公募でやって来た演芸ホールの看板猫 仕事は客引きとネズミ捕り

昭和にタイムスリップしたようなレトロな雰囲気の浅草演芸ホール館内。閉館後の夜はジロリが支配人のごとく館内をパトロールする
昭和にタイムスリップしたようなレトロな雰囲気の浅草演芸ホール館内。閉館後の夜はジロリが支配人のごとく館内をパトロールする

 明治時代から続く伝統を持つ浅草演芸ホール(東京都台東区)は、落語を中心に漫才やマジック、講談などさまざまな演芸を楽しめる笑いの殿堂。この浅草の人気スポットを訪れる落語ファンが、ひそかにお目当てにしている人気者が、ジロリだ。

 普段は切符売り場、通称「テケツ」の丸い小窓から通りをのぞき、道ゆく人やお客さんに愛想をふりまく。寄席に出演する噺家にもジロリファンが多数。出番のあとに、必ずジロリに会いに寄ってくれる人もいる。

「ツンデレで、女好き」と世話役のまさえさんが言えば、別のスタッフは、 「毛並みがいいでしょ。アメショーですか?って聞かれるから、いいえ、アサクサン・ショートヘアですよ、ってね(笑)」

 同ホールには、10年ほど前まで、クロという先代がいた。クロの引退と、周辺に飲食店が増えた時期が重なり、ネズミ被害に悩まされるようになった。客席を無尽に走り回ったり、高座を横切ったり。困り果てた同ホールの松倉由幸社長が「もう一度ネコを飼おう」と発案し、FBで「ネコさん募集」の求人広告ならぬ、求ネコ広告を掲載。やってきたのが保護ネコとして飼われていたジロリだった。

ジロリは雑種のオス、推定3歳。浅草演芸ホールは1年365日無休で公演を行っている
ジロリは雑種のオス、推定3歳。浅草演芸ホールは1年365日無休で公演を行っている

 興行中の昼間は、切符売り場で昼寝をしながら過ごしているが、夜の間、広いホールは、ジロリだけのものになる。1年半で通算5匹の獲物を仕留めたという。「目にするネズミが減った実感があります」とまさえさんもその仕事ぶりをたたえる。

 本業の仕事はもちろん、落語ブームを支える立役者としての功績も忘れてはいけない。 「ジロリがいるから、とネコの噺を演目に選んでくださる師匠もいます」

 もともと落語とネコは関係が深い。大衆芸能だから、身近な存在であるネコが登場するのは考えてみれば不思議なことではない。代表的な演目は「猫の皿」「猫と金魚」など。悪者として登場する噺が多いのは、ご愛嬌。

「ジロリをきっかけに、落語を聞きにいってみようかな、という人が増えてくれたらうれしいですね」(松倉社長)

(写真・今村拓馬)

まるごと1冊「猫」を特集したAERA(朝日新聞出版)の増刊「NyAERA(ニャエラ)」から選りすぐった記事です。

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