犬猫の迷子捜索 ペット探偵の奮闘記に学ぶ技と、意外な現実

迷子猫、ロシアンブルー「ソラ」の帰宅に、同居犬「ハナ」も大喜び(第6章)(「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ」新潮社/以下同)
迷子猫、ロシアンブルー「ソラ」の帰宅に、同居犬「ハナ」も大喜び(第6章)(「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ」新潮社/以下同)

 行方不明になった犬や猫を探すペット探偵の第一人者、「ペットレスキュー」代表・藤原博史さんの新刊「210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記」(新潮社)が発売された。犬猫の捜索事例7つを通じて、プロの技を紹介する本書について、話を聞いた。

(末尾に写真特集があります)

 開いたドアのすき間から自宅の工事、転居、はては誘拐や空き巣事件まで。開業から20年以上、約3000件におよぶペットの捜索経験のなかから厳選されたエピソードでは、さまざまなきっかけでペットが行方不明になっている。当時を振り返りながら、何を考え、どのような課程で発見に至ったかを藤原さんが解説するのだが、そのひとつひとつが、まさに生きた捜索マニュアルだ。

著者の藤原博史さん
著者の藤原博史さん

 捜索はまず、飼い主から話を聞くことから始まる。いなくなった状況はもちろん、ペットの性格や年齢、性別、バックグラウンドや飼い主との関係性など、さまざまな情報からプロファイルを作成し、それをもとに、家の内外や周辺でペットが潜んでいそうな場所を探していく。

 藤原さんは「地味な作業の繰り返し」と言うが、目を見張るのは、捜索の課程で発揮される野生的な勘と、それを裏打ちする動物に関する知見。ペットの目線と気持ちを体現しながら捜索にあたる様子は、飼い主として参考になると同時に、物語として読んでいてもおもしろい。

「獣医さんに相談しても的確なアドバイスがもらえなかったと連絡をくださる方も多いですが、動物にくわしいことと、迷子のペットについてくわしいことは別物ですから、獣医さんを責めるのは筋違いです。どのケースも1匹1匹違うので、話を聞いて細かいプロファイルを作ります。ペット探偵としてはそこが難しい部分かもしれませんね」

 ここ数年は全国から依頼が殺到しており、実際に捜索を引き受けられるのは1割程度。大半は電話でアドバイスをするにとどまるが、それでも飼い主にとても感謝されるという。

 それならば、もっと多くの人を助けられるようにと、昨年、いぬねこ写真アプリ「ドコノコ」と協力し「迷子捜しマニュアル」を作成した。それを読んだ飼い主が無事ペットを発見するケースが増えてきたことも、本書の執筆を後押しする要因になったと語る。

長年の経験から、猫が潜んでいそうな場所を捜索する
長年の経験から、猫が潜んでいそうな場所を捜索する

過酷なサバイバル生活が、ペットの毛色を変えてしまうことも

 迷子捜索の具体的なアドバイスや、藤原さんがペット探偵になるまでの半生を振り返る、波瀾万丈のストーリーは実際に本で読んでいただくとして、本書のなかで特に印象深かったいくつかの点について、聞いてみた。

 7つのエピソードのなかには、見つかった猫が愛猫か見分けられなかったケースが出てくる。まさか飼い主がわからないとは……と思ってしまうかもしれないが、愛猫をよく知るからこそ、惑わされてしまうこともあるようだ。

「外での過酷な暮らしから顔つきが変わったり、ストレスから毛色が赤茶色からクリームっぽい薄い色に変わっていたケースもありました。また、警戒心が強かった子が、生き延びるために人に媚びを売るようになるなど、性格がガラッと変わることもあります」

あまりにやつれ、依頼主から「この子じゃない」と言われた「ギャルソン」(第2章)
あまりにやつれ、依頼主から「この子じゃない」と言われた「ギャルソン」(第2章)

 黒猫など、個体差が見た目にわかりにくいペットの場合も難しい。本書にも、動物病院に向かう途中に逃げてしまった黒猫を数日後に捕獲したものの、実はそれは別の猫で、もう一度捜索をし、本物を見つけたというエピソードが出てくる。飼い主はなかなか以前のように心を開いてくれない1匹目の猫に違和感を覚えながらも、まさか自分の子ではないとは思わなかったという。それほどに、2匹は見た目がとてもよく似ていたのだ。

「いつもと違うペットの行動は、家に帰ってから1週間程度で治まるはず。でもそれが1カ月以上続くようなら、別の子である可能性も考えた方がいいかもしれません」

いなくなった黒猫ロック(右)と、間違って保護した黒猫(第8章)。飼い主さんは「このままうちの子になってもらっても」と2匹とも飼うつもりのようだ
いなくなった黒猫ロック(右)と、間違って保護した黒猫(第8章)。飼い主さんは「このままうちの子になってもらっても」と2匹とも飼うつもりのようだ

 ちなみに、毛色といえば、猫は色や柄で性格が違うと言われるが、たとえば警戒心が強いサビ猫は人目につきにくく、逆におっとりおおらかな性格の子が多い茶トラは目撃情報が入りやすいなど、迷子になった場合にも若干傾向の違いが出るようだ。

情報提供は、飼い主の心の支えにも

 もうひとつ印象的だったのは、第三者の情報提供が、いかに重要なカギを握っているかという点。ペットと暮らす人なら、街中に貼られた迷子ペットのチラシやSNSの投稿を見て心を痛め、協力したいと思ったことがあるかもしれない。そのとき、何をすれば効果的なのだろう。

「まずはチラシや迷子情報を見て、関心を持っていただくことが大切。もし似ている子を見かけたら、できればスマホで撮影して、その場で『今います』と連絡をしてあげてください。ペットが見つからないことで気持ちが追い詰められ、孤独を感じている飼い主さんも多いので、誰かが気にかけてくれていると知ることは、捜索を続けるモチベーションにつながるはずです」

 見つけたのが遅い時間だったり、確証が持てないと連絡をためらうこともあるかもしれないが、たとえ遅くとも、間違っていたとしても、連絡をすること自体が飼い主の支えになることが多いと、藤原さんは言う。

愛猫「たいちゃん」と再会する飼い主の山崎さん。発見の決め手はやはり情報提供(第1章)
愛猫「たいちゃん」と再会する飼い主の山崎さん。発見の決め手はやはり情報提供(第1章)

 いくら気をつけていても、思わぬかたちでペットを迷子にさせてしまうことは、誰にでも起こりうる。そのとき、この本に出てきた事例から学んでおくことは、無事ペットと再会するための「お守り」となってくれるはずだ。

 最後に、本書に込めた想いを聞いた。

「ペットが行方不明になったら、彼らがかけがえのない存在だと再確認するはずです。この本に出てくる飼い主さんのエピソードを通じて疑似体験することで、『もしかしたら自分も』と危機意識を持っていただくと同時に、ペットが当たり前にそばにいてくれる幸せに気づいてもらえたらと思います」

『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』(新潮新書)
著者:藤原博史
発行:新潮社
体裁:新書判、ソフトカバー、192ページ
定価:720円+税
(書影をクリックするとアマゾンにとびます)

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