散歩と運動で愛犬を健康に 筋肉をきたえて老化を遅くする方法

 犬の運動は散歩だけで十分と思っていませんか? 歩くだけでは全身の筋肉をバランスよく鍛えることができません。犬は3歳頃から医学的には衰えが始まっているのです。ただし若い頃から運動で効率よく筋肉を鍛えれば、犬が高齢になっても筋肉量を維持できます。運動は肥満や病気の予防になり、老化のスピードを遅くすることにもつながります。健康寿命をのばす運動のメリットや散歩に一工夫するアイデアを紹介しましょう。

運動で犬の健康寿命をのばせる?

 犬は性成熟に達したときから医学的には老化に向かいます。衰えが始まるのはまだ先ですが、たとえば椎間板(ついかんばん)ヘルニアの発症が3歳頃から増えるのは、筋肉量が減っていることも原因です。さらに年をとって筋肉量が減ると足腰も弱ってきます。運動で筋肉量を維持・増進することが健康寿命をのばすことにつながります。

 人間は筋肉量を増やせば老化を遅らせ、健康寿命をのばせることが明らかになりました。犬についてはまだ研究中ですが、人間と同じように運動で犬も健康寿命をのばせると考えられているのです。

犬の筋肉を鍛える3つのメリット

1.老化のスピードを遅くする

 人間は加齢に伴い全身の筋肉量が減る「サルコペニア」という状態になります。これが引き金になって「ロコモティブ・シンドローム」になり、要介護の段階まで進んでしまうことも。犬も同様であると思われることから、散歩や運動で筋肉を維持・増進することで老化のスピードを遅くすることが重要です。

散歩や運動で、筋肉の維持・増進を
散歩や運動で、筋肉の維持・増進を

2. 関節炎・神経疾患の予防

 老犬になると膝蓋骨(しつがいこつ)や股関節(こかんせつ)などの関節を筋肉で支えている筋肉が衰えて不安定になります。股関節形成不全や膝蓋骨脱臼が先天的にあると筋肉の衰えで関節炎になります。11歳の犬の約9割が軽度も含めて関節炎を発症しているというデータもあるほど。椎間板ヘルニアなどの神経疾患の発症も年齢とともに増えていきます。

 日本では小型犬の膝蓋骨脱臼、大型犬の股関節脱臼が問題になっています。これらは遺伝疾患としても知られ、運動だけでは防げないケースも。犬を飼う前に将来を考えることも重要です。

3.肥満の予防

 筋肉量が多ければ基礎代謝量も多い状態になり、摂取したカロリーを消費できるので肥満を予防できます。肥満は関節炎、心臓疾患、呼吸器疾患、糖尿病などさまざまな病気の原因になるため、犬の適正体重を維持することが健康につながります。

犬との散歩におすすめの工夫 

 平地の散歩コースが多い場合は、身体に少し負荷をかけるために坂道を歩くことを取り入れましょう。老犬や関節炎の犬は、ジグザグよりまっすぐ歩かせたほうが負担が少なくなります。広い公園や緑地があれば、周囲に危険のないことを確認してから、犬にロングリードをつけて走らせるのも良い方法です。

歩く場所を変えてみよう
歩く場所を変えてみよう

 歩く場所を変えてみるのも一案。砂浜や砂利道なら、歩くだけでアスファルトや土より適度に負荷をかけられます。芝生やウッドチップなど、犬にいろいろな場所を歩かせてみましょう。

老犬になっても運動の習慣を続けよう

 老犬は寝ている時間が増え、足腰がこわばりやすくなります。散歩の前に室内で遊んだりストレッチをしたりして、ウォーミングアップをしましょう。

 散歩の時間と長さにも配慮して、たとえば1日1回1時間ではなく、1日2回30分ずつ、3回20分ずつに変えてみては? その日の愛犬の体調に応じて調節することが大切です。

 老化のスピードや適切な運動量は犬によって変わります。動物病院で定期的に健康診断を受けて、愛犬に無理のない散歩や運動について相談することが大切です。しかし「老犬だから無理をさせるのはかわいそう」と飼い主が過保護になると、筋肉の衰えを早めてしまうことに。散歩と運動の習慣を絶やさないように心がけましょう。

室内でもできる遊びと運動

 歩いたり走ったりする動作で鍛えられる筋肉は限られています。全身の筋肉を鍛えるコツは、“普段しない動作”を意識することです。

 たとえば、おやつを食べさせながら誘導して回転させたり、後ろ歩きさせたりするのも運動になります。これらの動作は速く動く必要はありません。むしろゆっくり動くほうが、身体の使い方や足運びなどを意識するので運動として有効です。

 家にあるものを運動に使うアイデアもあります。たとえばタオルの下におもちゃを隠して“宝探しゲーム”をさせるのも運動の一つ。また、犬をバランスディスクに乗せれば、体幹を鍛えることも可能です。

 飼い主の工夫次第でさまざまな犬の遊びや運動を編み出せます。愛犬との散歩に加えて運動も積極的に取り入れ、健康寿命をのばしましょう。

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監修:小林豊和
獣医師、グラース動物病院(東京都杉並区)総括院長。最良のホスピタリティと獣医療を提供するため「チーム医療」に取り組む。帝京科学大学准教授として犬猫の健康寿命やアンチエイジングの研究も行なっている。

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この連載について
犬の健康寿命をのばす習慣
人間より早く老化が進む犬。健康で長生き、健康寿命をのばすための方法を小林豊和獣医師に紹介してもらいます。
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