頑張る姿が胸を打つ! トラウマを乗り越えた保護犬ココ、いまではいいお姉さんに成長

 さかのぼること3年前、認知症のある先住犬を介護するため、家にいる時間が多くなっていたはるさん。このタイミングなら、新しく子犬を迎えても世話ができるかも……と思い立ち、保護犬サイトを見始めたという。そこで目に留まったのがミックス犬のココだった。

(末尾に写真特集があります)

居場所を探していたココと対面

 これまで保護犬を迎えた経験のないはるさん。サイト上でココにひと目ぼれしたものの、勢いだけで即決することはできなかった。その後も毎日、そのページを見続けること1カ月。ココは生後4カ月にまで成長していた。

 そこで、まずは実際に会ってから決めようと、片道2時間半をかけて徳島の保護施設まで会いにいったという。

雑種犬
お出かけするのが大好きなココ

「特に愛想がいい子というわけではなかったんです。しっぽを振って寄ってくることもなく、フードを差し出しても全然食べようとしなくて。周りの匂いばかり嗅いでいて。おびえているのともまた違うんですけど、なんだか居場所を探しているような感じで……。この子はきっとすごい不安なんだろうなと思ったんです」

 もっと落ち着ける環境を作ってあげたい、その一心ではるさんはココを引き取ることを決意する。

橋が苦手なことが判明

 もともと性格が温厚だったココは、引き取ってからも大きな問題を起こすことはなかったが、とりわけ苦手意識を発揮したのが「橋」だった。

橋を渡る犬
最初は近づけなかった橋も、おそるおそる渡れるようになってきた頃

「最初は橋が怖いってわからなかったんです。橋の前に来ると反対方向に向かって帰ろうとするので、お散歩で疲れたのかな、くらいにしか思わなくて。ただ、公園のちっちゃな橋の前でもすごい嫌がって渡ることができず、主人が抱っこするようなことがあちこちで続いて……。あぁ、この子は橋が怖いんだなって気づきましたね」

 そこで、通わせていたしつけ教室の先生とも相談しながら、少しずつトレーニングを開始。近所の1、2mしかないような小さなコンクリートの橋からスタートし、徐々に慣れさせていった。地道に練習を続けること数カ月、なんとか自力で橋を渡れるまでに成長した。

トレーニングでアイコンタクトもできるようになったココ
トレーニングでアイコンタクトもできるようになったココ

「いまだに得意ではないので、橋を渡る時はすごく背を低くして、おそるおそる一歩一歩進む感じなんです。怖いっていうのが後ろ姿にも表れているんだけど、私渡れるよって頑張る姿を見ていると、こちらが勇気づけられるんですよね。コーコ! がんばれ!っていまだに応援しながら渡らせているんです(笑)」

もうひとつの弱点「クレート」の克服

 同じくしつけ教室で判明した、もうひとつの弱点が「クレート」だった。ドアを閉めるとヨダレが止まらなくなり、ドアを引っかいて前脚を傷つけてしまったり、尋常ではない嫌がり方をしたという。そこで、ケガをしないよう金網ではなく布製でドアのないソフトクレートへと変更し、徐々に慣れさせていくことに。

クレーとに入る犬
ソフトクレートで練習中。今ではすっかりクレートの中で寝られるようになった

「最初は本当に、もうこの子はクレートの中で寝ることはできないのかなと思っていました。保護される前に、何か怖い思いをしてきたのかもしれませんね」

保護犬を迎えた今、改めて感じること

 初めて保護犬を迎えてみて、いくつかトラウマは判明したものの、改めてココを迎えられて良かったとはるさんは語る。

「当初は、もっとトラウマがたくさんあって大変なのかと覚悟していましたけど、ココは思っていたよりもそんなことはなくて。もちろん、保護犬でいろいろな問題を抱えている子はいると思いますが、どこから犬を迎えたとしても悩みはあるだろうし、ココはそのレベルの話だったので。本当にいい子を迎えられてよかったなという思いです」

雑種犬
苦手な橋を渡りきったあと「できたよ!」の顔

 保護犬かどうかに関わらず、犬によってさまざまな個性や弱点があるは当たり前。先住犬も含めて、それらを上手に克服してきたはるさんなりのコツはあるのだろうか?

「犬を飼う方にはぜひ、しつけ教室はのぞいてみてほしいですね。コマンドや芸を習得することもそうですが、なによりトレーニングすることによって、飼い主さんと犬との絆が深く強いものになると実感しています。マナーの行き届いた飼い主さんや社会性のあるワンちゃんが増えれば、犬嫌いの方やトラブルも減って、社会全体でもっと犬が認知される気がします」

居場所を見つけたココ

 1年前に、新たにボーダーコリーのベルを迎え、家族が増えたはるさん一家。やんちゃな2匹と過ごす休日は、すっかりアクティブなものに変化した。

「休日はこの2匹が中心の生活で、山や海や川、ドッグランにもよく行きます。もともと私たち夫婦はアウトドアな性格ではなかったので、主人と2人だけだったら絶対こんな出かけないよねってよく言ってるんです(笑)」

雪と犬
仲良しのベルとココ。ココはすっかりいいお姉さんに成長!

 はるさんにとって、ココは自慢の愛犬。散歩中も近所の人たちから可愛がられ、保護犬と聞いてびっくりされることが多いという。

「雑種犬・保護犬がかわいそうな子ではない、というのは多くの方に伝えたいですね。一匹一匹が個性のある子たち。保護犬であっても、ちゃんと向き合う事によって応えてくれる、素晴らしい子たちがたくさんいるんです」

 まだまだ“かわいそう”というイメージが先行しがちな保護犬だが、はるさん一家の例をみても、難しい性格の犬ばかりでないことが伺える。落ち着きがなくどこか不安そうだった保護犬出身のココにもようやく、本当の居場所が見つかった。

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栗原うらら
フリーライター・編集者。大手アパレル企業を経て、出版社へ入社。女性誌の編集部にて10年勤務したのち、フリーランスに。ファッション、ライフスタイル、人物インタビュー、ペットの記事などを執筆。幼い頃から犬、ウサギ、猫、モルモット、ハムスターなど多くの動物と触れ合いながら育ち、現在はブサ可愛いフレンチブルドッグの愛犬と同居中。instagram@bonstagram0502

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