子さんも、立ち会ってくれた。

 家だけでなく年齢も近く、今では、すーさん(成田さんのあだ名)、亜子ちゃんと呼び合う仲。

「もう、すーさん、びいびい泣いてうざいの。猫と見合いしたいっていう申し込みがきただけで、泣く?」。そう苦笑するが、頼りにしているようだ。

 仕事を持ちながら熱心に保護活動をする亜子さんに、どんな人が猫の「預かり」に向くのか、聞いてみた。

「私の場合、基本的に『自分の保護した猫の家族になってもらいたい』と思えるような人は、預かりもできると思っています。経験以上に、性格的なことかしら。猫とのマッチングもあると思いますが、先住犬や先住猫がいても、預かりはできると思います。私はお見合いの時に、預かりさんの意見もある程度聞くようにしていますが、あまりにこだわりが強いと猫が縁を逃すこともあるので、柔軟さはあったほうがよさそうですね」

 これだけは必要というポイントは、あるのだろうか。

「“フットワークの軽さ”は、重要ですね。子猫は風邪をひいていることも多いので、異変があった時にすぐに動物病院に連れていってくれるような人がいいですね。ぱっと動いてくれれば、誰かみたいに泣き虫でもいいんです(笑)」

 自分のペットは年齢的に飼えないけれど、預かりなら、と思う人もいるかもしれない。だが、何かあった時に素早くキャリーバッグを持って動ける体力、気力がなければ、難しそうだ。

女性と猫
20年前に保護した「9」を抱く成田さん「おばあにゃんは子猫には厳しめ」

今度こそ泣かないつもり

 さて、成田家の居間で戯れていた4匹の子猫(まゆげ、まつげ、ぷる、ぺる)は、8月に、無事に巣立っていった。

「家に残っていた、(最初の預かりの)せせりも、『家族に迎えたい』と言ってくれる方が現れて、8月に送り出しました。せせりはおとなだし、人なれもあまりできず諦めていたので、『よかった~』とついまたうれし泣き。だけど、多頭崩壊というしんどい環境にいたので、絶対にいい所にいってほしくて、見合いの時は『半端な気持ちで申し込んできてねえよな』と戦闘モードになりました(笑)。顔で笑いながら、心のズームを全開にして、本当に大丈夫だよねと、希望者の顔をじっと見て(笑)。でもおかげさまで、今はせせりも幸せに暮らしています」

 せせりが巣立った後、20日ほど間隔を置いて預かったのが、冒頭のホップとホッピーだ。

「夏に複数の猫がいて、9ちゃんに少し疲れがみえたので、間を少し空けたんです。やっぱり家の猫もみんな元気でないと、預かりはできないので」

 成田さんと飼い猫の見守るなか、すくすくと育ったホップとホッピー。取材を終えて少ししてから、「無事にお見合いが決まりました」という知らせをもらった。

 お見合い前日に連絡すると、成田さんがその心境を語ってくれた。

「“きょうだいで”という条件に合う方が見つかったので、本当にうれしい、でもさみしい。今度こそ泣かないつもりだけど(笑)」

 今後も高齢の9ちゃんの様子を見ながら、無理ない範囲で、「猫たちが幸せになる」手伝いをしていきたいという。情にもろい“預かりママ“の奮闘はこれからも続く……。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は18歳の黒猫イヌオと、4歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
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ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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