猫連れ通勤可、事務所を猫が闊歩、猫手当も… 猫に超優しい会社
猫を連れて通勤OK。オフィスの中を猫が闊歩する――。そんな猫好きには夢のような会社が東京都新宿区にあると知り、訪ねてみた。
(末尾に写真特集があります)
駅から徒歩1分。3階建てビルの2、3階部分に、システム開発や広告の企画・制作を手がけるIT企業「ファーレイ」がある。
扉を開けると大きなテーブルがあり、その上に白黒の大きな猫が“招き猫”のように、行儀よく座っていた。
「この子は『バン』、6歳のオスです。うちの役員が埼玉のゴミ捨て場で保護して飼ったんです。書棚に乗っているのが、『バン』の兄弟『ブラン』です」
代表取締役の福田英伸さんが、猫の頭をなでながら教えてくれた。2匹は赤ちゃんの時からオフィスに来て、哺乳瓶で数時間起きにミルクを飲んで育てたという。
「可愛さのあまり、その時は1カ月くらい社員たちも仕事が手につかなかった(笑)」
書棚の奥にデスクが並び、10人ほどの社員がパソコンに向かっている。と、次の瞬間、バンがデスクに飛び乗り、隣のデスクへと移動していった。なんと、前足でキーボードをちょっと踏み、デスクトップにしっぽも触れた。だが、社員は気にする様子もない。
「コピー機の上にもいますよ」
福田さんが指をさした先には、茶白の猫が小首を傾げて座っていた。棚の奥でも、猫の目がきらり、と光る。
「従業員は全員で15人。家で飼っていない人もいるし、猫が高齢だったり、家が遠くて連れてこない人もいますが、猫が全員そろうと9匹います」
福田さん自身も3匹の猫を家から連れてきている。世田谷区の動物愛護相談センターにいたメスの「V(ヴィー)」8歳と、その姉妹の「うめ」、ボランティアから譲り受けたメスの「昆布巻き」(9歳)。みな保護猫だ。自宅から“3段特性キャリー”を毎日ガラガラ引っ張って出勤する。
「ビルにエレベーターがないので重い(笑)。3匹とも道中は少し嫌みたいですが、職場は好きですね」
ペット関連の会社ならまだしも、なぜIT企業なのに、猫OKなのだろう?
「マンションの一室で起業したのですが、ファーレイの立ち上げのメンバーが猫を飼っていて、『連れてきていい?』という相談から始まりました。私は岐阜の自然の中で育ち、犬や猫が当たり前のようにそばにいました。自分が会社を興すなら、猫の為になることもしたい、と思ったのです」
起業から5年目の2005年に、今のビルに移ったが、「猫が何匹も滞在できること」を家主に交渉したという。
そして2011年、会社に2つの制度を取り入れた。全社員が猫連れで出勤できる「猫同伴通勤」と、保護猫など恵まれない猫を引き取って育てる社員に費用として月5000円を支給する「猫手当」の制度だ。
同社のウエブデザイナー、田代志乃さん(24歳)は、黒猫「すばる」(オス・2歳)と、会社から徒歩5分の(ペット可)マンションから出勤している。
「大学時代に『猫OK』のウエブ制作会社があると知り、気になって応募したんです。面接に来たら、猫がテーブルの周りをぐるぐる歩いていたので『本当にいる!』と嬉しくなりました」
入社する際、会社はペット可の家探しを手伝ってくれた。その後、近所のペットフードショップで飼い主を探している子猫がいると知って、引き取ったという。
「猫に詳しい先輩がたくさんいて、助かっています。私は猫を飼うのは初めてですが、『すばるのウンチが少し緩かったよ』とか『爪が少し伸びてる』とか、私が見落としたことを教えてくれるんです。みんなで見守ってくれて、心強いです」
昼12時。田代さんが、「ごはんですよー」と猫たちに声をかけ、キッチン前で準備をすると、猫たちがサーッと集まってきた。猫も社員も一緒に昼食をとる。食事は日に2回で、次は夜7時だという。
近頃は「猫手当」のある会社として有名になり、「自分も猫好きなので、一緒に仕事がしたい」と広告代理店などから連絡が来たり、取引先が「打ち合わせはそちらに出向きます」と猫に土産を持ってやって来てくれる“効果”もある、と福田さんはいう。
逆に猫で困ることはないのだろうか。
「電話のフックを踏んだり、走ってケーブルを外したりということも、たまにありますが、大きな問題ではありません。猫がいるので、猫アレルギーがひどいと難しいですけど……カーペットをフローリングに替えたり、掃除と換気をよくしたり、できる限り対応しています」
求人票の「従業員数」には猫の数も記入し、「その他条件」には〈職場には猫がいます。動植物に優しい気持ちで接することができる人、優遇します〉と記した。
「会社に利益が出ると、動物保護団体に寄付しているんです。いつの日か、自分もシェルターを作りたいですね」
(藤村かおり)
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