我が家に子猫がやって来た! トライアルでは飼い主も試される?
魚屋の屋根が壊れ、天井から転がり落ちてきた4匹の子猫。譲渡会で出会い、そのうち1匹「はっぴー」を我が家に迎えたいと、私は日本動物愛護協会に申し出た。審査などを経て、8月、正式譲渡前のトライアルが始まることになった。
◇ ◇
トライアル期間は約2週間。前日はドキドキして眠れなかった。子猫が来る喜びと、先住猫イヌオ(メス、14歳)への思いからだ。生活は間違いなく変わる。
2年前に同居猫ルナが亡くなってから、イヌオはあまり動かず、寝ていることが多くなった。「はっぴー」は譲渡会で見た限り、3匹の兄妹猫より体が小さく、どちらかというとおとなしく、ボーっとしている印象だった。イヌオと相性が合うのではないか、と思っていた。
そして、ついにその時が来た。
愛護協会のスタッフが「はっぴー」を連れてきてくれた。来客が苦手なイヌオは、すぐにベッドの下に逃げ込んだ。
「はっぴー、こんにちは」
ケージから出して、そっと抱くと、「はっぴー」はきょろきょろと部屋を見回した。譲渡会で会った時から1カ月経っていたが、体重はまだ1キロ台。「小さいねぇ」と声をかける私と、子猫を、ベッドの下からイヌオが見ている。
「はっぴーのトイレのしつけはばっちりです。フードは1日3~4回に分けてあげてください。窓の閉め忘れや、ドアからの飛び出しにも気をつけてくださいね」
愛護協会スタッフの説明に、耳を傾ける。私にとって「はっぴー」は4匹目の猫。猫の飼い方はわかっているつもりだが、“オトナ猫”との暮らしが長い分、うっかりすることもある。説明を聞いた後、トライアルの誓約書(同意書)にサインをした。
同意書にはこんな文言があった。(抜粋)
〈(トライアル期間は)譲渡ねこの性格・ 習性を理解するよう努め、飼育方法等に関して貴協会の指示に従うと共に、 その間に両者に異議がなければ期間終了をもって正式譲渡とします。なお、動物について貴協会から現況調査等の依頼がある場合は、調査に協力することを約束します〉
「トライアルは約2週間ですが、何かありましたらすぐ迎えに来ますので連絡をください」
その言葉に、姿勢がピンとなる。トライアルでは猫同士の相性を見ると同時に、飼い主の“覚悟”も試されるのだ。スタッフが帰ると、隠れていた「イヌオ」が出てきた。目がランランとしてる。そして、子猫に向かって「シャーッ!」と声をあげた。
「はっぴー」も負けじと「シャー!」。一人前に、毛を逆立てている。
慌てるな、慌てるな。14年前、イヌオが家に来た時もそうだったじゃないか。ルナ(当時5歳)が1匹でいるところに、生後2か月のイヌオが来て、シャーシャーもっと激しくやりあっていた。それでも、いつしか仲良くなった。違いがあるとすれば、あの時はメス同士。今回はメスとオス。しかも10歳以上の年齢差があること。
イヌオは「シャーシャー」と声をあげながら、居間を出て浴室のほうに歩いて行った。“どういうこと? なんなの、あの子!”とでも、言いたげだった。
イヌオは時折様子を見に来たが、居間に入ろうとしなかったので、フードと水を浴室に運んだ。一方の「はっぴー」は、ケージの中でピョンピョンと無邪気に跳ねている。
君って……思った以上に活動的だし、やんちゃそう。ボーっとしていたイメージとは違う。
夜、子猫を抱いてもう一度言ってみた。
「こんにちは、はっぴー。少しづつ慣れようね」
はっぴーは私の指を、ペロっと舐めた。
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