肝機能の数値が高い猫、まずは進行抑える対症療法が大切

好みの餌をあげれば猫のストレス軽減に
好みの餌をあげれば猫のストレス軽減に

:飼い猫が7歳と高齢になったので、健康診断を受けました。すると肝機能にかかわる数値が高いと指摘されました。異常の原因が不明で、3カ月後の検査でも数値が下がらず、不安です。(東京都・女性)

:サプリや食事などの対症療法が大切

 肝臓は体内の毒素を排出するための臓器で、高い再生力と予備能力を備えています。一般的に、組織の20%以上が正常に保たれていれば機能は維持されます。

 肝臓の病気には大まかに急性と慢性があります。急性は、正常な組織が一気に20%以下になった場合で、今回の相談事例には当てはまらなさそうです。一方、肝細胞の障害や肝臓の炎症が慢性的に起こる病気を総称して、慢性肝臓病と言います。肝臓が次第に硬くなる線維化が進み、最終的には肝硬変になります。

 肝臓の病気が難しいのは急性も慢性も、原因がありすぎることです。猫では猫伝染性腹膜炎(FIP)などの感染症がきっかけになることが多いですが、それ以外にも様々な毒物、薬物の摂取が原因になる。犬の場合、皮膚病の治療に使うステロイドが引き起こすことも知られています。

 治療としては、原因を突き止め、取り除くのが一番。しかし、原因がなかなかわからない。ですからまずは、進行を抑える対症療法が大切になります。ビタミンやミネラルをサプリメントで補給したり、良質なたんぱく質が含まれる療法食を与えたりするのが一般的です。

 ストレスが病気を進行させる側面もあります。動物病院が苦手な猫は少なくないので、頻繁な検査がかえって負担になることがあるから要注意。猫は偏食がちでもあり、よく食べる好みの餌をあげることも、ストレス軽減につながります。

山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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この連載について
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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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