暴れん坊トイプーにオロオロする一家 「安心して頼れる飼い主」をめざし生まれ変わる
家では甘噛み放題、一歩外に出ると暴走するも、幼稚園では一転、冷めた目で遊ぶことができないトイプードルの男の子が、UG DOGSアトラスタワー中目黒店(以下UG)の高橋信行店長にもとにやってきた。社会化お泊まりの1週間とアフターケアの約4カ月で激変したのは……?
激アツ店長、中目黒の駅前で叫ぶ。
「リーダーになんてならなくていい。家族として頼られる存在に!」
(前回のお話はこちら)
どちらが悪いのではなく、かみ合ってないだけ
激しい甘嚙み、マウンティング、突然キレる、お散歩では暴走……と、いわゆる「問題行動」の数々で家族を困らせていたトイプードルのジュリオくん。電話カウンセリングののちUGにやって来た。
高橋店長は「想像していた感じとはちょっと違っていました。うちに来るトイプードルはクセが強い子が多いのですが、ジュリオくんにはそれがなかった」と振り返る。
「気品がありプライドも高く、そして何より頭がいい正統派の強い子。こんな素晴らしい素質を持っている子を『問題犬』と決めつけてしまうなんてもったいない。強い子は早いうちに自我が固まってくるので、すでに月齢7カ月のジュリオくんは少し時間はかかるかもしれない。でも、きっと大丈夫だろうと確信しました」
電話カウンセリングの際に動画を送ってもらっていたが、そこに映っているジュリオくんよりも「お母さんの接し方に問題があった」と店長。ジュリオくんのペースに振り回されてオロオロしたり、ドヤ顔で吠えるジュリオくんを叱り続けたり……。
「お母さんは本当は叱りたくないのに頑張って叱っている。ところがジュリオくんにはまるで伝わってない。優しさや遠慮が裏目に出ていた。どちらが悪いということではなく、かみ合っていないだけです。
ジュリオくんはエネルギーを解放しながらルールを学ぶ。一方、ご家族には意識を大きく変え、ジュリオくんへの接し方、向き合い方を変えてもらう。そう伝え、社会化お泊まりをスタートしました」
周りの子に体当たりする「ジュリオアタック」で発散
預かってすぐにお散歩へ行くと、最初こそ引っ張ったものの、落ち着くとむしろ店長の後ろを楽しそうに歩いたジュリオくん。動画でその様子を見たお母さんと娘さんは「なんで!? 魔法?」。店長は「魔法でもなんでもない」と笑い、こう説明する。
「ルールがないから、頭のいいジュリオくんは自分でルールを作っていた。でも、僕やスタッフにジュリオくんのルールは一切通用しない。頭がいいからすぐにそのことを理解し、僕らのルールに従った。それだけのことです」
UGの群れに最初は驚き、初日は様子をうかがっていたジュリオくんだったが、2日目には手当たり次第に周りの子に強烈に体当たり! その姿は店長に「ジュリオアタック」と名付けられた。リーダー犬で百戦錬磨のトイプードルのジーニー、店長の愛犬で次期リーダー候補のジャックラッセルテリアのロイスにもジュリオアタックを炸裂。
「やっぱり強い。普通の子はジーニーやロイスにはいきませんから(笑)。その上、2匹に厳しく注意されても全然へこたれない」と店長。また、前回紹介したトイプードルのゼリーちゃんともハイパー同士引かれあったのか、激しく遊び続けた。
「群れの強い犬たちに出会ったことで、ジュリオくんの体と心のスイッチが入り動き始めた。そして、世界が一気に広がった。ここに来る前に『犬にも人にも頼らない犬』と断じられたジュリオくんでしたが、ジーニーが大好きになり、お散歩途中に寄ったドッグカフェでは店員さんにデレデレ甘えていました(笑)」
去勢手術後、以前よりも荒れたことについて店長は「全身麻酔、術後の痛み、エリザベスカラーなどが大きなストレスとなり、精神的に不安定になる子は少なくない。もともとハイパーな子は嚙んだり吠えたりが手術前よりひどくなることもある」と解説。UGの社会化お泊まりを考えている子犬には、手術をするなら解放が進んだお泊まり後にとアドバイスすることもあるという。
「ジュリオくんが安心して頼れる存在になって」
群れの中でエネルギーを発散し、ルールを学んだ1週間。お迎えにきたお母さん、娘さんとお散歩へ。ところが、お母さんが緊張からオロオロしてしまったせいか、ジュリオくんも以前のわちゃわちゃ歩きに。いったん店長がリードを持ちジュリオくんを落ち着かせ、リードをお母さんに渡す。
「店長からは『前に歩くことだけを意識し、力まずに』とアドバイスされました。するとジュリオと普通に歩けたんです! うれしくてうれしくて……」。そのときの光景を思い出し感極まるお母さん。
犬のお散歩というと、犬が飼い主の目を見て歩く「アイコンタクト」や、飼い主の側について歩く「リーダーウォーク」を愛犬に教え込もうとする人も少なくない。「目と目を合わせるのが苦手な犬は意外と多く、かえってうまく歩けなくなることも。オヤツを使うトレーニングもあるけれど、オヤツがないと歩けなくなる場合もある」と店長。
そして「もっとシンプルにとらえて」と呼びかける。
「人間のお子さんとお散歩するときに、親と目と目を合わせながら歩きなさい!なんて求めないですよね? できるならやってもいいけれど、『愛犬に強要してまでやりたくない』という飼い主さんが実は多い。僕自身はお散歩は前に向かって楽しく歩ければいいと思っています。お散歩の目的は解放であって支配じゃない」
そして、お母さんと娘さんにはこう伝えた。
「ジュリオくんを興奮させるような接し方をして、それで嚙んだり反抗したりすると叱りつける。それでは頭のいいジュリオくんは迷い、混乱してしまいます。ジュリオくんに落ち着いてほしいなら、まずお母さん、ご家族が落ち着くこと。リーダーになる必要はないけれど、ジュリオくんが安心して頼れる存在になりましょう。
また、かわいいのはわかりますが、四六時中ジュリオくんをジロジロ見たり、デレデレ声をかけたりしないこと」
娘さんは「私も、もし父や母からずーっと監視されたら息が詰まっちゃうかも」と笑い、こう続けた。「赤ちゃん語のような言葉遣いはやめ、店長がジュリオに声掛けするときのように、必要なときに落ち着いたトーンで話しかけるようにしました。ジュリオから頼られる存在になりたい……。強くそう思いました」
お母さんも頑張った。エネルギーを発散させるため、早朝2時間のお散歩へ。UGに行く前は興奮して暴走していた道を落ち着いて歩けるようになった。運動嫌いで暑いのが苦手というお母さんだが、「ジュリオと一緒に歩けるのがうれしくて楽しくて、頑張れちゃう」と笑顔を見せる。
娘さんには「これウマいからお姉ちゃんも食べなよ!」と、大好物のガムを持ってきてくれる優しいジュリオくん。お父さんとは男同士のせいか、ちょっとヤンチャに遊びを仕掛けるという。
「ジュリオがいてくれるおかげで家族の会話が増えました。そして、家族が仲良く過ごしているとジュリオはとても落ち着いている。家の中の雰囲気がとても穏やかになりました。ジュリオは私たち家族を変えるために我が家に来てくれたのだと思っています」と娘さんは笑顔を見せる。
1歳の誕生日、近づく卒業のとき
毎週アフターケアのお泊まりに通っていたジュリオくんだが、最近はあまり遊ばなくなった。「1歳ぐらいを境に『遊びの扉』が閉じる子は多い。成長の証しです」と店長。
お母さん、娘さんとも、そろそろ「卒業」を考えているという。「UGに通わなくなるのはさみしいけれど、ジュリオの気持ちを大切にしてあげたい」。店長も大賛成だという。
「ジュリオくんはエネルギーを発散し、ルールを学び、お散歩も上手にできるようになった。とても頑張りました。でも、実はジュリオくん自体はあまり変わっていないのです。頭がよく、気品とプライドが高く、自分をしっかりと持っている騎士のような強い子。
そんなジュリオくんをご家族は理解し、受け入れることができた。ジュリオくんの頼れる存在になれた。大きく変わったのはご家族、つまり人間の方。人が変わると犬が変わリ、家族が笑顔になれる。ジュリオくんご一家はそのことを改めて教えてくれました」
そしてつい先日。ジュリオくんは大好きな家族に囲まれ、1歳の誕生日を迎えた。
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。
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