犬や猫2万6千匹、繁殖・販売業者のもとで死ぬ 流通量の3%

埼玉県内の業者のもとで生まれた子猫。母親の下痢にまみれていて「朝出勤してみたら、死んでいた」(元従業員)という(動物愛護団体提供)

 2018年度に国内で繁殖・販売された犬猫のうち約2万6千匹が、繁殖業者やペットショップのもとにいるうちに死んでいたことが、朝日新聞の調査でわかった。流通量の約3%にあたり、この5年間の死亡数は計12万匹以上にのぼる。ペットブームの一方で、業者の飼育環境の改善が急務であることが浮き彫りになっている。

3階建ての住宅で100匹近い猫を飼育

 今年3月、劣悪な環境で犬を飼育していたとして、東京都府中市などで繁殖・販売業を営む男が動物愛護法違反(虐待)の疑いで警視庁に逮捕された。一部の施設には排泄物が堆積していて、保護された犬のなかには衰弱が激しいものもいた。監視・指導にあたっていた東京都によると、男は、犬猫38匹を熱中症とみられる症状で死なせたこともある。男は、「人手不足で忙しく面倒が見られなかった」などと供述したという。

 なぜ、少なくない数の犬や猫が繁殖・販売業者のもとで死ぬのか。2018年夏、関東地方北部の猫の繁殖業者のもとを訪ねた。住宅街にある3階建ての戸建て住宅。その中で100匹近い猫が飼育されていた。

 この家に住む女性は、10年ほど前から猫の繁殖業を営んできた。当初は少数だったが、近年、飼育数を増やしてきた。2階は人間が住み、1階と3階で猫を飼育し、繁殖させていると話した。

「どう考えても人手が足りていなかった」

 案内されて1階部分に入ると、アンモニア臭が鼻をついた。狭いケージに成猫が多数入れられ、おなかの大きな妊娠中の猫が数匹だけ、屋内をゆっくりと動いていた。3階は見せてもらえなかった。常に20~30匹の子猫が生まれ、次々に売れていくという。

 だが、これだけの数の猫の面倒を見ているのは、1日あたり、女性を含めて1~2人程度。以前、アルバイトをしていた女性は、頻繁に猫の死体を見たと証言する。「コストを抑えるため、どう考えても人手が足りていなかったし、適切な診療を受けさせてもいなかった。とにかく病気が多く、繁殖用の猫は、くしゃみや鼻水を出しながらでも交配、出産をさせられていて、治療を受けさせてもらえないまま死んでしまう子もいた。親の病気に感染して死ぬ子猫も少なくなかった」

 取材に、業者の女性は「瀕死の状態を放置しているわけではない。やることをやってもダメな子はいる」と答えた。

猫の流通量が急増

 朝日新聞は、繁殖業者やペットショップが自治体に提出を義務づけられている「犬猫等販売業者定期報告届出書」について、事務を所管する都道府県、政令指定都市、中核市に18年度分の調査を行った(回収率100%)。届出書の提出は13年9月に施行された改正動物愛護法で義務づけられたもので、朝日新聞では14年度分から、同様の調査を続けている。

埼玉県内の業者のもとで繁殖に使われている猫。元従業員によると「下痢などの症状があってもケージに入れっぱなしのままだった」という(動物愛護団体提供)

 犬猫あわせた流通量は、前年度を約4万匹上回る、のべ89万6126匹。特にブームのさなかにある猫の流通量が急増しており、前年度比9. 7%増の19万9569匹だった。4年連続の増加で、14年度(13万3554匹)と比べると4年で1.5倍になっている。犬の流通量は前年度比3%増の69万6557匹だった。

 一方、繁殖から流通・小売りまでの過程で、2万6249匹の犬猫が死んでいた。前年度より1778匹増え、流通量に対する死亡数の割合を見ると、犬(1万9763匹)は2.8%、猫(6486匹)は3.2%となり、猫のほうが高かった。

 犬猫の死亡数は毎年度、増える流通量の3%程度で推移し、改善していない。届出書は、個体ごとにつけられる帳簿をもとに作成されており、死亡数には原則、死産や、繁殖に使われて引退した後に高齢のため死んだ犬猫は含まれない。このため、販売用の子犬や子猫、繁殖用の親犬や親猫が、病気やケガ、ストレスなどで死んでいると見られる。

「適切な環境で飼育できているか危惧」

 日本動物福祉協会の調査員、町屋奈獣医師は猫について、ブームによって需要が高まっているのに加え、「人気の猫種」が出てきて、ペットショップで購入するという消費行動が浸透してきたのではないかと指摘。一方で「安易に猫の繁殖を始めた業者が、適正な環境で飼育できているのかどうか、危惧される」と話す。

 環境省では犬猫の繁殖・販売業者の飼育環境改善を目指し、検討会を設置。従業員1人あたりの上限飼育数など具体的な数値を盛り込んだ基準作りを進めている。今夏までに素案を示す予定で、新たな基準を盛り込んだ環境省令は来年6月に施行される。

【関連記事】犬や猫の繁殖・販売業者への数値規制 なぜ必要?今後の焦点は?

太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者、文化くらし報道部を経て、特別報道部・専門記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。

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動物福祉や流通、法制度などペットに関する取材を続ける朝日新聞の太田匡彦記者が、ペットをめぐる問題を解説するコラムです。
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