インスタで人気のレイちゃんママと健康を考える
私たち人間と同じく犬や猫も、年齢ととともに体調や生活習慣は変わってきます。1日でも長く健やかな状態で一緒に暮らすには、早いうちからの健康管理が重要になってきます。シニア期に入ったペットの健康を維持するために有効なのが中医学です。現在、9歳の茶白猫“レイちゃん”と暮らす人気インスタラグラマー“レイちゃんママ”さんが、中医学の専門家である楊達先生にお話をお聞きしました。
睡眠時間が増え、運動量が落ちてきたのはなぜ?
楊 インスタグラム、拝見しましたよ。茶白猫のレイちゃん、とても可愛いですね。特に目がいい。目ヂカラがあるのは健康な証拠です。
レイちゃんママ ありがとうございます。レイは来年3月で10歳(推定)になります。4年前に保護猫活動をされている方から譲り受けたのですが、初めて出会った頃は今よりずっとスリムで人見知りな子でした。
楊 現在のふくふくとした姿からは想像もつきませんね。安心して暮らせるようになって変わったのですね。
レイちゃんママ 日々、精一杯愛情をかけて、幸せに長生きして欲しいと思っているのですが、1年ほど前からちょっと様子が変わってきたのが気がかりです。寝る時間がぐっと長くなったし、キャットタワーもあまり使わなくなりました。
楊 猫の8歳〜9歳といえば、人間でいえば40代後半〜50代。シニア期に入って体調に変化が出てくるのは自然な老化だと言えるでしょう。食事はどうですか。
レイちゃんママ 最近、フードを「11歳以上」に変えたこともあって、とてもよく食べています。実は、引き取った時は酷い歯槽膿漏で、病院でしっかり治療をしました。その後もずっとホットタオルで歯みがきをするようにしています。ごはんを食べられなくなったらかわいそうなので。あとは、目やにやくしゃみですね。引き取る際に、猫風邪だと聞きました。だから目やにもよく出るし、時々くしゃみもするけれど、病気ではなく体質だから仕方がないとは思っています。
楊 食欲があるのはとてもいいことですが、風邪を引きやすい、くしゃみしやすい、寝る時間が長くなったことなどから、中医学的にレイちゃんは「気虚」体質の可能性が考えられます。詳しくは中医学を導入している動物病院での診断になりますが、食事や中医学の処方で体質を変えていけば、猫風邪の対策にもなるのではないでしょうか。
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個体ごとの「体質」とその時々の「体調」を重視する中医学
レイちゃんママ 「気虚」とはどういう体質ですか?
楊 エネルギー源である「気」が不足しているため、元気が出ない、免疫が落ちやすい、刺激やストレスに弱いなどの傾向のある子に多い体質です。
レイちゃんママ 中医学というのは、漢方とは違うのですか?
楊 漢方は日本で発展したものですが、その源流は中医学と同じ中国伝統医学です。西洋医学が病名から治療に入る医学だとすれば、中医学は、患者さん一人ひとりの体質や生活環境、その時々の体調の変化に応じた薬を処方したり、治療をしたりする医学です。いわば「オーダーメイド医療」です。この考え方は犬や猫などのペットにも適用できます。
レイちゃんママ 確かに人も猫も、その人、その猫で体質も違えば暮らしている環境も違うのだから、薬や治療が異なるのは当然のような気がします。
楊 そうですね。また、中医学には「治療」と「養生」という二つの概念があり、即効性を出したい場合は短期間で多めの量を処方しますし、体調を整える養生が目的の場合は、食事の工夫や少量の処方などで対応します。レイちゃんの場合、養生を目的にした健康管理が大事なのではないかと考えます。
レイちゃんママ ペットに手作り料理を与える飼い主さんも多いようですが、仕事をしながらすべてを手作り料理にするのはちょっとハードルが高く感じます。
楊 市販のフードは不特定多数の子に向けたものなので、レイちゃんの体質に必要な食材や中医学の処方をトッピングするといいでしょう。「気虚」体質で免疫が落ちている場合には、牛や羊や鹿など体を温めるタンパク質をプラスする場合もありますよ。
レイちゃんママ 漢方薬ってニオイが独特だと思うのですが、猫にはどうでしょうか。
楊 ほとんどのメーカーは嗜好性を考えて出しているので、心配には及びません。人間も動物も病気や不調を抱えている体は、その時の自分に必要なものを自然と欲するようにできています。動物は人間よりもそういう感覚が鋭いはずです。
ペットと飼い主の幸せな関係が1日でも長く続くために
楊 私は、健康の基本的な条件は「きちんと自分で動ける」「おいしく食事が摂れる」「自分の頭で意思決定ができる」の3つだと考えています。これは人間だけでなく犬や猫などのペットも同じではないでしょうか。この3つを維持するのに必要なのが、中医学の「養生」という概念なのです。中医学で最も重視するのは「体の中のバランス」です。食事も薬も全ての目的は、体の中のバランスを整えること。バランスが整っていれば、それぞれの内臓の機能がしっかり働き、老化の進行も緩やかになり、病気にかかりにくい体になると考えられています。
レイちゃんママ 本当にそうですね。レイにも是非その3つの条件を維持させたいと思います。猫の場合は、病気になるとすぐに亡くなってしまうことが多いと聞くので、いかに病気にならないようにするかが肝心だと思います。他に、飼い主である私たちにできることはありますか?
楊 ペットは言葉がしゃべれません。体からのSOSをキャッチできるのは、いつも一緒にいる飼い主さんです。マッサージやブラッシングはコミュニケーションのためにも大切ですが、その際に毛並みや皮膚の状態、体の硬さや骨の異常などにも気をつけるといいでしょう。そして、気になる症状があれば、できるだけ早く動物病院へ相談をすることです。
レイちゃんママ ブラッシングは毎日欠かさずやっているので、これからは体の状態をチェックしながらやってみようと思います。不幸な身の上だったレイには、1日でも長く健やかに幸せに生きてほしい。若い頃と同じ様に走り回れる必要はないけれど、深刻な病気を未然に防げるように健康管理をしてあげたい。早速、近くに中医学を取り入れている動物病院がないか探してみます。
楊 ペットが幸せに暮らせるということは、飼い主さんも幸せだということ。そんな日が1日でも長く続くように頑張ってください。
レイちゃんママ(@rei_nyanz)
2014年3月末日に、保護猫・レイちゃん(推定6歳・女の子)を引き取ったことをきっかけにインスタグラムをスタート。今ではフォロワー数1万7千人を超える人気インスタグラマーとして知られる。「レイと暮らし始めてから、私たち家族の生活が大きく変わりました。レイはまさに我が家に福を呼び込んでくれた“招き猫”です」
楊 達 先生
よう・たつ 中医学講師。医学博士。イスクラ産業株式会社取締役。1982年、中国雲南中医学院医学部卒業。同学院内経教室、大学院、中医外科(皮膚科専門)教室で助手、講師などを経て、93年埼玉医科大学皮膚科教室へ留学。医学博士号を取得する。以来、今日まで中医学の普及活動に従事。現在中華中医薬学会会員、世界中医薬学会連合会常務理事、中国雲南中医学院客員教授、日本ペット中医学研究会講師などを務める。
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