成犬で保護 怖がりなチワワ・ハルが、ペットロスを癒やした
チワワのハルは、飼い主のKazuさんに抱き上げられ、奥様のYumiさんとともにマンションのエントランスにやってきた。うるうるした瞳とフワッフワの毛並みがかわいらしい。触れようとすると「あ、危ないですよ」とKazuさんから言われた。
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ハルは初対面の人が苦手だという。Kazuさんの腕の中で体をこわ張らせ、大きな目が飛び出しそうだ。手を近づけると「ギャフ!」と攻撃してくる。1時間ほどの取材の間に、慣れてくれるだろうか。
ハルが暮らしているのは、都内のタワーマンション。初めて出会う人はもちろん、他の犬も、車の音も怖がる。車の音がする道路の近くでは、固まってしまって歩くことさえできない。マンションの敷地内の庭は、ハルにとって、リラックスしてお散歩できる大切な場所だ。藤やスズラン、ゼラニウムなど、初夏の花が咲く庭で、初対面の人間を警戒しつつ、それでもハルはうれしそうだ。
ハルがKazuさんYumiさん夫妻のもとにやってきたのは2011年のこと。当時で推定4~5歳だった。現在は10歳を超えている。
「過去に何があったのかはわかりませんが、ハルはいろんなものが怖くて攻撃的です。杉並区の住宅街で保護されたそうです。動物愛護相談センターから保護団体のミグノンに引き取られたのが2010年の11月。代表の友森さんは、動物愛護相談センターの端っこの方にうずくまり、左目が白濁していたハルを見て、他の団体が引き取らなそうだと思って、預かってきたと教えてくれました」とKazuさんは説明する。
当時、KazuさんYumiさん夫妻は、ハナというメスのチワワを心臓の病気で亡くしたばかりで、深いペットロスに陥っていた。「ハナのいない現実をなかなか受け入れられず、ハナのいない家に帰るのが嫌で、用もないのに仕事の後、街でフラフラしていることもありました」とKazuさんは振り返る。
「そんなとき、雑誌でたまたま知ったミグノンの譲渡会に出かけ、出会ったのがハルでした。譲渡会でも隅っこの方でキョドッていましたが、なんとなく気になって、1週間のトライアルで連れて帰ることにしたんです」とYumiさんはいう。
初めは触られることすら嫌がり、部屋の中でもリードをつけっぱなし。「おいで」と呼んでも、テーブルの下から出てこなかったという。おなかがすくタイミングを見計らって、手からご飯をあげることで距離を縮めていくしかなかったそうだ。
「こんな調子では、他に家族を見つけるのは難しいだろうと思い、私たちが正式に迎えようと決めました。家族に迎えてからも、ああ、慣れてきたなと思えるまでに3カ月、ハルが心からリラックスして私たちとのコミュニケーションやお散歩を楽しんでいるなと思えるようになるまでは1年くらいかかりました」とKazuさんはいう。
「おなかを見せて寝ていたり、おじさんみたいないびきをかいたり安心している姿を見るのがうれしくて。もっといろんな犬や人とフレンドリーにできたらいいなと思うこともありますが、そうじゃないのもこの子の個性だと思っています。キャベツやレタスが大好きで、サラダの水きり器を回すとキッチンに走ってくるんですよ」とYumiさんが教えてくれた。
休みの日には、お台場にピクニックに行ったり、KazuさんとYumiさんの実家までドライブをしたりと、ハルは夫妻の“一人っ子”を満喫している。
「不思議なんですが、どちらの実家に行っても、私たちの両親には積極的に寄って行って、ひざに乗ったりするんですよ。だから、もしかしたら、年配の方に飼われていたことがあるのかもしれないなと思ったりもします」とKazuさん。
最後に写真を撮らせてもらおうとスマホを向けると、Kazuさんのそばを離れず、舌をハート形にして出してみせた。
この顔の意味が「お前になんかなつかないよ?」なのか「今日はなつけなかったけど、よろしく」なのか。後者であると、とてもうれしい。
(新海三太)
<ハルの出身団体>
ミグノンでは、東京都動物愛護相談センターから犬猫、ウサギなどを受け入れ、動物たちが新しい家族と出会えるように毎月第2日曜日と第4土曜日に譲渡会を開催するなど、さまざまなイベントを企画しています。
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-5
mail:info@rencontrer-mignon.org
HP: http://rencontrer-mignon.org/
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