今年も一緒に桜を いつもそばにいてくれる愛猫に「ありがとう」
チャッピーとは随分いろんなところへ行った。静岡で、映画「メゾン・ド・ヒミコ」の撮影中に出会い、一緒に暮らすこととなった。車で東京へと戻る途中、海の見える高台で休んだ。まだ、猫の初心者だった私は、風が気持ち良いのではと崖の近くまでチャッピーを連れて行った。チャッピーは、地面にしがみついて、固まった。そのマジな表情につい笑ってしまった。きっと砕け散る波の音も、吹き抜ける風の音も怖かったのだろう。本当に悪いことをしたと今は思う。
「眉山」という徳島の阿波踊りを題材にした映画で、現地のマンションに2カ月滞在した。台所の窓から、徳島のシンボル、眉山が見えた。チャッピーは窓の縁で背筋を伸ばし、じっと眺めていた。その静かな背中を時々思い出す。
大島弓子さん原作のドラマ「グーグーだって猫である」を2シーズン、宮沢りえさんと撮影していた時は、吉祥寺に2年以上住んだ。大島さんの住んだマンションに自分も暮らして撮影をしたかったのだ。井の頭公園を俯瞰で見渡せるマンション、広がる空の下、満開の桜をチャッピーと見た。お互いすでに死んでいて、桜に集う生きた人々の幸福を願うような気持ちになった。
一昨年は、時代劇「引っ越し大名!」を撮影するため、京都に3カ月。嵐山のすぐ近くのマンションだった。嵐電の警報機の音が遠くに聞こえてきた。どこか懐かしいその響きを一緒に聞いた。
御殿場に別荘を持った。そこでは随分と多くの作品の脚本を直し、コンテを描いた。年を取ると早起きになり、夜が明け、ゆっくりと見え始める富士を眺めることが増えた。そんな時、そばに来て、おとなしく、時にパソコンやコンテ用紙の上で邪魔をして、チャッピーがいてくれる。
16年、いつも、そばにいてくれて、ありがとう。そろそろ今のマンションの窓からも、桜が見えます。今年も一緒に見ようね。
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