猫の「ゴロゴロ」いつ鳴らすの うれしいときだけじゃない?
猫が「ゴロゴロ」と喉を鳴らして甘えてくるというのは、飼い主にとって、とても幸福なひと時でしょう。このように「幸せなときに出る音」というイメージがあるゴロゴロですが、出産など、「つらいとき」にも鳴らすことがわかっています。ではいったい、猫はどのようなときにゴロゴロと音を出すのでしょうか。また、どのようなメカニズムで音が出ているのでしょうか。猫のゴロゴロの秘密に迫ります。
猫が初めて喉を鳴らすのはいつ?
イギリスの動物学者デズモンド・モリスは、「猫が初めて喉を鳴らすのは生後1週間目」としています。つまり、まだ母猫のお乳を飲んでいるころから、猫はゴロゴロ音を出しているのです。
母猫は、母乳をあげるときに横たわった姿勢をとります。この状態では、母猫が子猫の様子をじっくり観察するのは困難です。
一説によると、子猫はミルクを飲みながら喉を鳴らすことで、「十分満足しているよ」「ミルクを飲めているよ」ということを母猫に伝えているのだそうです。
子猫のゴロゴロは、単に甘えているのではなく、生きるために大切なものでもあるのです。
ゴロゴロはどんなときに鳴らすのか
猫がゴロゴロと喉を鳴らしているときの様子を思い浮かべてみてください。多くの方が想像するのは、飼い主に顎の下などをなでられたり、母猫に甘えたりしている様子ではないでしょうか。
もちろん、猫はこのようなときもゴロゴロという音を出します。ゴロゴロと喉を鳴らしながらうっとり目を細める猫の姿は、いかにも幸せそうです。
■うれしいときだけじゃない
猫はうれしいときだけではなく、出産のときや爪を切られるときにもゴロゴロという音を出すことがあります。こういうときの猫は、快感や安心とは正反対の、非常につらい状況にいるはずです。
このときに鳴らすゴロゴロがどういう理由によるのものなのか、はっきりとした答えは出ていません。デズモンド・モリスは「獣医や飼い主に助けを求めているのだ」としていますが、もしかしたら、自分自身を落ち着かせるために、「大丈夫、落ち着いて」という気持ちで喉を鳴らしている可能性も考えられます。
ゴロゴロはどこから出ている音?
「ゴロゴロと喉を鳴らす」「ゴロゴロと鳴く」などといいますが、実際のところ、あの独特の音はどのように出しているのでしょうか。
■長く議論されてきた2つの説
ゴロゴロの音はどうやって鳴っているか。これは、多くの学者のあいだでも、長く結論の出ない問題でした。喉ではなく、血液が流れる音が聞こえているという「血液乱流説」と、喉の筋肉を収縮させることで仮声帯(※)から音が出ているとする「仮声帯説」のどちらかといわれ、その決着はつかずに、長年議論が交わされてきたのです。(※猫には、通常の声帯以外にもうひとつ仮声帯があります)
■ゴロゴロの正体
議論に決着がついたのは、20世紀も終わりに近づいたころでした。10匹の猫に高感度マイクをつけて、ゴロゴロ音について分析調査を行ったのです。
その結果、「猫のゴロゴロは、環境や気分によって脳内の神経中枢が刺激され、喉の筋肉が『声門』(2つの声帯のあいだにある隙間)をリズミカルに開閉させ、そこを通る空気を震わせることによって発せられている」ということがわかりました。
人間向きに改良されたゴロゴロ!?
子猫が母猫のお乳を飲むときは、ゴロゴロという音を出します。ところが、飼い猫の中には、飼い主にエサをねだるとき、ゴロゴロだけでなく、「ニャーニャー」という鳴き声を混ぜて発する猫がいます。実は、このニャーニャーという鳴き声は、人間の赤ん坊がつらいときに出す声と同じ周波数です。
ニャーニャーをゴロゴロ音に混ぜると、人間には、より切羽詰まった鳴き声に聞こえます。実際に、ゴロゴロ単独の音と、ニャーニャーを組み合わせた音を50人の被験者に聞かせた実験では、被験者は組み合わせた音を「より緊急性が高い音だ」と感じたそうです。
ゴロゴロを鳴き声と組み合わせることで、猫は効率良く飼い主にエサをねだっているのかもしれません。
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