ペットの親権問題!? 離婚したら犬や猫はどちらが引き取るの?

 sippo読者の皆様にとって、ペットはかけがえのない「家族同然」の存在と言えるのではないでしょうか。もし、やむを得ず夫婦が離婚することになったら…この家族同様であるペットは、どうなるのでしょう。

民法上ペットは「動産」

 どちらについていくか、犬や猫に選んでもらっては…と言いたいところですが、このテーマを考えるにあたっても、ペットは法律上モノなのかそうではないのか、あるいはモノでも人でもない存在なのか、ということと関連します。

 もう少し詳しく説明しましょう。未成年の子どもの場合は、民法で、離婚するときに親権者を決めることとされています。一方、ペットについてはこうした条文はないため、少なくとも法律上は、ペットの親権者という考え方はありません。

法律上はペットの親権という考え方はない
法律上はペットの親権という考え方はない

 また、民法上の区分では、ペットは「動産」に含まれるため、基本的には所有権が誰にあるのかという考えによらざるを得ません。そのため、原則として家財道具と同じように考えることになりますが、動物は、ただのモノとは違って「命あるもの」である(動物愛護管理法第2条1項)ことから、ペット特有の考えを一部で取り入れることができると考えられます。

結婚前から飼っていたなら元々の飼い主の財産に

 以上の基本的な考え方によれば、ペットを夫婦のどちらが引き取れるかは、次のとおり整理されるでしょう。

(1) 夫婦の一方が結婚前から飼っていたペットを連れてきたケースでは、もともと飼っていた側の特有財産であり、離婚するときは所有者として当然にそのペットを連れていくことができます。他方が結婚後に主に世話をして可愛がり、ペットが懐いている場合であっても、残念ながら結論は変わらないでしょう。

(2)結婚後に飼い始めたペットについては、ペットショップで購入した、保護施設から無償で譲り受けた、道ばたで拾ったなど、どのような経緯でも、また、購入した場合でどちらがお金を出したとしても、犬の場合で自治体に登録しているのがどちらでも、「実質的夫婦共有財産」であり、財産分与の対象となります。

 夫婦のいずれもがペットを引き取りたいと希望した場合で、話し合いがつかない場合は、その他の財産とあわせて、どちらに分与するのがふさわしいか、裁判所が判断することになるでしょう。その際の判断材料として、子どもの親権を定めるときの考え方を応用できると考えられます。 

 例えば、普段の餌や水、トイレの処理、ブラッシング、散歩などの世話をしていたのはどちらであるか、別れた後の居住環境がきちんと整っているか(特にペット可の物件か)、ペットを飼育できる十分な収入があるか等の事情が重要なポイントになるでしょう。

結婚前から飼ってたペットはもともと飼っていた側の特有財産に
結婚前から飼ってたペットはもともと飼っていた側の特有財産に

夫婦双方が飼えない場合は

 夫婦のどちらも飼えないという場合もあるでしょう。ただ、飼い主には終生飼養の責務が定められていますので(動物愛護管理法7条4項)、安易な飼育放棄はできません。どうしても飼い続けられないという場合は、せめて自分たちで責任をもって次の飼い主探しをしなければなりません。

 要らない家具はお金を出せば廃棄処分できますが、ペットはそうはいきません。この点も、単なるモノとは違っています。

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細川敦史
2001年弁護士登録(兵庫県弁護士会)。民事・家事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。動物に対する虐待をなくすためのNPO法人どうぶつ弁護団理事長、動物の法と政策研究会会長、ペット法学会会員。

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この連載について
おしえて、ペットの弁護士さん
細川敦史弁護士が、ペットの飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点からひもときます。
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