19歳になった愛犬 かけがえのない存在、犬友にも恵まれて

19歳1カ月。お花見にでかけたエリアル(長谷川さん提供)
19歳1カ月。お花見にでかけたエリアル(長谷川さん提供)

 鳥猟犬として知られる大型犬、イングリッシュ・セター。その平均寿命は10~12歳といわれるが、今回紹介するのは19歳を迎えたメスのご長寿さん。日本動物愛護協会で最高齢の大型犬としても表彰された。子犬の頃からどんな暮らしをして、どんなことが長生きにつながったのか、飼い主さんに尋ねてみた。

(末尾に写真特集があります)

一人息子の誕生日プレゼント

「今年2月9日、エリアルが19歳になりました。ここまで長生きしてくれるとは思っていませんでした」

 飼い主の長谷川洋幸さん(会社員、54歳)が感慨深そうに話す。大型犬としては超ご長寿のエリアルは、白茶模様(オレンジベルトン)のメスのイングリッシュ・セター。現在、長谷川さんと妻、そして妹分の犬ソフィアと共に千葉でのんびり暮らしている。

 エリアルが長谷川さん宅にやってきたのは2001年4月、生後2カ月の時だった。長男(24歳)が5歳の時の“誕生日プレゼント”として、家族に迎えたのだという。

2歳11カ月。長男(当時8歳)と兄妹のようなエリアル(長谷川さん提供)
2歳11カ月。長男(当時8歳)と兄妹のようなエリアル(長谷川さん提供)

「大型犬が好きだったので、息子と一緒にスポーティーな遊びができればと思って(アクティブな)犬を選んだんです。家族の生活も変わりましたね」

  サッカーチームに入っていた長男は、庭やリビングでエリアル相手にドリブルをしたり、柔らかいオモチャのボールを競争してキャッチしたり、兄妹のように仲良く遊んだ。エリアルと暮らすことで、自然と優しさも身についたようだ。

「ある時、息子がお年玉を貯金しておいてというので理由を聞くと、『エリアルが病気になったら治療費に使って』と言うんです。サンタさんにプレゼントのお願いをした時には、自分の欲しい物を記した後に、『エリアルにお菓子を下さい(犬用)』と記していました(笑)。犬と過ごすことで弱い者を守るような気持ちが芽生えたのだと思います」

7歳9カ月 長谷川さんとエリアル(左)、サラ・ブルー(長谷川さん提供)
7歳9カ月 長谷川さんとエリアル(左)、サラ・ブルー(長谷川さん提供)

犬の仲間と遊ぶのも大好き

 エリアルは快活で、人にも犬にもフレンドリーだった。
毎日行くドッグランで、年下のラブラドール・レトリバーのココちゃんと一緒に走り、首周りが土でドロドロになるほどわんプロ(プロレスごっこ)していたのだとか。

「一度、ココちゃんと共に脱走して走りまくり、“グレー”のセターになって帰ってきたことがありました。行っちゃおうかとふたりで相談してやったのかも(笑)」

18歳4カ月。エリアル(前列の左から3匹目)はソフィア(後列の左から2匹目)の親姉妹・お友達と山形へ(長谷川さん提供)
18歳4カ月。エリアル(前列の左から3匹目)はソフィア(後列の左から2匹目)の親姉妹・お友達と山形へ(長谷川さん提供)

 陸にとどまらず水遊びも大好きで、川、湖、海、ドッグプールなどでよく泳いでいた。

 生後4カ月で鬼怒川に自分から入り、5カ月の時には台風後の外房の海でサーファーやボディーボーダーのいる沖まで、長谷川さんと一緒に泳いだこともあった。一家の旅行のプランも、当然エリアル中心だった。

「犬友」の輪が広がって

 エリアルを迎えてから長谷川さん自身、早起きをしたり行動的になったりしたというが、もうひとつ大きな変化は、たくさんの“犬友”ができたことだという。

「最初はドッグショーに誘われてセター仲間と出会い、その後、ドッグラン等で会うようになりました。長男が9歳、エリアルが4歳6カ月の時に同じ犬種のメス、サラ・ブルーを佐賀から迎えたのですが、サラの姉妹兄弟たちと毎年、和歌山と軽井沢で会うようになりました。そこにセターの友達が参加し、どんどんセターの輪が広がったんです」

19歳0カ月。ドッグランでとことこ歩いています (長谷川さん提供)
19歳0カ月。ドッグランでとことこ歩いています (長谷川さん提供)

 仲間との旅行は、泊まりでは年に1~2回。日帰りのお出かけ(旅行)も加えたら、年に5、6回ぐらいはしていたそうだ。

長生きの秘訣は?

 周囲のセターの仲間の中でも、エリアルは群を抜いて長生きをしている。

「エリアルが若い時に一緒に遊んだ犬たちはみんな“お空組”になり、すでに次の次の世代に変わっています。エリアルが15歳9カ月の時、若返って少しでも長生きして欲しいと思い2番目の妹ソフィアを迎えたのですが…最初の妹サラ・ブルーはエリアルより先に12歳で病気で旅立ちました」

 エリアルも12歳の時、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症状=コルチゾールというホルモンが過剰分泌され全身に様々な症状が出る)にかかったが、薬を服用して上手にコントロールができているという。毎年、血液検査をしているが、昨年も正常値だった。

 獣医さんには『病院ではエリアルちゃんが最高齢の犬。長生きは長谷川家の愛情とケアがあるから』と言われたそうだ。

筋力をつけ、口内ケア欠かさず

 実際にどんなことが長生きにつながったのか、長谷川さんに振り返ってもらった。

「若い時からドッグランでいっぱい走って、海やプールで泳いで筋力をつけていたことが大きいのではないかと思います。食事の管理もきちんとしてきました」

 食事は主にドライフードに肉や季節の野菜をトッピングしてあげてきた。ブリーダーにいた時から食べているメーカーのドライフードを、成長・年齢に合わせて変えて、体重を測ってカロリー摂取量(フード量)を調整した。

 子犬の時から「口内のケア」も欠かさなかった。

「一日3食、食べた後は歯ブラシで磨いてあげて、歯石がついた時はスケーラーで取ってあげました。今でも歯はすべてそろっています。人間もそうですが自分の歯で何でも食べられると、長く健康でいられますよね」

今年2月、孫と。親子3代が交流する19歳のエリアル「出会えて、よかった」(長谷川さん提供)
今年2月、孫と。親子3代が交流する19歳のエリアル「出会えて、よかった」(長谷川さん提供)

 室内の環境にも配慮している。家がフローリングなので、腰や脚の関節傷めないよう、今でも毎週、足裏の毛のカットをしているそうだ。

 今年2月。19歳の誕生日にはソフィアの親と姉妹と千葉県の小谷流の里(ドギーズアイランド)に泊まった。仲間から「20歳の誕生日・成人式を迎えようね」というメッセージもたくさんもらったという。

 ここ最近は老化が進んできたというが、エリアルは、長谷川さんにとって人生を共にしたかけがえない存在であり、永遠の娘だ。

「エリアルが来た時に幼稚園児だった息子は成人し、社会人となって結婚し、昨年、子供も生まれました。素敵な時間を一緒に過ごせて幸せいっぱいです…今、あらためてこう思います。エリアル、うちの子になってくれて本当にありがとう」

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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