子猫の「通院ストレス」を減らしてリラックスさせる方法は?
動物病院でパピークラスをはじめたのは20年以上も前のことです。昔は動物病院に来ると怖がったり攻撃的になるワンちゃんがほとんどでしたが、パピークラスで他のワンちゃんと遊んだり、診察台でご褒美をあげたり、スタッフが楽しい雰囲気で接することで、今では喜んで来てくれるワンちゃんが非常に増えました。もともとワンちゃんは飼い主さんと一緒に外出することが大好きなので、病院で楽しいことがあれば喜んで来てくれるようになります。
一方、猫ちゃんにとって通院は一大事、そもそも猫ちゃんは自分の縄張りの中で生活することを好み、たとえ大好きな飼い主さんと一緒であったとしても知らない場所に行くことは苦手です。猫ちゃんの診察時には、キャリーケースから出すことも難しかったり、さわると攻撃的になってしまったりして、診察や治療が十分にできないこともあります。
猫はもともと臆病な気質である上、犬のように散歩もしないため外出に慣らす機会もありません。幼い頃から特定の場所で特定の人とだけ接触するというような環境で育った場合にはさらに臆病になり、動物病院での出来事がトラウマになってしまうこともあります。そして動物病院で怖い思いをした猫ちゃんは、次回の診察の時にはさらに怖がるようになってしまうのです。
強いストレスは体にも心にも良くない影響を及ぼすため、こねこ塾では診察台でご褒美を与えるなどして動物病院に慣れてもらうための工夫をしています。また猫ちゃんは不安を感じると隠れる動物なので、緊張している猫ちゃんには隠れているという安心感を持たせるために頭の部分をバスタオルなどで覆ってから、そっと熱を計ったりやさしく体を触ったりするようにしながら診察を行います。
この際、自分の家の匂いのついたタオルを使うことで安心感を与えることができます。幸い、多くの猫ちゃんは診察の間、緊張してもパニックになるより、むしろ固まって動かずにいてくれる場合が多いのです。しかし我慢の限界を越えると、激しく攻撃してきます。パニックに陥っている猫ちゃんを見ると飼い主さんも緊張してしまいますが、「大丈夫よっ!!じっとして~!!」などと大声で叫んでしまうと、飼い主さんの慌てた声にますます緊張度が上がってしまいます。飼い主さんが大丈夫と言っても猫ちゃんには人の言葉は理解できません。言葉の意味よりもその場の雰囲気を読み取るので、静かな声掛けやゆっくりなでるなど、まず飼い主さんが落ち着いてふるまうよう、心掛けてください。
猫ちゃんの場合、ワンちゃんのように喜んで動物病院に来ることは期待できないとしても、ストレスを減らし、診察や治療を受けやすくすることは可能です。猫ちゃんを動物病院に連れて行くときには以下のことに気を付けてみてください。
① 慣れたキャリーで通院しましょう。
動物病院で不妊手術や去勢手術など、嫌なことをする際にいきなりキャリーケースに入れて連れていってしまうと、キャリーケースと嫌な出来事を関連付けてしまいます。するとキャリーを見るだけで逃げてしまうようになります。キャリーケースそのものが恐怖体験と結びついてしまうため、キャリーでの通院が苦痛になります。
48回コラムを参考に、まずはキャリーケースを安心できる場所にしてからキャリーで通院しましょう。ペットホテルや入院時も、可能であれば入院ケージの中に安心できる場所として慣れたキャリーを入れてもらいましょう。
② 慣れた匂いのついたタオルを持参しましょう。
猫ちゃんは匂いに敏感です、体重を計る際に診察台に敷いたり、採血時の保定の時に猫ちゃんにかけたりしてもらうと、ストレスを軽減することができます。ただしタオルをかけられることに慣れていないと、逆にびっくりすることもあるので、自宅でタオルにやさしくくるむ練習をしておきましょう。待合などでキャリーの上からかけてあげることでワンちゃんや知らない人がいても隠れている気分で過ごすことができます。
③ ワクチン接種など食欲がある際の通院には、おなかをすかせて好物を持参して与えるようにしましょう。ペットホテルや入院時などにも慣れた食器や好物を持参しましょう。
④ 日頃から投薬の練習をしておきましょう。(投薬の練習方法については今後のコラムで紹介します。)
⑤ キャリーやタオルに猫用フェロモン剤をかけておくのもリラックス効果が期待できます。
⑥ 同居の猫ちゃんがいる場合、動物病院の匂いをつけて帰ってきた猫ちゃんが攻撃されることがあります。同居の猫ちゃんがいる場合には、帰宅後すぐに会わせず、しばらく分けておきましょう。心配な場合は会わせる前に相手の匂いをつけたタオルで体を拭いて反応を見ておくと良いでしょう。
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