「余命は長くない」繁殖引退犬のメロディ 命の危機を乗り越え、幸せな家族のカタチに
“使いものにならなくなった繁殖犬”として捨てられ、ボロボロの状態で保護されたヨークシャーテリアのメロディちゃん。あまりにも劣悪な環境にいて、それは当時ノンフィクション番組が報道に乗り出すほどだった。
引き取り手が見つからないなか、保護団体を経て飼い主となった田澤さんのもとにやってきたメロディちゃんは、残念ながら余命はそう長くはないと考えられてたが……。
惨状から救出された、元繁殖犬
飼い主の田澤さんとメロディちゃんの出会いは、今から約5年前のこと。一般社団法人「おーあみ避難所」が運営する犬猫シェルターのSNSを、田澤さんが以前からフォローしていたのがきっかけだった。メロディちゃんは当時、栃木の山の中で“使いものにならなくなった繁殖引退犬”として、数匹の仲間とともにレスキューされたばかりの犬だった。
それまでメロディちゃんが暮らしていた環境は、直接目にするまでもなく劣悪だったことが容易に想像できた。レスキュー当時推定10歳だったメロディちゃんは、田澤さんいわく「とにかくガリガリにやせていて体がぺったんこ。あと数%体重が落ちていたら、命はなかっただろうと獣医さんに言われました。目も白内障と思われる状態で、ほとんど見えていなかったし、歯もぐらついた1本が残っていただけだったんです」。
安心できる場所を手に入れて
特別な介護が必要なため、引き取り手が見つからなかったメロディちゃん。
「それでも、最期ぐらいはあたたかいところでみとってあげられたらな、と思って。保護されたばかりのときはたしかにひどい健康状態でしたが、ヨークシャーテリアとの生活はすでに3頭経験済みだったせいか……不思議とあまり迷いはなかったんです」と田澤さんは穏やかな笑顔で話してくれた。
田澤さん宅のリビングの一角、ぽかぽかと太陽の光が降り注ぐ窓際のスペースがメロディちゃんの特等席。目は光を感じる程度で、最近は耳も聞こえないメロディちゃんだが、ちょこちょこと愛らしく動き回るその姿からは、当時の惨状はまったく想像ができない。
「最初はどこになにがあるのかわからなくてパニックになっている様子もありましたが、今では『ここは安心できる場所』だということがわかってくれたのか、私が仕事に行っている間もいい子でお留守番してくれています」
命の危機と介護の日々
2年ほど前には腎機能が急激に低下し、命の危機もあったというメロディちゃん。鼻からチューブを入れ、栄養補給をする場面もあったが、獣医さんも驚くほどの回復力を見せてくれた。
「やはりここまで頑張って生きてきてくれた子ですから、生命力のすごさには心底驚かされます。ヨークシャーテリアという犬種の特性なのか、ネアカな性格にも助けられています。私は前の子の介護も経験していますので、そこまで苦労を感じないんです」
とはいえ、歯がなく舌がだらりと下がっているメロディちゃん。食べ物を自力でとることができないため、食事は田澤さんがスプーンでひとくちずつ与えたり、カリカリのフードを砕いてあげたり。食べた量に合わせて腎機能低下用の栄養補助ミルクでカロリーを補充もして、完全な要介護状態。
そんな毎日はきっと、田澤さんにとって大変でないはずはない。けれど、田澤さんとメロディちゃんが寄り添う姿から悲壮感などまったくない。これが“家族”としての自然な形だからだろう。
保護犬だからって、特別大変なことはない
「ひどい目にあった過去をもつ保護犬は、人になつくまでに少し時間がかかるかもしれませんが、こちらが愛情をあげたら絶対に分かってくれる。どんな仕打ちを受けても、人を愛することを忘れる子なんていないんです。優しくしてあげたことで幸せになってくれるし、それを見てまたこちらも幸せになる。
老犬になったらある程度お金や時間がかかるのはどの子も同じこと。保護犬だからといって特別かまえることはないと思うんです」
人間たちの勝手なエゴでつらい思いをし、命の危機を何度も乗り越えてきたメロディちゃん。今はやさしい田澤さんのもとで安心しきって、幸せな日々を送っている。
- ◆おーあみ避難所の活動の様子はホームページをご覧ください。
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