猫の「へそ天」姿で高齢者に癒やしと笑顔を届けたい クラウドファンディングに挑戦中

へそ天のパワーでお年寄りを癒やしたい(へそ天プロジェクト提供)

 動物がリラックスしておへそを天に向けて寝転ぶ姿「へそ天」をテーマにした『へそ天にゃんこ』の写真集の出版や写真パネル展を開催し、多くの人に癒やしを届けてきた「へそ天プロジェクト」が、新たな活動を始めています。老人施設のお年寄りたちの心をやわらげ、笑顔を増やしてもらうために写真集やカレンダーを無償で寄贈したいと考え、クラウドファンディングに初挑戦しています。プロジェクトの企画者であるすむぞうさんに、いきさつや内容、高齢者と動物の関係についてお聞きしました。

(末尾に写真特集があります)

家族と会えない日々

――高齢者のための新たな活動を進めているそうですが、どんな内容ですか。

「コロナの影響により社会全体が不安に襲われている中、離れて暮らしている家族と会えないことに多くの人々が苦しんでいます。特に老人ホームや介護施設などの老人施設では面会機会が制限され、愛する家族に会える機会が減り、寂しい思いをされている高齢の方が多数いらっしゃいます。施設の方にお話を伺うと、入所者の笑顔が減ってきてしまっている傾向もあるそうです」

「それを聞いて、ご高齢の皆様に少しでも癒やされて心が安らげるひとときを作っていただこうと、私どもへそ天プロジェクトでは、日本全国の老人施設、ご高齢の皆様にへそ天姿の猫の写真集とカレンダーを無償にてプレゼントするプロジェクトを推進しています」

へそ天する猫
思わず笑顔になってしまう子猫のへそ天姿(へそ天プロジェクト提供)

――実際に、セラピーのような効果があるのでしょうか。

「へそ天姿の究極にリラックスした猫の写真は、安心、安全、平和の象徴として、見る人を癒やし、自然に笑顔にしてくれます。この『へそ天にゃんこ』写真集のアニマルセラピー効果を確かめたく、昨年、ご老人たちが通うデイサービスの施設に写真集を献本させていただいたところ、施設をご利用されているご老人同士で、『うちの猫もこうだった、とても可愛かった』などと、猫話で何時間も笑い声とともに盛り上がったという、うれしいご報告をいただきました。猫はセラピストなのです、それもかなり強力な」

――1枚の写真が笑顔を生み、人と人をつなぐ役目も果たしてしまうのですね

「我々のようにスマホを日常的に使える者は、猫や犬の写真をネットで気軽に見ることができます。ところが、老人施設に入居された方の多くはスマホやパソコンも無く、動物の姿を見る機会も少ないのです。そんな時に、もし壁に可愛い猫のカレンダーが飾ってあったら、それだけで幸せな気分を感じていただけるのでは、と考えました」

「高齢の方同士、また、施設で従事される職員の方々との間でも、猫の話題で盛り上がれるかもしれません。猫の癒やしで、日本全国の高齢の方に笑顔のひとときを届けることを目指しています」

母への思いも活動に反映

――すむぞうさんのお母様も、老人施設に入居されたとお聞きしました。もともと動物と暮らしておられたのでしょうか。

「母は昔から犬や猫が好きでしたね。子育てや家事に追われながらも、ペットに癒やされる毎日だったのではないでしょうか。まるで動物たちとおしゃべり出来るのではないかと思えるほど仲が良く、猫や犬のそれぞれの個性や主張を大切にする姿に、私自身、多くのことを学びました。父が亡くなった後は、犬を迎え入れ、毎日、ひざの上でなでながら、実家で穏やかな日々を過ごしていました」

2匹の犬
すむぞうさんの先住犬、小麦(左)とお母さんから預かったチャコ。「私たちもへそ天するよ」(へそ天プロジェクト提供)

――その後、お母様はやむを得ず犬と離れて住むことになったそうですね。そういう方は昨今、多いと思います。

「母は数年前に認知症を患い介護が必要となり、飼い犬の世話が日に日に難しくなっていきました。家族とも何カ月も相談しあい、悩み抜いた結果、一昨年、老人ホームにお世話になることになりました。自分の家族を老人ホームに預けるということは、簡単なことではありません。住み慣れた場所を離れて暮らすことへの様々な葛藤、そしてペットとも別れなければいけないこと……。でも母は、認知症に苦しみながらも全てを受け入れてくれました。飼っていた犬は私が預かって、我が家の先住犬と共に仲良く暮らし始めました。母は、ペットの代わりにプレゼントした猫のぬいぐるみを毎日抱いて可愛がり、おかげさまで元気に暮らしています」

――すむぞうさん自身の体験や思いが、へそ天プロジェクトに大きく反映されているのですね。

「動物好きの母は、へそ天プロジェクトの活動を応援してくれて、“猫たちとともに世の中に癒やしと笑顔を届けたい”という活動への思いを深く理解してくれました。じつは、へそ天写真集『へそ天にゃんこ』に掲載する写真の最終選考には、母にも参加してもらいました。猫の特性などを詳しく知っていて、とても驚かされました。写真集が完成した際には、真っ先に老人ホームにいる母の元へ届けました。その時のうれしそうな顔は、生涯忘れることはないでしょう」

写真集を手に取る
すむぞうさんが写真集を渡すとお母さんはとびきりの笑顔に(へそ天プロジェクト提供)

――『へそ天にゃんこ』の写真集やパネル展などの実績、反響など教えてください。

「第1弾『へそ天にゃんこ』(三笠書房)はテレビ番組で話題になるなど好評をいただいており、今年には第2弾となる写真集『へそ天にゃんこ2』(同)が出版されました。まもなく海外でも翻訳出版が開始される予定です。またイベント会社様の企画により、写真パネル展『へそ天にゃんこ展』が札幌市や神戸市で開催され、癒やしと笑顔をお届けしています」

写真展での様子
「へそ天にゃんこ展」の様子(へそ天プロジェクト提供)

「掲載されているへそ天姿の写真は、日本全国の飼い主様からご提供いただいています。家族の前で安心している猫たちは、とてもリラックスしており、可愛くて癒やされるのはもちろん、プロのカメラマンでも撮れないような奇抜なポーズ、クスッと笑えるポーズが楽しく、見るだけで幸せな気分になります」

幸せの連鎖を目指して

――今回、高齢者施設等への無償寄贈に向けて、初めてクラウドファンディングに挑戦されました。締め切りの10月29日までに目指す、支援の目標金額を教えてください。

「今回の活動を日本全国に広げていくためには資金が必要なため、クラウドファンディングによりご支援者を募ることと致しました。第1目標として年内にカレンダーと写真集の無償寄贈数500部を目指し、物品調達費や郵送費などの諸経費に最低でも200万円が必要となります。リターン品の中には無償寄贈品と同様のカレンダーと写真集を含むコースをご用意しましたので、ご支援いただく皆様にも癒やしと笑顔をお届けできることを願っています」

猫のカレンダー
1月、いきなりキュートなへそ天カレンダー(へそ天プロジェクト提供)

――皆がより笑顔になるため、こだわったことがあれば教えてください。

「写真集やカレンダーでの写真の掲載の際には、なるべく猫の名前を載せることにこだわりました。猫の名前を知ることで見る人々にも親近感がわき、それぞれの猫に愛着がわくと思ったからです。毛並みまでわかるリアルな猫たちの写真を眺めていると、想像の中で猫たちが動き出し、モフモフの感触やゴロゴロと喉を鳴らす音まで感じられてくるかもしれません。老人施設に寄贈するカレンダーや写真集を眺めながら、ご老人や施設の方が『〇〇ちゃん可愛いね~』と癒やされて笑顔になったら、これにまさる喜びはございません」

――癒やしを届けるプロジェクトですね。

「誰かを癒やすことで自分も癒やされ、癒やされる人が笑顔になることで、癒やす人も笑顔になれる。そんな“幸せ感の連鎖”が生まれることで、世の中はちょこっとだけ良くなるかもしれません。へそ天プロジェクトが目指してきたのは『癒やしの三方よし』、『癒やし、癒やされ、世間よし』。私どもの未知なるチャレンジと、飼い主の皆様、そして活動を支えてくれる皆様が、調和して新たな価値を生み、参加してくれるみんなが喜び、世の中が少しでも良くなることを願っています」

◆へそ天プロジェクトのクラウドファンディングはこちらから。10月29日午後11時まで。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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