「短命でも、一緒に幸せに」 心臓病の子猫を迎えた夫妻に胸アツ
とても人が好きな猫は、カメラを向けるとこちらへ駆け寄ってくるので、かえって撮影が難航するかも……と心配したけど、その猫はすぐに私の意図を察して、1階から2階、屋根裏部屋まで「ついておいでよ」と案内してくれる、頭のいい子でした。
猫の名まえは「グラン」(1歳・オス)。「ブリティッシュショートヘア」という純血種だけど、実は保護された猫だと聞き、会いにいきました。
梶浦家(東京都渋谷区)がグランを迎えたのは、先住猫「メルシー」(アメリカンカール・7歳・オス)の遊び相手になってほしかったから。長いこと一緒に暮らしてきた犬が亡くなり、メルシーはボーっとして覇気がなくなり、元気をなくしていました。
このままではいかん!と、昔飼っていたのと同じ「黒猫」が欲しい奥様の純子さんと、懐きやすい「メス猫」が欲しいご主人の道成さんの希望を合わせ、譲渡サイトで「メスの黒猫」を探し始めました。しかし、いろいろな猫を眺めているうちに、メルシーには歳が近い猫よりも子猫の方がいいのでは?と思うように。そんななか、運命とも言える一通のメールが届きました。
連絡をくれたのは、神奈川県で動物保護活動をするSさん。メルシーの元保護主であるSさんは、純子さんとは頻繁に連絡を取り合う間柄で、一家が2匹目の猫を探していることも知っていました。そんなSさんの「うちに子猫がいるから見に来ない?」という誘いを受け、出会ったのが生後4カ月のグランでした。
おとなしい大人猫のメルシーに慣れていた夫妻は子猫のやんちゃぶりに圧倒され、「逆にメルシーに負担がかかるかも」と心配になりましたが、人にも猫にも臆さないグランの天真爛漫な性格や、見た目の可愛さは文句のつけようがないほど。
何より、もっとも心に残ったのは、グランに「心室中隔欠損症」という心疾患があったこと。グランはペットショップに並ぶ前の「競り」のチェックで心雑音が見つかり売り物にならなくなった猫で、繁殖場に戻されたところをレスキューされました。手術のリスクが高いため、対処療法で経過を見守っていると説明され、家族会議を重ねた結果、「たとえ短命でも一緒に幸せに過ごせれば」と、数日後、夫妻は子猫の引き取りを申し出ました。
聞けばメルシーも、飼われていた猫カフェが倒産し、譲渡先を何カ所もたらい回しにされ、心身ともに調子を崩していたところを、Sさんの団体にレスキューされた過去がありました。
夫妻はどちらも猫歴が長く、純子さんは4匹の保護猫と一緒に嫁いだといいます。道成さんも長年保護猫と暮らし、結婚後は保護猫や地域猫について広く伝える活動をしたいと、フリーペーパーを刊行するまでに。そんなおふたりだけに、メルシーやグランを迎え入れたことは必然だったのでしょう。私には譲渡が難しい猫から選んでいるように見えました。
家に来た当初は、激しく遊ぶと「ハーハー」と口呼吸をしたグランでしたが、今はそんな様子もなくなり、取材中も私の前で元気に走り回っていました。「心室中隔欠損症」は成長過程で心臓の穴が塞がることがあり、長生きする猫もいるとか。それでも、「何があるかわからない」と気を引き締め、経過観察を続けていくと語る夫妻を見て、Sさんが梶浦家にグランを託したがった理由がはっきりとわかりました。
探していた「メスの黒猫」ではなく「オスのグレー猫」になったわけですが、おふたりは「家族に迎え入れば、どんな子でも可愛い!」と気にしていない様子。望んでもこればかりはご縁ですから……と笑う梶浦夫妻の元へ、次はきっとメスの黒猫があらわれるでしょう(と、私は予言したい)。
- グランとメルシーの橋渡し:BJドッグレスキュー
- 撮影テクニックの説明
- テクニック1&2【動きのある写真】
室内の猫撮影はおとなしくなりがち。階段やハシゴに誘導し、動きを出す。
テクニック3【鏡】
グランのそばに鏡があったので、2匹に見える位置へ急いで移動。お得な画面構成と、ペロンとした瞬間がよりいっそう楽しい写真に。グッジョブ!
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