“一人っ子”のオス猫の家に、元気な“妹” 家族に変化が起きた

銀兄さん愛用の爪とぎを、小夏もお気に入り
銀兄さん愛用の爪とぎを、小夏もお気に入り

 2歳のオス猫と暮らしていた夫婦が、元気な“妹”を迎え入れた。甘え上手な“妹”は夫にベタベタ。それまで“一人っ子”で、愛情を一身に受けて育っていた“兄”と、家族の関係に変化が起きた。

 

(末尾に写真特集があります)

 

「この子が『小夏』です。昨年12月、よい出会いにめぐまれました」


 都内のマンションに住むライターの絵里子さん(44)の家を訪ねた。玄関を開けると、胸のあたりが雪のように白い“キジ三毛”がぴょーんと勢いよく飛んできた。


「生後4か月のメスですが、かなりおてんばで(笑)、先住猫の『銀』もたじたじ」


 そう話す絵里子さんの表情は充実している。ここ数年、絵里子さんの生活にはいろいろな変化があった。


 2014年7月、一人暮らしの相棒だったメス猫「ドラミ」を連れて、40歳で結婚した。翌年、老衰で倒れた「ドラミ」(享年21歳)を夫婦で看取り、その3か月後に保護猫譲渡会でオス猫の「銀」(当時生後2カ月)と出会った。その「銀」が2歳になり、「そろそろ妹分を」ということになって、メスの子猫「小夏」を迎えたのだ。


『銀』と出会ったのと同じ保護猫譲渡会に夫婦で出かけた。話し合った結果、選んだのはキジ三毛の『小夏』だった。とにかく元気で、30匹くらい参加していた会場で、ケージから前足を出して、猛アピールしていたという。銀と一緒に遊べそうな雰囲気が決め手になった。

 

家に来たばかりの頃 まだあどけない
家に来たばかりの頃 まだあどけない

◆お兄ちゃんになった「銀」に変化

 一方、「銀」の対応はどうだったのか? そういえば、居間にも廊下にも姿が見当たらない。


「たぶんあそこ」。絵里子さんに案内されてウォーキングクロゼットをのぞきに行くと、洋服の陰にキラキラ輝く目が見えた。


「『小夏』が来る前、家に来て1年以上過ぎてから急に思春期の少年みたいにシャイボーイになって。人が来ると隠れるようになったんですよ。小さい時に人懐っこくても、変化することがあるようですね」


 他人に対しては憶病になったが、『小夏』との相性は良いという。


「トライアルで来た初日は“おいおい誰だ?”という風に、遠くから目を三角にしてシャーッ。でもケージ越しに、熱い視線を送る『小夏』に、だんだんと引き寄せられるようでした(笑)」


 絵里子さんは猫飼い歴こそ長いが、“2匹飼い”は初めて。それまで夫婦の愛情を一心に受けて育った「銀」が嫉妬するのではないか不安だったという。だが、ボランティアがアドバイスをくれたという。


「“シャーッと言ってくれたほうがいいのよ”と聞きました。自分のテリトリーに誰か来たことを認識するのが、まず第一歩なので、シャー上等(笑)。何もいわず無視するほうが、あとあとトラブルになりやすいと言われました」


 家に来て1日半後には、「銀」が自らケージに近づいて、興味深く見るようになった。そのタイミングで「小夏」をケージから出してみた。すると、ひょこひょこ部屋を探検する「小夏」の後を、「銀」がストーカーのようについて回った。

 

家にきて5日もすると、銀と一緒に寝るようになった
家にきて5日もすると、銀と一緒に寝るようになった

「『銀』は子猫に対して、どう距離をとっていいかわからない感じで、近づいては離れるを繰り返していたけど、3日目にはゴロンとお腹を見せて、『小夏』を受け入れました。それからじゃれて遊ぶようになって、間もなく一緒に寝るようになりました」

 

 

◆甘え上手な妹「小夏」


 それでも、「銀」が妹分に対して、いろいろ我慢しているのがわかったので、絵里子さんは気をつけて見守ったという。甘やかしがちな夫には、口酸っぱく「銀の気持ちを優先しようね」と言った。


「もともと『銀』は、かまってほしい時だけくっついて、“今なでて”みたいにアピールする複雑男子。でも『小夏』は女子力高く、パパに甘えるのが超うまい。『銀』にパンチとかされると、“きゃー助けて”という風に夫の膝に乗ったり後ろに隠れたり。そうなると夫は『あー本当に小夏はかわいい子だな』となって」


 一方、「銀」は日に日に絵里子さんに対しての接し方が変わった。それまでは気分次第で膝にぽんと飛び乗ってきたのに、『小夏』が来てからはスカートや膝に掛けたブランケットの中にそーっと忍びこみ、喉を鳴らしたり、モミモミしたりするようになってきたのだ。男の子だから“体面”が気になるのだろうか。


「でも、シッポが外にはみ出してるから、バレバレ(笑)。甘えたいけど遠慮したり、かっこつけたり。これ、人間のきょうだいも同じだろうなーって……子育てを経験しているような気分です」

 

仕事から帰り、すぐに「小夏」を撫でるご主人
仕事から帰り、すぐに「小夏」を撫でるご主人

 絵里子さんは40過ぎまで仕事一筋。ライターとして手掛けた書籍は40冊を超える。寄り添った先代のドラミとともに、生み出す本が子どものような存在だったのだ。でも今、独身時代とは違う楽しさを感じているという。


「自由気ままに生きてきたので、結婚するとも思わなかったし、今後子どもを持つか、持てるもわからない。でも1人から2人、2人と1匹から、2人と2匹になって、それぞれの関係性が面白くなってきました」


 夫は再婚で、元妻のもとには高校生と大学生の娘が2人いる。皆で食事をした後に、家に猫を見にくることもあるという。絵里子さんが夫と話す猫の話も2倍になった。


「猫を中心にまとまって、より“家族らしい”感じが出てきました。嬉しいですね」

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この特集について
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ペットはかけがえのない「家族」。飼い主との間には、それぞれにドラマがあります。犬・猫と人の心温まる物語をつづっています。
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