体力底なしのマルプーの子犬 甘嚙みがとまらず自信をなくすお母さんに、驚きの提案が
「毛が抜けなくて手がかからない」「毎日お散歩に行かなくていい」と勧められてお迎えしたものの、体力底なしのマルプーはそのエネルギーを家族への激しい甘噛みで発散しようとした。
「ミックスあるある」で一筋縄ではいかず、なかなか止まらない甘噛みに、UG DOGSアトラスタワー中目黒点(以下UG)の高橋信行店長はある「秘策」を繰り出す。
激アツ店長、中目黒の駅前で問いかける。
「人気のミックス犬、本当に飼いやすい?」
(前のお話はこちら)
「僕が管理しなくちゃ!」の勘違いルールを修正
激しい甘噛みで家族を困らせたミックス犬、マルプーのルルくんは、UGの1週間の社会化お泊まりへ。
「カウンセリングのときにも感じましたが、ルルくんはとても頭がよく、その分プライドも高い。群れにもすぐには溶け込めず、ごはんのときの伏せも拒みました。それでいて体力は底なし。遊びたい、暴れたい、噛みたいというエネルギーがあふれていて、おうちではそれがすべて家族に向いていた。
その上、ワンコ初心者の家族だったがゆえにきちんとしたルールがなく、『僕が管理しなくちゃ!』と、家族を自分の管理下に置こうとしたのだと思います」と高橋店長は分析する。
群れに慣れることで犬社会のルールを学び、ガマンも覚え、遊びやお散歩でエネルギーを発散したルルくん。おうちに帰ると安心したのか、お母さんの足元でくつろぐように。
「そんな風にリラックスした姿を見せたことがなかったので、感動しました。私たち家族も穏やかに過ごす時間が増えましたね」
また、それまでは「叱ってはいけない」と思い込んでいたが、「ダメなことはダメと叱るように。こちらの関わり方や意識が大きく変わったと思います」とお母さん。
自信をなくしたお母さんに、店長から驚きの提案が
とはいえ、ルルくんの体力は底なし。店長からは「お散歩で発散するように」と言われたが、子どもたちがまだ小さく、育児と家事に追われるお母さんはそこまでお散歩に時間を割けない。そうした家庭の事情もあり、ルルくんの甘噛みは相変わらず続いた。
毎月のトリミングでUGに通い、店長はルルくんの成長を感じていたが、ある日、お母さんがとても暗い顔をしていたという。「自信をなくし、とても疲れている様子でした」と店長。そして、こう声をかけた。
「ハンナ、トライアルしてみますか?」
トイプードルのハンナちゃんはUGワンコ。当時UGでは生体展示はしないものの、群れの中で育てながら子犬を販売していた。ルルくんとは生まれ月も一緒の同級生で、これまで何度も顔を合わせていたこともあり、「相性がいいのはわかっていた」と店長。ルルくん1匹でも大変な思いをしているお母さんに、無謀とも思える提案。その真意をこう語る。
「ハンナは群れのリーダーになれるほどの強さを持った女の子。まだまだ遊びたい盛りだったので、体力底なしで頭がよく、自分でルールを作ってしまうほど強いルルくんの最高の遊び相手になってくれるはず。とはいえ、多頭飼いでお母さんがますます疲れてしまっては元も子もないので、まずはお試しからと提案したのです」
遊びで発散することで、甘嚙みが激減
早速、1週間のお泊まりトライアル。家に帰った途端、ルルくんとハンナちゃんは激しく遊び始めた。
「お母さんは『ルルがハンナちゃんをいじめたらどうしよう』と不安だったようですが、ハンナはめちゃくちゃ強い。ハンナがルルくんを負かすことはあっても(笑)、お母さんが心配するようなことにはならないという確信があった」と店長。その言葉通り、一緒にガンガン遊び、ルルくんがちょっとしつこくするとハンナちゃんが一喝!
「ルルは激しく遊ぶことで体力を使い、それまで家族にばかり向かっていた意識がハンナちゃんに向いたようで、家族への甘噛みが激減しました」とお母さんは当時を振り返る。そして、正式にお迎えすることに。ハンナちゃんはUGを卒業し「桜」という新しい名前を授かる。
「桜がきれいな季節にうちの子になってくれたから」
犬たちも家族も一緒に成長
素直で甘えん坊なルルくんと、マイペースでドンと構え、ルルくんが調子に乗ると「喝!」を入れるしっかり者の桜ちゃん。一緒に暮らし始めて2年が過ぎ、性格はまったく違うものの名コンビとなった。想像もしていなかった多頭飼いに「もちろん2匹になって大変なこともありますが、それ以上にルルと桜の存在が家族を笑顔にしてくれています」とお母さんは目を細める。
2人の娘さんたちも自分なりに考えながら触れ合うようになり、「絆や命といったことを、2匹がいることで娘たちも自然に学んでいるみたい。みんな一緒に成長しています」と、お母さんは笑顔を見せた。
ミックス犬は、成長や行動が予測できないと理解したうえで迎えてほしい
「ルルくんはハイパーだけどとてもいい子で、ミックス犬としては大きな問題はなかった。それでもご家族は大変な思いをしました」と高橋店長。
そしてこう釘を刺す。
「ミックス犬に関わらず、手に負えないからもう一匹飼えばいい、ということではありません」。ルルくん、ご家族のことを理解し、桜ちゃんの性格を知り尽くしているからこそ提案した策だった。
また、現在UGでは子犬の販売はほとんどしていないのが実情だ。この事例は、あくまでもルルくんとその家族のケースにすぎない。その中で店長が伝えたいのは、「ミックス犬でも手のかからない子もたくさんいるものの、犬種としてのスタンダードがない分、予測できない成長や行動をすることもあると理解した上で迎えてほしい」ということだ。
「純血種だから大丈夫」というわけでは、決してない。純血種でも、三大お悩みである「噛む」「吠える」「お散歩ができない」犬はたくさんいる。ただ、スタンダードがない分、ミックスは一匹一匹がいい意味でも悪い意味でも「唯一無二の個性」を持っている。このため、数多くの子犬を見てきた店長ですら、その子がなぜ噛むのか、吠えるのか、お散歩ができないのかを見極めるのに苦労することがあるという。
「社会化お泊まりの1週間では足りない場合、可能なら1歳までは定期的に通ってもらうよう伝えています。そのぐらい一筋縄ではいかないし、時間がかかる場合もある」
コロナ禍の影響で、「外出できないからペットでも飼おうか」「人との触れ合いが減ったから犬を飼って癒されたい」といった理由で、以前よりもペットショップの売り上げが上がっているという。しかし一方で、「思っていたのとは違った」「飼いきれない」という身勝手な理由で手放される犬も増えている。
人気がブレークし飼育頭数が増えているミックス犬が、そうした中に少なからず含まれていると見るのは自然の流れだ。UGのカウンセリングでミックス犬が激増していることもまた、ミックスの子犬育てに困惑している飼い主が少なくないことを物語っている。
売れるからと安易な交配をすることには疑問を感じているという高橋店長だが、「これから先、ミックス犬がもっと増える可能性は高い」とも。「もしお迎えして困ったことがあれば、できるだけ早いうちに信頼できるプロのトレーナーに相談してほしい。不幸になる犬もご家族も増やしたくない。だって、誰だって幸せになりたくて犬を飼うはずだから」
最後にこう言葉を結んだ。
「純血種だろうとミックスだろうと、ペットショップ出身でも元保護犬でも、犬との出会いには必ず意味がある。だから、犬もご家族もみんな笑顔で暮らしてほしい。それが僕の願いであり、この仕事に燃える理由でもあるのです」
- UG DOGS アトラスタワー中目黒店
- 住所:東京都目黒区上目黒1-26-1 中目黒アトラスタワー106
TEL:03-5708-5592
営業時間:11:00~20:00(年中無休)
公式サイト:https://anm.ugpet.jp/ - 店長ブログ:https://www.ugpet.com/blog/anm/
※カウンセリングは電話、対面とも要予約。HPや高橋さんのブログをチェックした上で問い合わせを。
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