山中で保護された野犬 お座りも覚え、一家のアイドルに
モフモフの頭や小さい耳がかわいらしい雑種犬「アンクス・マルキウス」くん(以下、アンクスくん)は、推定6歳のオス。山の中で群れをなしていた野犬の中の1匹だった。今では引き取られ、一家のアイドルになっている。
アンクスくんは、神戸市の北部にある山中で生まれ育った。約40匹で群れをなしていたという。ハイキングコースにも出没するようになったため、保健所に通報が入り、捕獲に乗り出す直前、動物保護団体「ARK」によって保護された。当時推定1~2歳だった。
保護施設での出会い
現在の飼い主、藤本さんはARKでアンクスくんに出会った。ARKでは7歳ぐらいの老犬を勧められたが、先代の犬を亡くしたばかりで、若い犬が希望だった。
ARKではアンクスくんは、3匹で一つの犬舎に入っていた。みんな神戸の山中で保護された仲間の犬だった。ARKの職員は、元野犬だから飼いにくいと勧めなかったが、藤本さんは幼い頃から野良犬を何匹か飼った経験があったため、育てる自信があったという。散歩をしてみると、引っ張ることもなく飼いやすそうだった。性格についても職員から説明を受けた。
「早く連れて帰りたくて、その日、その場でアンクスを譲渡してもらうことにしたんです。でも、職員さんはずいぶん心配されたそうです」
ずっと空を見上げて
アンクスくんは保護されてから4ヶ月で譲渡されることが決まった。一緒に保護された仲間の中では、一番早かったという。
ARKから藤本さん宅に向かう車の中で、アンクスくんは、ずっと後ろを向いていた。家に来てからも、庭で草むらの陰に隠れるようにポツンとたたずんで、ずっと空を見上げていたという。「ARKに帰りたいと思っているようでした」と、藤本さんは振り返る。
同じ群れの中で育ったとしても、それぞれ性格が違い、なかには非常に臆病で攻撃的な犬もいる。アンクスくんは穏やかな性格で、お手やお座りもすぐにできるようになり、「アンクス」と、名前を呼ぶと、すぐに寄ってくるようになった。
藤本さんはいう。
「うちは大人ばかりの家庭なので、それがアンクスに合っていたのかもしれません。犬との相性や、出会いのタイミングもあるので、一概にどんな子がいいとは言えませんが、ARKでボランティアをしてきた経験上、老犬は穏やかな子が多く、子犬は可愛いけれど、その後どう育つのか分からない面もあると感じています。また、アンクスのように、山中で育った野良犬の場合、言うことを聞かない子やなかなか懐かない子もいるので、気長にどう向き合っていくか考える必要があります。この記事をご覧になった方には、ペットショップで“犬を買う”のではなく、ARKのような保護施設や譲渡会に行って、犬を家族として迎えることも選択肢のひとつにしていただけると嬉しいですね」
- <アンクスの出身団体>
- アニマル・レフュージ関西(ARK)
さまざまな理由で保護した犬や猫の心身のケア、社会化トレーニング、里親探しなどを行っています。
住所:〒563-0131 大阪府豊能郡能勢町野間大原595 アニマルレフュージ関西
HP:http://www.arkbark.net/
営業時間:10:00~16:00
Tel:072-737-0712/Fax:072-737-1886
E-mail: ark@arkbark.net
sippoのおすすめ企画
「sippoストーリー」は、みなさまの投稿でつくるコーナーです。飼い主さんだけが知っている、ペットとのとっておきのストーリーを、かわいい写真とともにご紹介します!
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。