夜中、戸の前でじっと出待ちのグーグー いとおしすぎて

曇った扉の向こうで出待ち中のグーグー
曇った扉の向こうで出待ち中のグーグー

 何年か前に、寝室のドアに猫扉をつけた。

 うちの猫たちは年をとって、2匹とも随分と愛想がよくなり、寂しがり屋になった。だからなのか、季節と関係なく夜は部屋に入ってくることが多くなった。もともとは冬は寒いから、妻の布団に潜り込みたくやって来ていたのだが、今は季節は関係ない。寂しかったり、つまんなかったり、でやってくる。

 ここはやっぱり猫扉の出番かなとなった。それまでは、いつでも入って来られるようにと戸を薄く開けていた。だが、2匹が出入りすると開けっぱなしになり、冬は温度が下がり、夏は湿気を含んだ高温の空気が部屋へと攻め込む。

 猫扉は、もともとあった戸をくりぬいて、そこに扉をつける。つけてみると、何かその存在がとても可愛く、戸の全体にも妙に親しみを感じるようになった。

 扉をくぐるとそのあと勢いよく戻ってくるので、猫たちは最初、それを怖がった。三毛のチャッピーはすぐに慣れたが、アメショーのグーグーはひたすら怖がってくぐれるようにならない。夫婦で戸を挟んで、怖くないんだと猫扉を開いて見せたり、グーグーを廊下に置いて中からひたすら名前を呼んだりしたが、ビビって入れない。小さい頃、床に何か落ちていたりすると、驚いて、急に跳ね上がったりしていたが、やはり小心は簡単になおらない。

 だからグーグーは、夜、寝室に入りたくなるといつまでも戸の前で出待ちだ。夫婦のどちらかがトイレに行ったり、早く起きたりで開いたチャンスを待つしかなくなった。おなかがすくと、そのアピールで鳴く。が、意外とただじっと待っていたりもする。夜中に起きて開けた時、じっとたたずむグーグーを見つけ、いとおしさマックスになると同時に心が痛んだ。

 結局、夜寝る時、戸を薄く開くようになった。元の木阿弥(もくあみ)だ。猫扉はその意義を失ってしまった。でも、後悔はない。心を和ませてくれるから。写真は、お風呂の扉前で出待ちするグーグー。開けてあげないよ。

犬童一心
1960年東京生まれ。映画監督。主な監督作品に「金魚の一生」「二人が喋ってる。」「金髪の草原」「ジョゼと虎と魚たち」「メゾン・ド・ヒミコ」「のぼうの城」など

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この連載について
遠い目をした猫
「グーグーだって猫である」などを撮った映画監督で、愛猫家の犬童一心さんがつづる猫にまつわるコラムです。
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