老犬の基礎知識  人間と同じ、「老化」のサイン見逃さないで

 わが子同然の愛犬はいつまでもかわいいもの。しかしその成長は早く、いつの間にか「シニア犬」「老犬」と言われる年齢に。人間同様、体や行動に変化が表れ、病気の心配も増します。元気で長生きしてもらうためには、老化のサインを見逃さず、年齢や体調に合ったケアをしてあげることが大切です。知っておきたい「老犬の基礎知識」を、公益財団法人・動物臨床医学研究所理事長で獣医師の山根義久先生に伺いました。2回に分けて紹介します。


 

あなたの愛犬は「老犬」ですか?(画像は本文と関係ありません)
あなたの愛犬は「老犬」ですか?(画像は本文と関係ありません)

◆動物医療の発達で長生き 「老犬」が増えている

 そもそも、いつから「老犬」なの?  山根先生はこう回答する。


「犬種や大きさによって多少の幅はありますが、一般的には7歳以上を老犬期と呼びます」


 一般社団法人ペットフード協会の「平成28年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の平均寿命は、全体で14.36歳。30年前に比べ、なんと倍近くに伸びているとか。さらに、飼育されている犬全体のうち7歳以上は56.8%に。半数以上は老犬、ということになる。


「昔は家の外で飼われている犬が大半でしたが、今はほとんどが室内飼いに。犬の健康に必要な栄養素がバランスよく含まれている『総合栄養食』と表記されるペットフードが普及したことも大きいですね。でも一番は、動物医療の発達。診断技術の向上はもとより、以前なら治らなかった病気が治るケースも増えてきました。結果、長生きする犬が増え、老犬期を過ごす犬も多くなった、ということです」(山根先生)


 ちなみに前述の調査によれば、超小型犬の平均寿命は15.01歳、小型犬が14.09歳に対し、中・大型犬は13.73歳と短い傾向に。グレートデーンやセントバーナードといった超大型犬は10歳に満たないケースも多いとか。


「体格が大きい割に心臓や肺が小さく、そのため低酸素状態にさらされることが多く、体に負担がかかっていることも、小型犬に比べて短命な理由の一つと言われています」と山根先生。その分、老いていくスピードも早いという。


 では、老犬になるとどんな老化現象が現れるのか? 山根先生に「老犬チェックリスト」を監修してもらった。

 

「老化のサインを見逃さないよう、かかりつけ医でチェックを」と話す山根義久先生
「老化のサインを見逃さないよう、かかりつけ医でチェックを」と話す山根義久先生

◆老化が引き金になって起こる病気も

【老犬チェックリスト】

 

(1)白い毛が増えた、毛が退色した。

(2)目が白濁している。

(3)イボなどできものが増えた、できやすくなった。

(4)やせた、太ったなど、体重が変化した。

(5)お尻や脚が細くなった。

(6)口臭がきつくなった。

(7)食欲が落ちたりムラがあったりする。

(8)後脚の歩幅が狭くなり、トボトボと歩くようになった。

(9)呼びかけに反応しなくなった。

(10)遊びたがらなくなった。

(11) 以前より甘えるようになった。あるいは、触られるのを嫌がったり、怒ったりしやすくなった。

(12) おねしょなどトイレを失敗するようになった。

(13)夜になると遠吠えをする。

(14)意味もなくグルグル回る歩き方をする。

 

4つあてはまると軽度、5~9つあてはまると中度、10以上あてはまると重度

特に、2、9、12、13、14は要注意!

 

 老化のサインは、「体」と「行動や運動機能」の変化として現れる。それぞれに解説してもらった。


【体の変化】→チェックリストの(1)~(7)


 白い毛が増える、目が白内障で白くなる、筋肉が落ちて足腰が細くなる、口臭がする……。人間の老化現象と同じように、犬も見た目や体に老化のサインが現れる。


「単なる老化現象だけでなく、老化が引き金になって起こる病気もある。老犬になればなるほど、日々のボディチェック、ボディケアが大切です」と山根先生。


 ブラッシングや歯磨き、爪切り、目ヤニや涙やけをふき取る目周りのケア、肛門腺や陰部など、各部の状態をチェックしながら清潔に保つ。そのときに、しこりなどができていないか、毛や皮膚の状態に異変がないか、触ると痛がったりしないかなども確認する。そのためには若いころからどこを触られても大丈夫なように、慣らしておくことも重要だ。

 

 

◆生活や行動にも変化

【行動・運動機能の変化】→チェックリストの(8)~(14)


 若いころは元気いっぱいで楽しそうに歩いていたお散歩も、加齢とともに少し様子が変わってくる。


「足腰の筋力が弱る、関節の可動域が小さくなるなどで、歩幅が狭くなったり、トボトボした歩き方になったり。これも老化のサインです」と山根先生。


 無理させたくないと思いがちだが、老化で衰えてきたからといって散歩や運動をしないと、筋力が落ちてかえって老化を進めることになる。さらに筋力低下が進むと、立ち上がれなくなり、やがて寝たきりになってしまう恐れも。


「散歩の回数を増やして1回の距離と時間を短くする、コースを工夫するなどで負担を分散しながら、体を動かす習慣を続けることが大切。ストレス解消にもなります」(山根先生)


 寝ている時間が増えるのも老犬の特徴だ。しかし、昼間に寝すぎると夜寝られなくなったり、夜中に頻繁に起きたりしてしまうことも。運動不足や食欲減退の原因にもなる。「人間もそうですが、昼夜逆転の生活は認知障害を引き起こすこともあります。無理をさせない範囲で、体を動かす工夫をしましょう」(山根先生)


 食欲が落ちる、食べムラがあるなど、食の変化も老化現象の一つ。若いころに比べて代謝が落ちるので、太ってしまうケースもある。年齢に合わせたフードや食材を選ぶことも大事だが、もしかしたら歯周炎で歯肉や口腔内の炎症などにより、食べづらくなっている可能性も。


「体の変化も行動の変化も、単なる老化現象なのか、そこに病気が隠れているのかの判断は難しい。かかりつけの病院で定期的に見てもらい、病的な変化は早く見つけて対応することが大切です」と山根先生はアドバイスしている。(つづく)

中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」「ワイン王国」「AERA」「週刊朝日」「朝日新聞デジタル &w」「AERA.dot」「好書好日」などに寄稿。

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