こんな物も? 猫の「誤食・中毒」を引き起こす危険物、知っておきたい情報が1冊に

 日常のなかで起こりやすい猫の健康被害のひとつが「誤食事故」だ。何をどれだけ食べてしまうかにもよるが、なかにはすぐに治療をしなければ命を落としかねない、危険なケースもある。愛猫が被害に合わないよう、飼い主は何を知っておくべきか。その知恵が詰まった書籍が、3月に発売された。

(末尾に写真特集があります)

 猫の本専門出版「ねこねっこ」から3月12日に発売された新刊『猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 ~誤食と中毒からあなたの猫を守るために』は、猫の誤食事故や中毒を引き起こす危険性のある身近な物を紹介してくれる書籍だ。

 sippoでもおなじみの東京猫医療センター院長の服部幸先生監修のもと、「食物」「植物」「家の中の物」といったカテゴリーごとに、猫と暮らす人が知っておくべき危険な物を、写真や危険度、誤食した場合の症状などとともに解説するほか、万が一誤食事故にあったときの対処法を紹介する。

 本書について、制作にあたったねこねっこ代表の本木文恵さんに話を聞いた。

「猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 ~誤食と中毒からあなたの猫を守るために」
写真や危険度を示すマークなど、視覚的にわかりやすいしかけがうれしい

――今回テーマに猫の「誤食・中毒」を取り上げたのは、なぜですか?

 治すのが難しかったり、ずっと付き合っていかなくてはいけない病気がある一方で、猫が異物を食べてしまう事故は、飼い主さんが知識を身につければ対策してあげることができる。それだけで命を守ることにつながる、というのが大きいです。

 とはいっても、猫の誤食と中毒だけに絞った限定的なテーマの本。それほど需要はないかもしれないけれど、地道に作って少しずつでも販売を続けることで、飼い主さんと猫との暮らしがより安心・安全なものになれば……というつもりでした。が、購入した方がどんどんSNSで広めてくださったり、海外の出版社からの問い合わせが続いたり。これほどの反響はまったく想像できませんでした。

 ……作り始めた頃ですが、ちょうど新型コロナウイルスの感染拡大で世の中に不安が広がる中、服部先生が「こういうときだからこそ、飼い主さんたちに、普段の生活で必要になる情報の発信を続けていくことが大事」とおっしゃっていて。本当にその通りだなぁと。

 私もちょうど緊急事態宣言で息子の保育園が休園になり、ほとんど仕事ができない状況だったのですが、時間を見つけてコツコツと構成を練り、服部先生と相談を重ねながら原稿を作っていきました。

――猫オーナーでもある本木さんご自身、愛猫が誤食をした経験はありますか?

 ずいぶん昔の話、中学生くらいのときですが、実家で飼っていた猫が羽のおもちゃで遊んでいるうちに、羽を食べて飲み込んで食欲をなくしたことがありました。猫がかじって当たり前のおもちゃが、体調不良につながることがあるんだと初めて知ったのはその頃だったかと思います。

鈴を飲んだ猫のレントゲン写真
首輪についた鈴を飲んでしまった猫のレントゲン写真(東京猫医療センター 服部幸先生提供)

 あと、うちの猫の1匹がまだ若いとき、通販で購入したフードを収納に入れていたのに、自力で引き出しを開けてパッケージを食い破って中身を食べてしまったことがありました。かじられたパッケージの破片をつなぎ合わせても足りない部分があり……油断ですね。食べた量はそれほど多くなく、破片を嘔吐してその後は元気でしたが、取り出せない収納にしまうように習慣づけました。

――今回の書籍を作成するにあたり、「これが猫に悪いとは知らなかった」という新たな発見は何かありましたか?

「知ってはいたけれど、服部先生の実際の診察ケースや取材、調査や報告の確認を通じて、リスクの高さや、猫に悪いとする根拠が明確になった」というのが多いです。

 たとえばタマネギ中毒は犬でも猫でも有名ですが、なかには犬よりも猫のほうが血液学的な変化を起こしやすいことを示す報告も。本書では、そうした犬との中毒リスクの違いまで触れて、「猫には猫のリスクがある」ことをできるだけ書くようにしました。

 保冷剤であれば、猫にとって猛毒となる「エチレングリコール」は、今では国内の製造過程ではあまり使われていないであろうことはなんとなく見聞きしていましたが、日本保冷剤工業会さんの取材協力で、「加盟メーカーでは使われていない」と確認できました。

 殺鼠剤や殺虫剤を使用する際のリスクや注意点の解説も、メーカーさんに協力いただいています。取材では、子供やペットの中毒事故をできる限りなくしていこうとする企業努力もうかがえました。

――本書を作るにあたり、こだわったポイントはありますか?

 飼い主さんの身近に置いていただくためのビジュアル作りでしょうか。「ザ・実用書」という見た目ではなく、最近の可愛い猫の缶や箱に入ったスイーツのような。中身を食べ終わっても飾っておきたくなりますよね。一度読んで本棚にしまって終わりではなくて、部屋の見えるところに置いて、気になったときにさっと読み直して誤食・中毒対策に役立てていただけたらいいなと。

 かつ専門書のような価格ではなく、一般の飼い主さんに手にとっていただける価格に抑えられるように。流通方法が限られている一人出版社が1冊にかけられるぎりぎりの予算を全体で配分し……胃が痛くなりますが、そうやってイメージを膨らませていきました。

 イラストレーターの霜田有沙さんと、デザイナーの山村裕一さんのタッグが素晴らしくて、みるみる素晴らしい装丁に。想像を超える出来栄えとなりました。本当にお二人には感謝です。

「猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 ~誤食と中毒からあなたの猫を守るために」
章の扉ページにも、美しいイラストが(撮影/イイダ写真室)

――「誤食・中毒」について飼い主さんに特に伝えたいことはありますか?

 服部先生が「誤食事故がとくに多い」とおっしゃっているジョイントマットもそうですが、シリコーン製品や充電ケーブルなど、人が室内でよく使うようになってきている製品の誤食事故が起きていることを考えると、人の暮らしの変化が猫の誤食事情に関わってきている可能性があるといえそうです。

「これまでうちの猫は大丈夫だったから」と思っても、それまで家になかった製品が、その猫にとってかじりがいのある物であれば、食べてしまうかもしれない。愛猫だけではなく身のまわりの物も含めて「観察すること」が大事なのかなと思います。

『猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑 ~誤食と中毒からあなたの猫を守るために』
監修:服部幸(東京猫医療センター院長)/イラスト:霜田 有沙
発行:ねこねっこ
価格:2020円+税
判型:B6変型判 160ページ 並製
(書影をクリックするとアマゾンにとびます)

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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