ハート型の口もと 黒い捨て猫がもたらした家族の幸せ

パパに撫でられてうっとり
パパに撫でられてうっとり

 口もとがハート模様。そのキュートさから「ぬいぐるみみたい」「本物の猫?」とインスタグラムで大注目の「サリー」に会いに行ってみた。1人、2人と家族が増えて、にぎやかになった家で、幸せに暮らしていた。 

(末尾に写真特集があります)

 埼玉県内のマンションを訪ねると、サリー(4歳、メス)が居間のソファに、ぽよーんと横座りしていた。口もとは確かに“逆ハートマーク”になっていた。

「自分で逆さになることがあるので、そうしたら“真のハート”が見られますよ」

 飼い主の金子かなえさんが、にこやかに説明してくれた。ご主人の昌史さんも仕事が休みで、長女・新奈ちゃん(2歳)、長男・稜君(11か月)と家族が勢ぞろい。賑やかさにもサリーは動じず、のんびりとしている。

逆さまになると口元がハートになるサリー
逆さまになると口元がハートになるサリー

「この頃すごく落ち着いて、家族みんなと同じフロアにいる時間が増えてきました。夫婦2人暮らしから子どもが1人、2人と増えたのは、猫にとってはけっこうな変化でしょうけど」

出会ったのは黒い子猫

 かなえさんがサリーと出会ったのは4年前、結婚して2年目のことだ。「結婚したら子どもより、まず猫がほしい」と思いながら、なかなか縁がなかったところ、友人が子猫の情報を知らせてきてくれたのだという。

「サリーは生後1カ月くらいで中目黒の川沿いに捨てられていました。近所のジュエリーショップのスタッフが工房で保護し、SNSで譲渡先を探していたんです。SNSでは『可愛い』と盛り上がるのに、『飼うのはムリ』と誰にも迎えいれられない様子でした」

サリーに興味津々の稜君「もうすぐ一緒に遊べるね」
サリーに興味津々の稜君「もうすぐ一緒に遊べるね」

 そういうかなえさんも、友人と一緒に中目黒まで見にいったが、悩んだのだという。

「その当時はアメショーぽいキジ模様が憧れで。背中がほぼ黒色のサリーは、イメージと違うので正直迷って……。でも行き場がないとどうなるんだろう……。ちょっと“いい人”ぶって、ウチの子にするって言ったんですよ」

 そうしてサリーは夫妻と同居することになった。初めは驚くことも多かったという。

夫にベタベタ、妻には

「とにかくやんちゃで、走り回って、ソファで爪を研いで。私の実家では少しの間だけ猫がいたことがあるんですが、主人の実家は農家で犬を外飼いし“家で猫と暮らす”発想もなかったから衝撃だったみたい。でも意外にも、サリーは夫にメッチャなついたんです」

 その言葉に、昌史さんが静かにうなづく。

「たしかに、どんなに仕事で帰りが遅くても、出迎えをしてくれるよね」

 室内飼いに抵抗のあった昌史さんも、すぐに“サリーにくびったけ”になったようだ。サリーは昌史さんの優しい人柄を見抜いたのだろう。

 この日も、昌史さんは離乳食を慣れた手つきで稜君に食べさせ、新奈ちゃんと遊んでいた。その傍らにサリーがいつしかそっと寄り添う。時々熱い視線をちらっと送り、“時々私も見て”と言っているかのようだ。

「サリーは、パパの前だと普段より1オクターブくらい高い声でニャーって鳴いて、甘える。妬けますよ(笑)。私と娘が外出から帰っても迎えにも来てくれないし、差がありすぎ(笑)」

大好きなチャッコ(サリー)と遊ぶ新奈ちゃん
大好きなチャッコ(サリー)と遊ぶ新奈ちゃん

 かなえさんが説明していると、「チャッコはおなかすいてませんか」と、新奈ちゃんがオシャマに声をかけた。チャッコという言い方は、新奈ちゃんだけの呼び方だという。

「私がサリーをもじってチャ―ちゃんとか呼んでいたら、娘がさらにアレンジしたんです。サリーと娘の関係はいいですよ。無理に仲良くさせようとはしませんでしたが、自然に馴染みましたね。あっ、ほら今、逆さになりましたよ」

 サリーが床で体勢を変え“へそ天”状態になって、顔だけこちらに向けた。その逆さの口もとにハート型がはっきり見える。

 このルックスのためサリーはインスタグラムでも大人気になった。

初めて膝にのってきた日

「インスタを始めたのは、社会とのつながりのため。2人目の子どもが生まれ、あまり外に出られなくなったので、猫好きと交流がしたかったんです。いろいろなシーンを撮っていたんですが、子どもたちが騒がしくすると、サリーは冷蔵庫の上に避難して顔だけひょこっと出す写真ばかりになって。でもそれが新鮮だったみたい……」

 印象的なルックスに、「生きてますか」「フェルトの人形ですか」など、書き込みが殺到したという。パパにはべったりだが、かなえさんには“さらーっ”というキャラも受けたようだ。 

冷蔵庫から「ひょっこり」顔を見せるサリーちゃん
冷蔵庫から「ひょっこり」顔を見せるサリーちゃん

「なぜか私にクールで(笑)。でも2月に夫が海外出張して、ある晩、ひとりでぼーっと椅子に座っていたら、とつぜんサリーが膝にのってきたんです。もう嬉しくて慌てて自撮りして、ブレブレの写真をインスタにあげたら、たくさんのコメントを頂きました」

「おめでとう」「お膝記念日ですね」など、お祝いの声が多かったそうだ。

「サリーを通して世界が広がりました。サリーのおかげで、新奈はお外で動物に会っても特別視しないんですよね。ワーッと走り寄ることもなく、こわがることもなく、そういうのを見てよかったなと思います」

 ところで、今もシマシマ猫が好き?

「今は黒い毛並なしで生活できない(笑)。海外ではシェルターに黒猫が多く残るという話を聞くんですが、なぜ?と思う。シマシマもいいけど、ツヤツヤの黒い猫は最高に綺麗でカワイイと心から思いますよ」

 ハートとハートが巡り合って、とびきりの幸せが生まれていた。

  インスタグラム(おくちがハートのSally)https://www.instagram.com/mk.kk.nk.rk/

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この連載について
ペットと人のものがたり
ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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