ペット同行避難、対応分かれる自治体 「断られた」「軒下まで」
台風19号では、東京都内で多くの避難所が設けられたが、ペットを受け入れるかどうかの対応は分かれた。家族同然のペットを残していけないと、避難所に行くことをあきらめた人も。アレルギーなど課題はあり、自治体も受け入れ態勢の検討を始めている。
「最悪、犬と一緒に死ぬつもりだった」。葛飾区の2階建て住宅で2匹の大型犬と暮らす70代男性は、台風が来た10月12日のことを振り返る。
2匹とも体長は約1.5メートル。普段は庭で飼っている。「こんなに大きな犬を避難所に連れて行けない」。当日は自宅の1階に犬を入れて過ごした。
台風19号の際、区は中川と荒川に囲まれた亀有など約10万8千世帯、約20万8千人に避難勧告を出した。だが、117カ所の避難所ではペットを受け入れる態勢がなく、判断はそれぞれの職員に任せたため、受け入れなかったところもあった。
避難所に来たのは約2万人。区には、「ペットと一緒に行ったが断られた」といった声も寄せられたという。区の担当者は「ペットの大きさや種類は様々。今後、対応を検討していきたい」と話す。
ペット同行可でも避難しなかった理由
隣の足立区では、全避難所でペット同行可だ。対応は避難所によって違い、区立大谷田小学校ではペットをケージに入れた上で、げた箱の前まで入室可とした。
ただ、同校近くに住む50代女性は2匹の小型犬と一緒に避難しようと考えたが、結局しなかった。「私と離れるとほえ続けて迷惑をかけるし、心配」という理由だ。当日は川に近い自宅で、不安を感じながら過ごしたという。
多摩川が流れる多摩市の50代女性も、自主避難を考えたが、悩んだ末にあきらめた。9月の台風15号の際、自治体に問い合わせたところ、「ペットが入れるのは避難施設の軒先まで」と聞いたからだ。
生後直後から過ごした小型犬は、家族同然。「嫌がる避難者がいるのは理解できる。どうやったら『共存』できるか、自治体も市民も一緒に考える必要があると思う」と話す。
ただ、同市内でも、ペットと過ごせるように急きょ対応を変えたところも。市総合体育館では、担当職員と施設の指定管理者が協議し、ペットと同行者のみで過ごせるスペースを用意した。少なくとも8家族がそこで過ごしたという。
市の担当者は「動物にアレルギーがある人もおり、慎重な対応が必要。市民に意見を聞き、どこまで拡充できるか検討したい」と話す。
(藤原伸雄、木村浩之)
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