誕生日プレゼントに三毛猫を選んだ 一緒に成長する中学生

三毛猫「さと」は家族の中心的存在。(うさを抱く恵太君と、兄の亮佑君)
三毛猫「さと」は家族の中心的存在。(うさを抱く恵太君と、兄の亮佑君)

 11回目の誕生日、少年はプレゼントに猫を望んだ。保護猫譲渡会に行き、自分で生後3カ月の三毛猫を選んだ。貯めていた小遣いでケージを買い、動物病院で避妊手術にも立ち会った。13歳になった少年が猫に向ける目はやさしい。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 マンションの玄関が開くと、タッタッタッ、トコトコトコ、と2種類の足音が近づいてきた。2歳の三毛猫「さと」(メス)と、10歳のフレンチブルドッグ「うさ」(メス)が迎えてくれたのだ。


 2匹は都内にあるこの家で、中高生の兄弟と、その両親と暮らしている。


 母の晃子さん(47)に案内されて居間にあがると、次男の中学1年生、恵太君(13)がソファでくつろぎ、スマホをいじっていた。

 

大人になるにつれ、三毛の色が濃くなってきた美猫「さと」ちゃん
大人になるにつれ、三毛の色が濃くなってきた美猫「さと」ちゃん

 「こんちはー」と、ちょっとハスキーな声であいさつし、またすぐにスマホに目を落とす。

 

「思春期でそっけなくて(笑)。でも『さと』が来てから、少し大人になったかな。彼が“飼い主”なんですよ」と晃子さんが説明する。

 

 

◆自分で選んだ三毛猫

「さと」が家族に仲間入りしたのは、2年前の9月。恵太君は小学5年生だった。


「マンションの上の階に猫がいたり、ご近所で猫を拾った方がいたりして、“猫いいな”、と恵太が興味を持ったんです。でもその時は、犬の『うさ』のほかに、ハムスターも飼っていて。翌年、ハムスターが亡くなって寂しくなったこともあり、考えてみようか、ということになりました」


 晃子さんは、猫を飼うなら、ペットショップではなく、保護猫を引き取りたいと思っていた。ネットで愛護団体の譲渡会の予定を調べ、いくつかの会場に恵太君を連れて行ったという。

 

フレンチブルの「うさ」と仲良く昼寝中
フレンチブルの「うさ」と仲良く昼寝中

「ちょうど恵太の誕生日が8月末なので、誕生日の贈り物として、彼自身に選んでもらうことにしたんです。二つめの譲渡会場で“この子”と指をさしたのが、生後3カ月の三毛猫『さと』でした。周りにはもっともっと小さな猫がいたので、少し意外でした」


 その日は申し込み用紙に記入するだけだったが、恵太君は帰宅しても、「『さと』以外は欲しくない」と言ったそうだ。


「初めて会って、どんなところが気にいったの? 猫の柄?」


 恵太君に尋ねると、「なんとなく」と、そっけない一言が戻ってきた。


 そんな恵太君だが、「さと」がトライアルで家に来ることになると、自分のお小遣いやお年玉の貯金で、1万円ほどするケージを買ったのだという。


「『うさ』との相性も問題なく、正式に家の猫になることが決まると、初期費用(ワクチン代等)も彼が出してくれました。子猫が見たいと言って、恵太の友達が毎日遊びに来るようになったのですが、男の子たちが『さと~』と“猫なで声”を出すので、びっくりしました(笑)」(晃子さん)

 

 

◆避妊手術にも立ち会い

 ちょうどその当時、恵太君は中学受験を目指していた。夜な夜な勉強をしていた恵太君は、気分転換のように「さと」を抱き上げては「くんくん」と臭いを嗅いでいたという。


 恵太君だけでなく、家族全員が「さと」から癒しをもらったようだ。最初は「え、猫?」と戸惑いを見せていた猫初心者のお父さんも、すぐに「さと」のとりこになり、バスタブのふちにのせて、一緒にお風呂に入る仲になった。


 しかし、「さと」には、ちょっと困る癖があった。異物食いだ。長いもの、紐を好んで食べてしまうのだ。

 

「さと」は病院の待合室でも堂々としていて”犬っぽい”
「さと」は病院の待合室でも堂々としていて”犬っぽい”

「家に来て、すぐに紐を飲んで。動物病院で腸の動きをよくする点滴を打ってお尻からでてきたのよね」と晃子さんが言うと、「もう1回あった」と恵太君が返した。


 恵太君によれば、2度目は猫じゃらしについた長い紐で、動物病院で注射をして、紐をすべて吐かせた。それ以来、「遊び終えたらオモチャはしまう」「ドアを閉める」「猫が夜、寝たら、部屋のドアも閉める」、というルールを家族で作ったという。


 動物はかわいいだけではなく、生きている限りいろいろなことがある。それを恵太君は「さと」を通して学んでいるわけだ。「さと」が避妊手術を受ける時も、動物病院に同行した。


 避妊手術について、晃子さんは当時小学生だった息子にこう説明したという。


「猫はその手術をしないと、赤ちゃんができることがある。もしたくさん生まれたとしても、家では飼えない、とわかりやすく話しました」


 手術の間は待合室で待っているつもりだったが、獣医師が「見ていくか?」と恵太君に言うと、「うん」と答えた。そこで、麻酔がかかったところから、親子で見守ったそうだ。


「傷口も小さく、血もそんなに出ないので、恵太は静かに淡々と見ていました。オペに対する興味が、怖いという気持ちより勝っていたようです」


 手術を見た感想を聞くと、恵太君から返ってきた返事は「特に……」。だが、晃子さんによると、「さと」を見る目が、その後、ますますやさしくなったという。


 そんな話をしている時、「さと」が耳をさっと動かし、「うさ」と一緒に玄関の方へ向かった。長男の亮佑君(17歳)が高校から帰ってきたのだ。

 

 亮佑君も動物好きだ。「うーちゃん、おいで。さと、ただいま」と、笑顔で声をかける。床に寝そべると、2匹が近づいてきた。

 

君に出会えて、よかったー
君に出会えて、よかったー

「家族の順位ってある?」と質問すると、恵太君が教えてくれた。


「ママが一番上、次が『うさ』、お兄ちゃん、ぼく、最後が『さと』。パパは特別枠」


 居間の中心に陣取る『さと』を見て、晃子さんがくすっと笑った。


「今は、恵太と『さと』の順位が変わったかも。怖いものなしの妹だもんね」


 にぎやかな家庭の中、少年たちと『さと』はのびのびと成長している。

藤村かおり
ペットライター。小説等の創作活動を経て90年代後半から、ペットの取材を手掛ける。2011年~2017年週刊朝日記者、2017年からsippoメインライター。丹念な取材と独自の目線から、動物と人の絆、動物と共に生きる人の心をすくい取る記事に定評がある。ペット関連の著書に『長寿猫』『明日にアクセス』など。現在は保護した黒猫、キジ猫と暮らす。

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