はっぴーの兄弟にも対面 やっぱり指しゃぶりをしていた!?

 愛猫「はっぴー」(愛称=ふまたん)は、もともと4きょうだい(メス2匹、オス2匹)だった。保護された後、3家族に分かれて成長してきた。無事に1歳の誕生日を迎えた記念に、“姉妹”猫に対面したのに続き、翌週には“兄弟猫”にも会ってきた。

 はっぴーはキジ模様。その姉妹は三毛とサビ。そして兄弟は黒白で、みんな模様が違う。同じ親から、まったく違う模様の子猫が生まれることは、遺伝の関係でよくあるそうだ。

 4匹は保護した日本動物愛護協会のスタッフに、幸せになるようにと四葉のクローバー(花言葉)にかけて、仮の名がつけられていた。三毛は「あいちゃん」(愛)、サビは「のぞみん」(希望)、キジは「はっぴー」(幸せ)、そして黒白は「まこちゃん」(誠実)。

昨年6月、譲渡会に参加したはっぴー(左)とまこちゃん(ハヤテ)
昨年6月、譲渡会に参加したはっぴー(左)とまこちゃん(ハヤテ)

 猫友達に4匹で写った写真を見せると「なに、この可愛さ~」と、前列に写っていた三毛やサビの女子を誉めたが、私は後列にいた男子が気になった。キジは17年過ごした愛猫ルナに似ているし、黒白猫は、遠い昔に出会った子猫チリーを思い起こさせた……。

 チリーは小学生の頃、我が家の軒先に置き去りにされていた子猫だった。姉と一緒に見つけて、鈴をチリンとつけたら似会いそうだね、と言って命名したのだ。

 でもチリーと過ごしたのは、ほんの30分。母親に「玄関に猫がいる」「飼いたい」というと、「だめ」と即答された。当時一緒に住んでいたおばあちゃんが、猫が苦手だったのだ。

 幼い自分には抵抗する力も知恵もなく、べそをかきながら、親の言う通りに近くの神社に移動させるのが精いっぱい。「幸せになってね」と願って置いてきた。

譲渡会でまこちゃん(ハヤテ)は目だっていました
譲渡会でまこちゃん(ハヤテ)は目だっていました

 そんな切ない記憶もあり、黒白の子猫まこちゃんが、気にかかった。

 譲渡会で実際に対面した4匹は、保護された時の写真より大きくなっていたが、まだあどけなかった。

 「女子チームは、早々に譲り先が決まりました」

 ケージを見ていると、スタッフが教えてくれた、男子チームはまだのようだ。

「まこちゃんは?」と尋ねると、「申し込みが入った」という。振り返ると、書類を書く人の背中が見えた。かつてのチリーとだぶらせながら、「幸せになってね」と私はつぶやいた。

 その後しばらくして、はっぴーをうちで迎えたわけだが、1歳を迎えた5月、愛護協会の取り計らいで、きょうだいたちに会えることになった。

 まこちゃんに会う日、わくわくして、はっぴーに話しかけた。

「兄弟に会ってくるよ。赤ちゃんの時から一緒だったあの『まこちゃん』だよ! どんなふうになったかな」

でっかく成長したはっぴー
でっかく成長したはっぴー

 まこちゃんが住むのは、都内の一戸建て。譲渡会で最初に申し込みをした家とは違う家だった。トライアルをしたが、先住猫との関係でボランティア宅に戻され、昨年9月 新しいご縁を得ていたのだ。

 居間で対面した時、「黒白王子!」と叫びそうになった。

 譲渡会で見た時の幼さがすっかり消え、立派なイケメン猫になっていた。

 はっぴーより一回り小柄だ。でも目元や手足の長さに共通点があるように思えた。

かっよく成長したハヤテ
かっよく成長したハヤテ

「今の名前は、ハヤテ、といいます」

 飼い主の坂本さんがにこやかに説明してくれた。

 坂本家は4人家族(坂本さん、ご両親、おばあちゃん)で、先住猫のアメショーのヒメ(メス、7歳)がいるという。

 きりりとした表情にハヤテという名がぴったり。居間にいたが、我々の来訪にちょっと警戒して、まさに疾風の如く2階に駆けあがり、「で、だれ?」というように降りてきてくれた。

 先にメスがいて後からオス、というのは、イヌオとはっぴーと同じ間柄だ。

 坂本さんは悩みに悩んで受け入れ、迎えてもハラハラしたそうだ。

「一人娘のヒメを大事にしているので、相性が心配でした。だいたい1カ月くらいで馴染んでくれました、今はほどよい距離感で暮しています」

 坂本さんは、姉妹猫のエレナ、ソフィ(元のぞみん、あいちゃん)の飼い主さんの親戚。今年のお正月に、エレナとソフィが家族と一緒に遊びに来たところ、ハヤテは姉妹猫にいきなり威嚇され、プルプル震えたそう。

「猫の場合、一緒に生まれてしばらく過ごしても、それぞれの家に行って成長すれば、きょうだいと再会してもわからないもの」とボランティアは話していたが、それぞれの家に馴染んでいればいるほど、そうなるのかもしれない。裏返せば、今いる場所が幸せ、ということだ。

「仕草とか表情とか、ハヤテは何とも可愛くて」とお母さんが頬を緩めた。

「そういえば、家に来た頃は“後ろ足”を吸ってましたよ」 

“指吸い”は男子チームだけだったのだ。しかも、ハヤテはすでに卒業……。

スマホに映るハヤテと2ショット「かっよこさが半端ないって~指しゃぶりは辞めたいのかい?」
スマホに映るハヤテと2ショット「かっよこさが半端ないって~指しゃぶりは辞めたいのかい?」

「兄弟はかっこよかったぞ~、負けられないね」

 帰宅し、はっぴーを抱きながら報告をした。

 その間もはっぴーは、めっきり重くなった体で前足をチュウチュウ。君がいちばん、甘えん坊なのかも?

「四葉のクローバー」は、それぞれ個性豊かに成長している。

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ねこ飼い日記
古い魚屋の天井が崩れ、落ちてきた子猫「はっぴー」。その成長と、引き取った筆者との生活ぶりを同時進行でつづっています。
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