個室で保護猫とふれあえる店、横浜に 意中の猫とじっくり
保護団体から預かった保護猫と個室でふれあえるスペース「VELCAT馬車道店」が2月、横浜市にオープンした。新しい形の出会いの場だ。店の担当者は「譲渡を希望する人が、自宅にいるかのように猫と過ごし、グッと距離を縮めてほしい」と話す。
(末尾に写真特集があります)
横浜の中心地・関内の大通りからすぐ、外壁に猫のシルエットが描かれたビルの2階に店はある。
オープンスペースのほかに個室(レンタルスペース)が4室。猫カフェのように入場料にドリンク代が含まれていたり別に注文が必要だったりはしない。その分、オープンスペースは30分500円と値段を抑えた。ワンコインの気安さから、昼休みに30分だけ訪れる会社員もいるという。
猫は保護団体「たんぽぽの里」から預かっている。いま店にいるのは7カ月から1歳の15匹。人懐こい猫が多く、ひざに乗ってきたり顔をなめてきたり。遊び盛りで元気いっぱいだ。
他人の視線を気にせずに
店舗は運営会社の元事務所を改装した。会計コンサルタントや不動産管理などを手がける「横浜弁天コンサルティングスクエア」。スタッフが増えて手狭になり、移転を機にVELCATを始めることにした。社長の西坂理恵さん(47)は猫カフェへリサーチに行ったとき、アウェー感があったという。「部屋に入ったとき、猫たちはほかのお客さんと遊んでいて、手持ちぶさたでした。身の置きどころがない感じがしました」
そこで思いついたのが個室。「事務所にあった個室を活かして、ほかの人の視線を気にせず、自分と猫だけの空間を作れたら面白いのではないかと」
個室は定員2~3人から4~6人の4室で、個室料金(60分1000円から)が別途かかる。部屋ごとに2匹ずつ当番の猫がいる。部屋での過ごし方は自由だ。猫と遊ぶだけでなく、一人で勉強したり仕事をしたり、猫をひざにソファで仮眠しても。ただ、持ち込みのエサはあげない、無理やり抱っこしない、フラッシュ撮影をしない、などの決まりがある。猫の安全などのため、監視カメラが付いている。
譲渡を希望する人は、まずオープンスペースで猫とふれあい、家族に迎えたい子が見つかれば、後日、個室で気兼ねなく意中の猫と過ごしてほしいという。
瀕死の子猫を保護
西坂さんは、自身が子猫を保護したことをきっかけに、保護猫や保護犬の役に立つ事業はできないかと考えていた。
2011年のある日の夕方、東京都文京区の大通りを仕事帰りに歩いていると、「ギャー」という大きな声が聞こえた。車道を見ると、右脚を引きずりよたよた歩く子猫がいた。ひかれてしまう、と慌てて走っていき、ひろいあげた。ほこりまみれで灰色の白猫。動物病院に連れて行くと肋骨が折れていて瀕死の状態だった。
獣医師は「車から投げられたのかもしれない」と言った。生後2カ月のオス。奇跡的に助かり、西坂さんが引き取って「ベル」と名付けた。後日分かったのだが、ベルは耳が聞こえなかった。その大きな声が命をつないだ。
西坂さんはもう1匹、8カ月のメス「ベリー」を飼っている。たんぽぽの里から預かってきたが、難病の「骨髄異形成症候群」を患っているとわかり、西坂さんが引き取った。2匹は平日、西坂さんに連れられて「出勤」し、会社の事務所で過ごす。8人のスタッフみんなで世話をする。笑いが増えて社内の雰囲気が良くなったという。
馬車道に動物病院を開業へ
7月には、店から徒歩5分ほどの場所に動物病院を開業する予定だ。馬車道は繁華街で飲食店や事務所が多いが、近年マンションも増えてきた。ペットを飼っている家族や、ペット好きだけれども事情があって飼えない家族がいることが、不動産管理の事業から分かってきたという。
VELCATの猫たちもその病院で定期健診をする。譲り受けた飼い主も普段から診ている獣医師に病気の相談をすることができ、安心につながるのでは、と話す。西坂さんは今後、動物関連の事業を収益の柱にしたいと意気込む。「さびしいけれど、うちの子たちの譲渡がどんどん決まってほしい」と期待している。
(高橋秀喜)
- VELCAT馬車道店
- 住所:横浜市中区弁天通3-48弁三ビル2階
TEL:045-264-8350
営業時間:11~20時(4月27日~5月6日は10~18時) - 定休日:月曜日(4月29日、5月6日は営業)
ホームページ:https://www.velcat-bashamichi.site/
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。