人懐っこく賢い犬 子どものけんかの仲裁やトイレのお供も

賢くて、凛々しい表情
賢くて、凛々しい表情

 シェルターに保護される犬には、さまざまな事情がある。雑種の「ドンキホーテ」は、徳島県で生まれた野良犬の子だった。それでもおとなしく人懐っこい性格。縁あって、今では大阪で幸せに暮らしている。

(末尾に写真特集があります)

 ドンキホーテ(ドンちゃん)は、徳島県の山間部にある工場の敷地内で生まれた。母犬と弟の3匹は保護され、徳島県内の「ハート」というシェルターに収容された。だが、もらい手がなかなか見つかりそうになかったため、大阪府の保護団体「ARK」に引き取られた。

中型の雑種犬ドンキホーテ
中型の雑種犬ドンキホーテ

一度会った家族を覚えていた

 大阪府内に住む竹原さんは、実家でミニチュアダックスフントやシーズー犬を飼っていたことがあり、子どもの頃から犬が大好きだったという。いつか保護犬をもらって飼いたいと思いつつ、就職、結婚、出産と、時は目まぐるしく過ぎていった。

「長女が中学に入った時、子どもの成長にも良いだろうと、犬を飼うことにしました。迷うことなくARKから保護犬を譲渡してもらうと決めていました。室内犬で、抜け毛の少ない小型犬のトイプードルを希望していたのですが、ARKに行ってみると、スタッフの方から『今まで小型犬しか飼ったことがないのなら、大人しい犬がいい』と、ドンちゃんを勧められました」

 竹原さん一家はARKで勧められたドンちゃんと散歩をしてみた。子どもたちは気に入ったようだったが、もともとトイプードルを希望していたので、その場で決断することはなく、後日、もう一度ARKを訪問することにしたという。
そして、2度目に訪問した時のこと。

「ARKに着くと、ちょうどドンちゃんが散歩をしていたのですが、こちらを見て、笑顔で尻尾を振ってくれたのです。『覚えていてくれた』ことが嬉しくて。子どもたちも気に入っていたので、ドンちゃんを迎えることにしました」

おやつに目を輝かせる
おやつに目を輝かせる

子どものけんかの仲裁も

 ドンちゃんを見た親戚から「なんで野良犬みたいな犬をもらったの?」と言われたこともあるという。確かに純血種でも小型犬でもない、雑種の中型犬だ。だが、子どもたちがケンカをしていると寄ってきて“やめろ”というように吠えるし、散歩の時も横について上手に歩くこともできる。夜中にトイレに行くのを怖がっていた下の子も、「ドンちゃんがいれば怖くない」と、トイレに行けるようになったという。

「ドンちゃんならではの良いところがたくさんあるんです。保護犬をかわいがってくれる獣医さんにも出会えたし、保護犬つながりの友達も増えました。子どもも『将来、ドンちゃんみたいな保護犬を飼う』と言っています」

 家に迎えて1年半、すっかり一家の一員になっている。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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