コロナウイルスが変えてしまった 私とワンコのイタリア暮らし

 ラブラドール・レトリバーのグレース(7歳/メス)と、雑種猫のニーナ(7歳/メス)、ジージョ(2歳/オス)と暮らす私のイタリア生活がガラリと変わったのは、3月12日。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、イタリア全土がロックダウンに突入したときからだ。

(末尾に写真特集があります)

 北イタリアの一部で、まず学校閉鎖が始まった。2月22日、高校生の娘の学校が一週間休校になるという連絡を、バカンス中のスキー場で受け取った私たちは「なーんだ、二週間ぐらい休みにすればいいのにね」なんてのんきに笑っていた。

 たぶんほとんどのイタリア人たちも、同じような感じだったと思う。あのときは誰も、イタリアが、世界が、こんなことになるとは思ってもいなかったから。でも、その日から坂道を転がり落ちるように感染はどんどん広がり、被害者数も膨れ上がっていった。そしてロックダウンの生活が始まった。

ロックダウン前の薬局でソーシャルディスタンスを守るグレース。

高級ブティックもヘアサロンも。犬同伴OKだったイタリア

 イタリアでは、犬は室内飼いが一般的だ。フリーランスのライターという職業柄、私は家で仕事をしていることが多く、夫は職場へ、娘は学校へ行っている昼間は、グレースも猫たちも私と過ごす。私が原稿を書いている横で、彼らはソファーで大イビキをかいている。

左からニーナ、グレース、ジージョ。家でのいつもの光景。

 そしてイタリアは、だいたいのところへ犬と一緒に行ける。美術館、映画館、病院、スーパーマーケット(OKのところもある)、一部の高級レストラン以外は、ほぼどこへでも行けた。高級ブランドのブティックやヘアサロンも大丈夫。

 だから犬同伴が許されないところでない限り、私はグレースと一緒に出かけていた。女友だちとランチの約束をしていて、何かの理由でグレースが一緒じゃないと「あら? 今日はグーちゃんいないの?」と言われたほどだった。

 ところがいまは、グレースどころか、夫や娘とさえも一緒に出かけることができない。必要最低限の食料や薬品の買い物と、緊急の外出は認められているけれど、基本的には「ひとりで行くべし」ということになっている。

 なんで? 同じ家に暮らしている家族なのに、一緒に行っちゃ行けないの? と思うけれど、1人×10世帯=10人、でも2人×10世帯だと20人、3人×10世帯=30人……と同伴者が増えるごとに、人混みになってしまうからだ。

スーパーも店内での人混みを避けるため入店制限をしている。だからいつも外に行列ができる。

ロックダウンしたいま、ペットショップの営業は?

 ロックダウンになってから、営業していいのはスーパーマーケットを含む食料品店、薬局、新聞スタンド、バスのチケットなども扱うタバコ屋など、暮らしていくのに必要最低限なものを扱う店だけだ。レストランやバールはテイクアウト以外できないから、外食もお茶もできない。美容院も休業だから、一ヶ月以上たったいま、私の髪はボサボサだ。

 ちなみにペットショップも「命をつなぐものを売るところ」だから、営業していいのはうれしい限り。夫にはスーパーの安売り肉でも(笑)、グレースや猫たちにはオーガニックのペットフードを買って甘やかす私。

 ロックダウンになって最初に心配したのは、添加物がいっぱい入ったペットフードしかあげられなくなったらどうしよう! ということだったからだ。

「ひとりで外出するように」と決められているけれど、「犬と一緒に行ってはいけない」とはどこにも書いていない。むしろ犬の散歩は許されていて、ロックダウンになってすぐは、“犬が引っ張りだこ”という、冗談のような本当の話があちこちから聞こえてきた。犬さえ連れていれば、特別な外出理由がなくてもみとがめられない。だからみんなが散歩に行きたがったのだ。

 ただし「ひとりで外出」が絶対。だから、犬を飼っていない人が犬を借りたがったり、果ては「猫にリードをつけて散歩している人を見た」なんていうふざけた投稿まで、SNSに登場した。

顔なじみの店員さんに会いたがる愛犬

 規制がより厳しくなって、散歩も自宅から200m以内と決められてしまった。そしていまは誰も、犬と一緒に買い物へ行かいない。グレースがしっぽをブンブン振ってあいさつすると、なでてくれたり、おやつをくれた顔なじみの店員さんのいるスーパーやペットショップも、いまはみんながマスクをして黙って買い物をするだけだ。

 感染してもほとんどの人は無症状で、でも感染させてしまうことはあるというから、もし飼い犬を買い物に連れて行って、感染者が飼い犬をなでたら? 感染者の飛沫(ひまつ)が落ちた地面を歩いた飼い犬が、ウイルスを家に持ち帰ったら? 

 犬に感染する確率はほぼないと言われているけれど、“絶対ない”ではないのなら、安心できない。

 仕事や家族を失うことに比べたら、ささいなことではあるけれど、こんなふうにグレースと私の生活は変わってしまった。

行きつけのお肉屋さんがお肉をくれるのを覚えているグレース。用がなくても絶対寄りたがっていた。

 グレースにいま聞いてみたい。

 ドッグランにも公園にも行けないけど、家族がいつも家にいるから「お留守番がなくてうれしいワン」と答えるか、「お肉屋さんのお姉さんやペットショップのお兄さんに、おやつをもらいに行きたいワン」「犬友だちと遊びたいワン!」と答えるかどうか。

宮本さやか
1996年よりイタリア・トリノ在住。イタリア人の夫、19歳の娘、ラブラドール・レトリバーのグレース、猫のニーナとジージョと暮らしつつ、日本とイタリアの「食」を発信するフードライター。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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