ほえ癖なおすため、犬に「通電首輪」 しつけといえるのか

 我が子に電気ショックを与えて虐待した疑いで今年5月、福岡県警が父親を逮捕した。使われたのは犬のしつけ用に通電できる首輪。市販されていて誰でも入手できるが、犬だって、電流でしつけたら虐待になるのでは?

通販サイトには何種類もの「通電首輪」

 「無駄吠(ぼ)え防止首輪 電気ショック」「プロのトレーナーも愛用」

 そんな宣伝文句で、通販サイトには電流で犬をしつける首輪が何種類も紹介されている。商品説明によると、犬がほえると自動的に電気が流れたり、音や振動が発生したりする。飼い主がリモコンで操作して通電させるものもある。

 多くが数千円だが、中には数万円の商品も。利用者からは「すさまじい効果」「電気ぶろのよう」「多用しないで」などの感想が書き込まれている。

 関東地方の業者がネットで販売するのは、中国製の約4万円の首輪。ドッグトレーナーに相談しても飼い犬のほえ癖が直らなかった人から注文があったという。電流は低刺激から、人間でも強い痛みを感じるレベルまで調節できる。「効果がまったくない場合や、逆に効き過ぎて、犬が常にびくびくするようになったケースもある」と業者は話す。

 ペットショップでも販売されている。東京都内のある店では、2階の目立たない場所に海外製の商品が置かれていた。店員の女性は「犬の体に大きな影響はないと思うけど、積極的には薦めていない」と明かす。

「犬がギャンと大声を…見ていられなかった」

 「通電首輪」は虐待なのか。

 環境省によると、首輪で犬がけがした場合、程度によっては動物愛護法で禁止される虐待にあたる可能性もあるが、使うだけなら同法上の虐待ではないという。

 一方、埼玉県川口市の「どうぶつの総合病院」の獣医師、入交(いりまじり)眞巳(まみ)さんは「ほえ癖を直すために電流を使うこと自体が体罰、虐待と言っていい」と指摘。米国の獣医行動学専門医の資格を持ち、米国留学していた十数年前には現地のトレーナーが使う場面を見た。「犬がギャンと大声をあげて跳び上がって……。見ていられなかった」と振り返る。米国では猟犬訓練に通電首輪が使われてきたという。入交さんも日本で通電首輪でやけどした犬を診察した経験があるが、広く普及はしていないとみる。

信頼関係を築くことが重要
信頼関係を築くことが重要

 通電首輪を使わずとも、暴力的なしつけが絶えない背景について、入交さんは「犬が飼い主との『主従関係』を好むという誤った認識がある」と話す。だが実際は、人間の親子のように信頼関係を築くことが重要だ。犬が飼い主と目を合わせると、愛情や信頼感に影響するホルモン「オキシトシン」の濃度が体内で上がるという研究結果もあるという。

 学識者や獣医師らで作る「日本獣医動物行動研究会」も昨年3月、体罰を用いたしつけに反対する声明を出している。だが、入交さんによると、今もしつけに暴力的手段を使うドッグトレーナーがいる。トレーナーには公的資格がなく、しつけに対する考え方にばらつきがあるという。

ほえる理由を知り「一歩一歩導いて」

 暴力を用いず、ほえ癖を直すにはどうすればいいのか。

 家庭犬のしつけインストラクター長谷川あや甫さんは「ほえる理由を知ることがまず大事」と言う。世話が不十分なことへの欲求不満が原因なら、散歩に連れて行ったり遊んであげたりして絆を深める。散歩中、見知らぬ人にほえるのは、不安や恐怖が理由の場合が多い。人が少ない時間や場所を選び、おいしいものを食べさせながら歩かせれば、不安が薄れる。他人とすれ違うときに、食べ物をあげるのもいいという。長谷川さんは「飼い主がボスのように振る舞うのではなく、幼い我が子に接するように、ほめることもしながら、一歩一歩導いてあげてほしい」と話す。

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