学生の心を癒やす犬や猫 米国の「セラピーアニマル」とは?
日本でセラピー犬(や猫)が活躍する場としてまず思い浮かぶのは、老人ホームや病院などだが、アメリカでは裁判所や大学キャンパスにも広がっている。司法の場で活躍する犬(コートハウスドッグ)については、またいずれ書くことにして、ここでは学生たちへの精神的サポートのためにキャンパスを訪問する犬や猫のことを紹介したい。
ワシントン州ベリンハムにあるウエスタン・ワシントン大学(以下、WWU)では、期末試験を控え、ストレスがピークに達している学生たちにひとときの安らぎを与えるため、2009年から年2回、セラピー犬(12頭前後)とセラピー猫(1匹のみ)チームの訪問を受け入れている。
チームというのは、動物とハンドラー(飼い主)のこと。どのチームも、セラピーアニマルの全国組織であるペット・パートナーズなどの団体から認定を受けている。
犬や猫のあの温かい体に触れ、柔らかな毛をなでることがどれほどストレスを軽減するか――。動物が好きな人にとっては、まさに「癒し」。WWUでは多くの学生が実家から離れ、寮やアパートに住んでいるため、自分のペットがそばにいない。遠方から来ている新入生の中には、ホームシックになる人もいるらしい。そんな学生たちに、キャンパスの中で動物とふれあう機会を与えることは、彼らの精神的安定に役立ち、学力の向上につながると大学側も認識しているのだ。
セラピー犬(猫)の訪問期間は、期末試験が始まる前の1週間と試験中の1週間で、合計2週間。その間は大学図書館の一角がセラピー犬コーナーとして確保され、そこに行けば犬たちに会えるようになっている。
私は唯一のセラピー猫であるスモーキーが来る日に合わせ、キャンパスを訪ねた。広々とした図書館に入ると、隅っこの一番落ち着けそうな場所にセラピー犬コーナーがあった。キャバリエとコッカースパニエルのミックス犬キャリーとゴールデンレトリバーのセイジは、それぞれ床に広げたブランケットの上に寝転び、学生たちになでられて気持ちよさそうにしている。
11歳になる猫のスモーキーは、2011年からこのキャンパスに来ているため、おおぜいのファンがいる。この日は日曜日だったが、スモーキーに会いたくてわざわざ大学に来た、という学生もいた。
3年生のアリシアもその一人。1年生のときからスモーキーに会いに来ているという。
「初めての期末試験のとき、すごいストレスだったのが、スモーキーがすっかり吸い取ってくれたの。それ以来、ずっとお世話になってます(笑)」
スモーキーの飼い主で、セラピー犬セイジのハンドラーでもあるジェニーは、この大学の卒業生。母校にセラピー犬の訪問プログラムがあると知り、猫もどうかと提案したのが始まりだったという。大学図書館は、最初、猫については半信半疑だったそうだが、とりあえず一度トライして様子を見ようということになった。その結果、スモーキーはまたたく間にみんなの人気者となり、今日に至る。
まったり、もふもふのセラピー猫スモーキー。もうすぐ引退とのこと、おおぜいの学生たちに惜しまれるにちがいない。
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