病気や高齢の猫の介護、5つのポイント 薬の与え方を図解

 猫は、自分では生活環境を整えたり、薬をのんだりすることができません。猫が病気になった場合、快復し、その後の生活を快適に過ごせるようにするためには、飼い主が生活環境を整え、必要なケアをしてあげることが、とても大切です。ここでは、病気になった高齢猫(老猫)を介護する際に、介護する飼い主が知っておいたほうが良い5つのポイントを紹介します。特に難しい薬の与え方は図で解説します。

ポイント1 栄養がしっかりとれる食事を

 人間も、体調が悪いときは食欲が落ちてしまいます。これは猫も同様で、元気がなくなると食事が進まなくなってしまうことがあります。しかし、健康を維持するためには、必要な栄養をしっかりとることが大切です。食事から栄養をとれるよう、猫が食べやすい工夫をしてあげてください。

いつかは愛猫にも衰えがやってくる
いつかは愛猫にも衰えがやってくる

◆食べやすくする工夫

 これまでドライフードを食べていた猫も、年を取ったり体調が悪くなって食が進まなくなってしまったら、人肌に温めたり、やわらかくふやかして与えてみてください。

 また、ドライフードをのみ込みにくそうにしているときは、これまでよりも小粒のフードにしてみたり、食べやすい位置として、少し高い台に食器を置いてみたりするのもおすすめです。「食器からは食べないけれど、手からなら食べる」というときは、手から与えましょう。

 さらに、普通のフードが食べられなくなってしまったときは、流動食という選択肢もあります。その場合は「シリンジ」などに入れて、ゆっくりと食事を流し込みます。

ポイント2 自分でトイレに行く補助をする

 これまでトイレを失敗したことがなかった猫も、年を取ってくると、自分でトイレに行けなくなってしまうことがあります。しかし、猫はできるだけ自分でトイレに行って、排泄しようとする生き物です。失敗が増えたからといって、安易におむつをはかせたりたりするのではなく、まずは猫のトイレを「補助してあげる」ことを考えましょう。

◆トイレの補助の方法

 まずは、トイレの環境を変えてみます。ベッドの近くにトイレを置いたり、トイレの数を増やしたりしてみてください。そのときに、出入りがしやすいように入り口が低いトイレがおすすめです。

 自力でトイレまで行くことが難しそうなら、タイミングを見計らって、トイレまで連れていってあげましょう。排泄時にうまく体が支えられないようであれば、そっと腰を支えてあげるだけでも排泄しやすくなるはずです。

 そして、トイレのあとは、お尻をきれいに拭いてあげてください。ただし、尻尾を無理に持ち上げると体に負担がかかります。90°以上反らさないようにしましょう。

トイレの後は拭いてあげて
トイレの後は拭いてあげて

◆自力での排泄が難しくなったら

 いよいよ自力での排泄が難しくなり、粗相が増えるようになったら、ベッドにペットシーツを敷いておくとケアするのが楽になります。また、猫用おむつを検討する時期かもしれません。

 ただし、おむつは嫌がる猫も多いので、最後の手段だと考えておくべきです。

ポイント3 安心して眠れる場所にベッドを

「どこが一番安心できる心地良い場所か」というのは、猫によって違います。飼い主がいつもいる場所の近くや外が見える所、日差しが差し込む暖かい場所など、「その猫が好きな場所」を日頃からチェックしておきましょう。そして、年老いた猫が安心して好きな場所で眠れるよう、好みの場所にベッドを置いてあげてください。

 ただし、朝と夜に急激に冷え込むなど、環境変化が激しい場所は、老猫の体に負担をかけてしまいます。いくら「好きな場所」でも、このような場所は避けるべきです。

◆お気に入りの毛布

 老猫や、体調を崩した猫は、ゆっくりベッドで眠っている時間が増えます。安心して居心地良く過ごせるように、ベッドの状態やくつろいでいる猫の様子を気にかけてあげてください。お気に入りの毛布やベッドを置くとともに、飼い主のにおいがする物をいっしょに置いてあげるのもおすすめです。

 一方、枕はあまりおすすめできません。もしも吐いてしまったときに、吐しゃ物が喉に詰まってしまうおそれがあるからです。

ポイント4 猫に薬を与える方法

 病気になった猫への投薬は、飼い主が責任を持って行う必要があります。錠剤、液体、目薬のそれぞれの与え方、投薬方法をご紹介します。慌てず、落ち着いて練習してください。

◆錠剤ののませ方

まず口を開けさせる
まず口を開けさせる

1. 片方の手で猫の頭を覆うように持ち、もう一方で口を開きます。暴れることもあるので、一人が身体を抑えて、もう一人が口を開けるといいでしょう。

舌の奥に錠剤を置くイメージで
舌の奥に錠剤を置くイメージで

2. 口が開いたら、すぐ舌の奥のほうに錠剤を落とし込みます。嚙まれるようなら、専用の投薬器を使うのも良いでしょう。
喉をなでて飲み込むのを助ける
喉をなでて飲み込むのを助ける

3. 口を閉じさせて喉をなで、薬をのみこませます。薬をのんだあとは、少量の水やフードなどを与えると、吐き出さずにしっかりのみ込ませられます。

◆液体の薬ののませ方

液体飲み薬を入れて用意
液体飲み薬を入れて用意

1. シリンジやスポイトを使って与えます。シリンジを逆手に持つのが与えやすく、おすすめです。
猫の口を開けさせて
猫の口を開けさせて

2. 頬の皮を引き上げて猫の口を半開きにさせます。
横から口の中にいれます
横から口の中にいれます

3. 犬歯の横から流し込むようにして投薬します。少し口を上向きにしておくとこぼれません。

◆目薬のさし方

まぶたを引き上げて、開かせます
まぶたを引き上げて、開かせます

1. 少し上を向かせて、目薬を持った方の手で、上まぶたを引き上げます。
下まぶたも引っ張って、目薬をさします
下まぶたも引っ張って、目薬をさします

2. 頭を支える手で下まぶたを引っ張って、点眼します。

※どうしても暴れてしまう時は、二人で協力しながら、一人が体を固定して、もう一人が投薬するなど、工夫をしましょう。また、タオルで体全体を包み込むようにすると、落ち着くことがありますので試してみてください。

ポイント5 体調管理のためにもマッサージをする

 マッサージは、猫とのスキンシップになるだけでなく、血行促進や体調のチェックにも効果的です。毎日のケアに取り入れてみましょう。手足の曲げ伸ばしは筋力維持に、おなかの「の」の字マッサージは便秘予防に効果的なおすすめのマッサージです。

 また、老猫は自分自身で毛繕いがしにくくなりますから、ブラッシングやタオルウォッシュ、爪切りなども適宜行ってあげてください。ただし、嫌がるそぶりを見せたら無理にしてはいけません。介護やケアは、あくまで猫に負担をかけない範囲で行うことが大切です。

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監修:服部 幸
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。2005年から猫専門病院長を務める。2012年に東京猫医療センターを開院。2013年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。

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この連載について
高齢猫との暮らし方
室内飼いが増え、猫も長寿に。高齢猫と長く幸せに暮らす方法や、万一の時の対応について、猫専門の服部幸獣医師が解説します。
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