実験動物たちのあまりに過酷な運命 生活に身近なもののため今も世界中で犠牲に
当会JAVAは、1986年の設立以来、動物実験の廃止を目指して活動している市民団体です。
私たち人間は、これまでに数えきれないほどの動物たちを実験に利用してきました。そして現在も、日本を含め世界中の研究施設で、たくさんの動物たちが苦痛や恐怖を味わわされ、殺されています。
生活に密接に関わっている“動物実験”
“動物実験”と聞いて、どんなことを想像されますか?医学研究や新薬開発を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
それだけでなく化粧品、食品、日用品、農薬、工業用品など化学物質の安全性試験や、生理学、栄養学、生物学、心理学などの基礎研究、大学や学校といった教育現場における実習など、私たちが暮らす社会のさまざまな分野で行われています。
90日間反復経口投与毒性試験
毎日消費される野菜や穀物や果物。それらをつくるときに使う農薬の「安全性を調べるため」として生後4~6カ月の子犬や生後9週前のラットを使った実験が行われます。
子犬やラットに、週7日、90日間、農薬に使う化学物質を投与し続けて、どのような影響が出るかを調べます。90日より前に死んでしまう場合もありますし、たとえ90日の長い試験に耐えて生き延びたとしても最後にはデータをとるために、殺されて解剖されます。
眼刺激性試験
シャンプーやマスカラ、制汗剤や日焼け止めクリームといった化粧品や医薬部外品にも動物実験が行われています。使用中に誤って目に入る可能性があるため、あらかじめ「目に入ったらどのような傷害が出るか」を調べる場合があります。
どのような方法で実験するかというと、健康なウサギを頭だけが出る拘束器に入れて、開かせた片目に試験物質を入れたり、10cmの距離から約1秒間スプレーを噴射し、最低でも72時間かけて経過を観察します。
この試験方法が開発されたのは1944年。化粧品が象徴する美しさからは到底考えられないほど残酷だとして、1980年代に欧米で化粧品の動物実験反対運動に火がつきました。
それから70年を経てようやく2012年、国際的なガイドラインでウサギへの麻酔・鎮痛薬の投与が推奨されるようになりましたが、法的強制力はありません。
“動物実験”では人間を救えない
マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヤギ、ブタ、ウマ、サル、鳥類、魚類など、さまざまな種類の動物が実験に使われています。
ほとんどの実験動物は、実験用動物を繁殖・供給する企業や研究施設で繁殖させられます。生まれた瞬間から実験台として使われることが決まってしまっているのです。痛みや恐怖や苦しみを味わわされ、その一生を終える……それは、あまりにも残酷な運命ではないでしょうか。
「医学の発展や薬などの製品の安全性を調べるために動物実験は必要」とよく言われます。
ところが、人間と動物とでは体の構造や代謝機能などの違い(=種差)があり、化学物質への反応が異なります。さらに、人間の病気や症状は人間特有の生活環境や食生活、遺伝、ストレスなどさまざまな原因が複雑に絡み合っていることから、「動物実験で得られたデータの多くは人間にあてはまらない」というのが、今や科学者たちの間では常識になっています。
欧米では専門家の間にも動物実験に反対する人たちが増えてきており、医師や料学者でつくる動物実験に反対する数多くの団体があります。
脱“動物実験”への動き
近年、ヨーロッパを中心に動物実験に反対する市民の声が高まった結果、培養細胞やコンピューターシミュレーションなどによる動物を使わない研究方法「動物実験代替法」の開発が着々と進んでいます。
化粧品の分野では、EU (欧州連合)で、2013年3月に域内での動物実験および他国で動物実験された化粧品の販売が完全禁止になりました。この動きはEU以外の国でも起こってきています。
また、OECD(経済協力開発機構)やICH(医薬品規制調和国際会議)といった国際機関の化学物質や医薬品の安全性試験ガイドラインにおいても、代替法を取り入れる努力が進められています。企業レベルでも、動物実験をやめる決断をした化粧品メーカーや食品メーカーなどが増えてきています。
これらはJAVAが活動を始めた30年ほど前には予想もできなかった進歩で、動物実験の廃止はもはや現実離れしたことではありません。動物実験の廃止を目指すことは、長い間、動物たちを苦しめ続けてきた私たち人間の責務と言えるでしょう。
(次回は5月10日に公開予定です)
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