捨てられて突然、野良猫に 生き延びるためについた癖

シャム猫に似ているルルちゃん
シャム猫に似ているルルちゃん

 外国人ホステスに捨てられた猫がいた。突然、飼い猫から野良猫に。その時生き延びるために身についた癖は、暖かな家に引き取られた後も変わらなかった。

(末尾に写真特集があります)

 大阪府堺市にある外国人バー。ここに勤めていた外国人のホステスが1匹の猫を飼っていた。ある時、そのホステスは帰国することになったらしく、その猫を捨てて、いなくなったという。突然、野良になった飼い猫。それがルルちゃんだった。しかも、不妊手術を受けていなかったため、妊娠していた。

 保護団体がルルちゃんを発見した時には、すでに子猫がいた。幸い子猫はすぐにもらい手が見かったという。

「何でも食べるわよ」
「何でも食べるわよ」

野良時代についた癖

 大阪府内に住む野尻さんは、3匹目の猫を探してネットを検索していた。ある日、ルルちゃんをみつけたという。

 「息子が、この子がいいと熱望したんです。シャム猫に似ていて可愛いと」

 保護団体が近かったことと、不妊手術も終わっていたことから、野尻さんはルルちゃんを引き取ることにした。

 ただ、元飼い猫だとはいえ、途中から野良猫として街で生きてきたため、ちょっと普通の飼い猫とは違ったそうだ。

 「野良猫暮らしをしていたので、とにかく食べることへの執着が強いんです。他の猫の食べ物を横取りしてしまうので、置き餌はできないですね」

他の猫とも仲良くなれた
他の猫とも仲良くなれた

新しい環境に慣れて

 ルルちゃんは野尻家にやって来た時、すぐに野尻さんのひざの上に乗ってきた。しかし、1日目は何も食べず、何も飲まなかったという。馴れない場所で緊張していたのだろう。

 ほかにも2匹の猫がいたので、最初は別の部屋で飼い、ケージに入れたまま先住猫と対面させるなどして、徐々に新しい環境になじませていったという。

 すでに2匹の元保護猫を飼っていた野尻さんの手によって、ルルちゃんは順調に環境に適応していった。今は5歳。人懐っこく、夜になると、近寄ってくる甘えん坊だ。

 ただ、食べ物を目にすると、すばやく全部たいらげてしまう癖は変わらない。食への強い執着心は、野良猫として生きることに必死だった時代の名残なのだろう。「もうそんな慌てて食べなくてもいいんだよ」

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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