オスの犬がかかりやすい病気を知っていますか? 正しい知識を持って去勢手術の選択を
病気やトラブルから犬や猫を守るため、飼い主さんにぜひ知っておいてほしい知識を、シリウス犬猫病院の院長、石村拓也獣医師が教えてくれます。連載7回目はオスの犬がかかりやすい病気についてです。
オスの犬がかかりやすい病気
犬も性別により、かかりやすい病気は異なります。今回はオス犬において、注意したい病気についてご紹介します。
包皮炎
オス犬の包皮の先から白や黄色のクリームのような汚れが出ているのをみたことがありませんか?それは、もしかしたら“包皮炎“という病気かもしれません。
通常、陰茎(ペニス)は包皮という皮膚に覆われています。犬は人と違って「包茎」の状態が正常であり、包皮内は通気性が悪く分泌物も多いため、細菌が繁殖しやすい環境になっています。包皮内で細菌が異常繁殖し、包皮に炎症を起こした状態を包皮炎と言います。包皮炎は去勢をしていないオス犬でよくみられます。
犬の包皮炎の治療は症状の度合いによって様々です。無治療でも治まる軽度のものから、消毒薬で包皮内洗浄を実施したり抗生物質を処方する場合もあります。発症要因としては分泌物の増加や、マウンティングなどでペニスを傷つけてしまうことや、免疫力の低下による包皮内の細菌の増殖などが考えられます。
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなることにより二次的に様々な障害を引き起こす病気を言います。
去勢をしていないオス犬に多くみられ、4〜5歳の未去勢犬の約50%、9歳以上の未去勢犬のほとんどに認められます。原因は、精巣から分泌される男性ホルモンの乱れだと言われています。
症状は肥大の程度によって異なります。軽度では無症状の場合が多いですが、肥大が進むにつれて細い形状の便を排泄(はいせつ)したり、便秘、しぶり、あるいは血尿や尿が出にくいという症状が出ることも。まれに会陰ヘルニアなどの原因となることもあるので注意が必要です。
去勢手術で予防が可能です。手術ができない場合は、内服薬で前立腺を小さくすることも可能ですが、内服薬での治療は根本的な治療ではないので再発する可能性や副作用のリスクもあるので注意が必要です。
潜在精巣(停留睾丸)
潜在精巣とは精巣が陰囊内にない状態をいい、停留精巣、陰睾(いんこう)とも呼ばれます。
精巣は胎児期にはおなかの中にありますが、成長とともに精巣は移動して生後約1〜3カ月頃には陰囊内に降りてきます。生後半年を過ぎても精巣が陰囊内になく、腹腔内や皮膚の下に留まっている状態を「潜在精巣」と言います。
ほとんどの場合は無症状ですが、潜在精巣は将来的に精巣腫瘍(しゅよう)になる可能性が高いです。特に腹腔内の潜在精巣の場合、腫瘍化して大きくなってもおなかの中に精巣があるので手遅れになることがあるのです。手術により潜在精巣を摘出すれば将来的な精巣腫瘍の発生を予防できるので、なるべく早い段階で手術をすることをおすすめします。
精巣腫瘍
左右の睾丸の大きさが違う。片方がだんだん大きくなってきた。それは“精巣腫瘍”かもしれません。
精巣腫瘍は未去勢のオス犬において、発生率の高い腫瘍のひとつです。早期に摘出手術を行えば治る可能性が高い腫瘍ですが、悪性の場合リンパ節や臓器への転移がみられたりなど、命取りになることもある怖い病気です。
若いうちに去勢手術を行うことで予防が可能です。特に潜在精巣と診断された場合は、正常な場合と比べて精巣腫瘍になる確率が高いので、早めの去勢手術をおすすめします。
オスの犬特有の病気を予防するには?
オス犬特有の病気をご紹介させていただきましたが、いかがでしたか?ほとんどの病気において、若いうちに去勢手術を実施すれば予防できるものが多かったですね。
もちろん去勢手術にもデメリットは存在しますが、去勢をした犬の方が病気は少なくなると言われています。
ぜひかかりつけの獣医師と相談し、正しい知識を持って去勢手術の“する・しない”の選択をしていただければいいなと思います。
(次回は5月26日に掲載予定です)
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