犬猫と一緒に入れる供養塔 都会のお寺が建立、保護猫譲渡も
雨上がりの朝、東京都世田谷区の住宅地にある浄土宗の古いお寺「感応寺」を訪ねた。
「ほら、チュウちゃん、タビちゃん、だーちゃんもおいで」
(末尾に写真特集があります)
18代住職の成田淳教さん(42)が声をかけると、境内にいた猫たちが2匹、3匹と、集まってきた。そして、ごろんと転がって、毛づくろいを始める。皆、朝日を浴びて気持ち良さそうだ。
「お寺で5匹の雄と1匹の雌の地域猫を見ているんです。朝夕に食事をあげていて、境内に寝場所(手作りの小屋)もあります」
猫がじゃれつき衣に爪がかかりそうになる。でも、成田さんは笑顔で続ける。
「毎日、猫たちに癒されています。今、他の場所に保護猫もいますよ」
案内されてお寺の事務所の横へと移動する。事務所にも2匹の雌猫がいるそうだが、境内の壁のあちらこちらに里親募集のチラシが貼ってある。
「普段は待合室として使っている部屋を、保護猫がいる間は“保護猫室”にしています。今いる子猫たちはスタッフが保護しました。母猫が3匹の幼い猫を託すようにお寺の側まで連れてきたのですが、脱水などして弱っていたのでケアして、母猫には避妊手術をしたんですよ」
保護猫室にはケージやトイレ、爪とぎやオモチャも揃い、そこで三毛と黒白の2匹の子猫が飛び跳ねていた。1匹はすでにもらわれたという。
感応寺は、400年の歴史を持つ古刹。関東大震災後に現在の地に移った。成田さんが2001年に住職に就任した後ペットの供養塔 を建て、地域猫や保護猫の譲渡活動を始めた。
「20代前半、副住職の頃、動物の供養をしたいと思うきっかけがございました」
ある朝、成田さんが境内に出ると、シャベルで地面を掘っている人がいた。「何をされているのですか?」と尋ねると、「死んだカメを埋めています」という。一緒に埋めて、お経を唱え、線香をあげたのだという。
「周りはマンションなどが建ち並び、自然も少ない。ペットを埋める場所もないのだと、気付かされました。大事なペットを“葬りたい”という思いを目の当たりにして、お寺としてなんとかできないかと気持ちが動いたのです」
ペットの葬送を始めた頃は境内に移動火葬業車を呼んでいたが、現在はペット火葬業者が境内に火葬炉を3機設置して、ペットのお葬式から、火葬、埋葬納骨まで 対応している。境内の墓にはペットと一緒に入れる。
成田さんは自宅でも、長毛種の猫・バーマン(10歳)と暮らしている。「ビルマの高僧が飼っていたと言われる猫で、名前も僧侶からもらって『メミョウ』といいます。私も妻もメミョウに仕えています(笑)」
メミョウは2年前に腎不全で余命1年と宣告されたが、今も元気で走り回っているという。
感応寺には今春、ペットと人が一緒に入れる永代供養塔「浄会塔」もできた。
感応寺には歴代の住職が入る墓がある。子どもがいない成田さんにとって愛猫は大事な存在だが、住職の墓には猫は入れない。多くの人が同様の思いをしているだろうと考え、人間とペットが一緒に入れる永代供養塔を建立したのだ。自身は住職の墓と永代供養塔に分骨するつもりだ。
永代供養塔は誰でも利用でき、4月の受付以降、2組が入り、2組が生前契約をしたという。
最後に成田さんはこんな話をしてくれた。
「昔から、動物は最期に姿を隠すといわれてきました。亡骸を人にみられたくないからです。そのためご遺骨は埋葬や納骨堂に安置することをおすすめしますが、最近は遺骨を家に置く方も多いですね。“猫飼い”としては、死後も明るいところで日向ぼっこをさせてあげたいということでしょう。でも、猫のためには目立たぬ場に“隠してあげる”ことが安らぎにもなるのです。縁あってともに暮らした親しい命を、どうかお大切に」
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