お風呂が大好きな保護犬ビーグルズ 「シェリ」と「りん」
ふぅ~といった具合でお風呂に入る2匹のビーグルたち。左がシェリ、右がりん(ともにメス、5歳)。一見すると無表情だけど、こう見えて実はいい感じ。気がすむと自ら湯船から出てくるので、ただただ気持ちがいいのだ。
(末尾に写真特集があります)
「もともとはシャワーで洗うだけだったんですけどね。全く抵抗しないので、徐々にお湯をためていったら『あったかくて気持ちいい』と思ったんでしょうか。長いときで10分くらい、じーっとつかるようになったんです。シェリのほうが長湯なんですよ」と話すのは、飼い主の秀隆さんと由里さん夫婦。2匹の里親になって約5年が経った。
「りんは足の裏がぬれるのはいやなのに、お風呂はOKなんです。雨の日はもちろん、雲行きがあやしいだけでもお散歩へ行きたがらないのに。私たちにも、りんのこだわりはよくわかりません(笑)」
仲良し2匹は人が大好き ドッグランでも人気者
2人が最初に出会ったのはりん。きっかけは、犬猫の里親募集をしていた<アルマ>のウェブサイト。譲渡会へ出向いたところ、夫婦のもとに駆け寄って来たのが、りんだった。
「2012年の10月頃生まれたようで、当時のりんは4、5カ月でした。“多頭飼育崩壊”で保護された子で、ICチップが入っていたので、もしかしたらペットショップで購入されたんじゃないかな。可愛がってはいたんだけれど、飼い主さんが体調を崩されて飼えなくなった、と聞きました」と話す由里さん。
その翌年、動物保護活動を行う団体<ちばわん>からシェリを引き取った。シェリは保健所から引き出されたのち、里親が決まるまでの“一時預かりさん宅”にいた。
2匹のうち、おとなしいのがりんで、とても活発なのがシェリ。けれど二人が出会ったころのシェリはガリガリにやせて、毛並みも悪くバサバサだった。
「シェリは後ろ両足が悪くて筋肉が発達しておらず、走りながらカーブを曲がれなかったんです。だから捨てられたのかな……。そんなシェリの様子をりんはすぐに理解したようで、ドッグランでシェリが他の犬に追いかけられていると、仲裁に入るんです。今は見ての通りシェリは元気で、階段もなんなく登りますけどね」と由里さんが話す。まさにその横で、仲良しビーグルズはじゃれあって走り回り、一緒に水を飲んで大はしゃぎ中。入浴中の様子とは正反対だ。
2匹は人が大好きで、ドッグランではみんながちやほやしてくれるからと、もはや“どこの子”かわからないくらい、まわりにべったり甘える。さらに聞けば、りんの好みが少々個性的で…。“職人好き”なんだとか。
「りんは若いころ、植木職人さんにぞっこんでした。散歩中に見かけると止まって、じっと見つめちゃって(笑)。こちらが恥ずかしくなるくらい。他にも工事現場の人も大好きです。みんながりんをなでてくれるから」
一方のシェリは“女優”だ。「動物病院で先生にちょっと触られただけで『アァァ!(痛い、痛いーー!)』って、すっごく大げさなんです」。臆病なシェリは、物音に敏感で掃除機も苦手。由里さんが掃除機をかけようとすると、りんの後ろにそうっと隠れる。掃除機と戦うのはりんの役目なのだという。
2匹がつなぐ縁 保護犬と暮らして笑顔が増えた
動物を飼うことは生活に大きな変化をもたらすものだが、秀隆さん、由里さん夫婦も例外ではない。規則正しい生活になり、近所付き合いが増えた。ここ数年は、外国人観光客に道をたずねられることも多くなった。旅行客が「うちにもビーグルがいるのよ」と写真を見せてくれて、話がはずむこともあるそうだ。
「2匹を連れていると本当によく話しかけられます。これから犬を飼いたいという方には、保護犬の存在を知ってもらうきっかけになればと、『うちの子たちは元保護犬』と言うようにしているんです。ドッグランやご近所にも元保護犬の子ってたくさんいるんですよ」と由里さん。
現在も、りんの出身団体のフリーマーケットで資金協力をしたり、シェリの“一時預かりさん”とはSNSでつながっているなど、2匹のビーグルズがもたらした輪が広がっている。
「りんとシェリがいる生活は、とにかく楽しいです。犬との暮らしがこんなにいやされて、こんなに笑顔になれるものだとは思わなかった」と話す秀隆さんに、今年第一子を出産された由里さんが「これからは娘とシェリのおもちゃ争奪戦だね」とほほえむ。いっそうにぎやかな生活になりそうだ。
インスタグラム @ lilylynnlynn
取材・文/小見山友子
写真/高木亜麗
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