新入り猫「きなこ」登場 まるで母親のようにいつくしむ先輩猫

ジャッキーときなこ、仲良く手をつないで
ジャッキーときなこ、仲良く手をつないで

 先住猫ソマをおじいちゃんのように慕っていたジャッキー。2016年夏にソマが旅立つと、日に日に元気がなくなっていった。まるでジャッキーの心に、ポッカリ穴が空いたかのように……。そこに「救世主」のごとく現れたのが、「きなこ」だった。

(末尾に写真特集があります)

 ジャッキーは、ソマが亡くなる前に比べて食事の量も減り、1日をほぼ寝て過ごすようになった。前はあんなに走り回っていたのに……。起きているときも、なんだかボーッとしていて、今までと違う感じだ。

 1年間という短い期間だったが、ジャッキーとソマは濃密な時間を過ごした。僕たちがペットロスになるように、もしかして猫にもペットロスがあるの? ネットで検索すると、やはりペットがペットロスならぬ「仲間ロス」になる、というのがあるらしいと知った。

 どうしたらいいのだろう? ソマの四十九日までは様子を見ようということにした。

 2016年10月、妻が友だちと会ったときに、ジャッキーの話をした。「また新しい子を迎えるのが一番の解決策かな?」。妻のその言葉を、友だちが気に留めてくれていた。

 数週間後、その友だちが妻に「知り合いの家に猫が生まれて、飼い主さんを探しているんだ。2匹いて、ほしいと言っていた茶トラもいるよ」と連絡をくれた。妻も私も「2匹はさすがに無理だなあ」と思った。そのときふと、病気で3歳の猫を亡くした会社の先輩夫婦のことが頭に浮かんだ。でも奥さんは「もう猫を飼う自信がないから、二度と飼わないわ」と断言していた。可能性は極めて低いけど、とりあえず連絡してみよう。

「猫を譲ってもらうことにしたの。2匹いるけどどう?」。妻が、写真を添付して先輩夫婦にメールを送った。予想に反して、「かわいいね。少し考えさせてください」と返事が来た。相性もあるだろうし、猫を見て決めたいだろう。もし先輩夫婦が飼わない、となった場合は「2匹とも、わが家で飼おう」。そう覚悟を決めて、譲り受けることにした。

大切に育てられた茶トラ猫 縁あって譲り受けて

わが家に来たばかりのきなこ。目がぱっちりしていて可愛い
わが家に来たばかりのきなこ。目がぱっちりしていて可愛い

 11月上旬、いよいよ猫2匹が、車に乗ってやって来た。1匹は茶トラ、もう1匹は茶白。ともにオスで、生後3カ月半。わが家は茶トラを譲り受け、先輩夫婦には茶白ちゃんを譲ることになっていた。車から降りてきた茶トラを見た次女は、開口一番「かわいい~」と満面の笑み。

 先輩夫婦も、会いに来た。「かわいい!」。奥さんは少し緊張していたが、だんなさんは「寒いから、かわいそう」と言って、自分の車の中に猫を連れて行ってしまった。

 ん? 飼えるのかな? 

 しばらくすると旦那さんが「失礼します」と言って、茶白を連れて帰ってしまった……。予想していなかった展開に、僕たち夫婦はぼうぜんと立ちつくす。

 あとで聞くと――。猫が大好きなだんなさん曰く、「この機会を逃したら二度と猫は飼えない」と必死だったようだ。その後、茶白ちゃんは「ももたろう」と命名された。だんなさんの溺愛に応えるように、帰宅時には玄関に猛ダッシュ。ひざの上が大好きで、毎晩寝る前には顔をマッサージしてもらう。奥さんも、今は「ももたろうが来て、よかった」と喜んでいる。

 わが家は猫をお譲りいただいた人から、今まで食べていたエサと、排泄したトイレのシートの一部(自分の匂いがついてる)、そしてDVDもいただいた。DVDには、猫の家系図と親、兄弟、親戚の猫の様子、そして2匹が生まれた時から譲り受ける直前までの様子が撮影されていた。とても大切に育てられたようで、「お嫁さん」をもらったような気持ちだった。僕たちも「大切に育てなければ」と肝に銘じた。

先住猫と「新入り」のお見合い、成功!

 わが家に仲間入りした茶トラは、「きな粉」色の毛色から、次女の発案で「きなこ」と命名。ジャッキーとの対面が一番緊張した。相性が合わないと永遠にいがみ合うと聞く。うまくいくだろうか? 初対面のとき、穏やかな性格のジャッキーは「そのチビ、何者?」とにおいを嗅ぎに来た。それに対し、きなこは全身の毛を逆立てて「シャー、シャー」と威嚇する。 

 1週間ぐらいはケージに入れて様子を見ながら、徐々に慣らすとよいと聞いた。きなこをケージに入れた。ジャッキーはケージに近づき興味深々。きなこはシャー。だが2日経ったころからきなこも威嚇をやめ、ジャッキーに近づき、お互いのにおいを嗅ぎ始めた。

 ケージの扉を開けて様子を見ることにした。きなこが恐る恐るゲージから出て来て、部屋中を見て嗅いで回る。その後ろをジャッキーがついて回る。

 少しすると、ジャッキーがきなこの体をなめはじめた。そしてきなこが横になるとジャッキーもそっと寄り添って横になり、それはそれは愛おしそうにきなこの体全体をなめる。きなこも気持ちよさそうな顔で寝始める。お見合い成功! 僕たちも安心して見守った。

 育ち盛りのきなこは食べ盛り。食事の時に、自分の分を食べ終わる前にジャッキーの分を横取りする。おっとりしているジャッキーは食べている最中でも、されるがままにお皿を明け渡す。ちょっとぐらい怒ればいいのに……。見かねてジャッキーを先に食べさせ始めることにしたのだが、ジャッキーは必ず2口分ぐらい残して立ち去るようになった。きなこにあげる分を残しているようだ。おもちゃでも何でも、とにかくきなこを優先。子どもを慈しむ母親のようなジャッキーの姿に胸を打たれた。

ジャッキーの愛情を受け、安心し切ってお腹丸出しのきなこ
ジャッキーの愛情を受け、安心し切ってお腹丸出しのきなこ

「きなこ、ひとり寂しかった僕のところに来てくれてありがとう」。ソマが亡くなり、ジャッキーの心にあいた大きな穴を、きなこが埋めてくれた。ジャッキーの「一歩引いたふるまい」は、そんな感謝の表れなのだと思う。

佐藤陽
1967年生まれ。91年朝日新聞社入社。大分支局、生活部、横浜総局などを経て、文化くらし報道部(be編集部)記者。医療・介護問題に関心があり、超高齢化の現場を歩き続けてまとめた著書『日本で老いて死ぬということ』(朝日新聞出版)がある。妻と娘2人、オス猫2匹と暮らす。妻はK-POPにハマり、大学生と中学生の娘たちも反抗期。慕ってくれるのは猫の「ジャッキー」と「きなこ」だけ。そんな日々を綴ります。

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この特集について
日だまり猫通信
イケメンのオス猫2匹と妻子と暮らす朝日新聞の佐藤陽記者が、猫好き一家の歴史をふりかえりながら、日々のできごとをつづります。
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