海外でも人気の秋田犬、観光誘致の「顔」に ターゲットは台湾
国内外で人気の高い秋田犬(あきたいぬ)。英語で「アキタ」と言えば、秋田犬がイメージされるほどだ。発祥の地である秋田県大館市や県は、外国からの旅行客(インバウンド)を増やそうと、秋田犬を観光の「顔」として前面に押し出す。最大のターゲットは台湾だ。
「かわいい! 触りたーい」。6日、秋田犬の雌の「あこ」が、JR大館駅前で観光客らに囲まれていた。4月末、姉妹犬の「飛鳥」とともに「観光駅長」に任命されて初出勤の日、おもてなしに一役買っていた。
米国出身で青森県弘前市から訪れたマドリン・キスペさん(19)は、あこをなでながら「秋田犬は米国でも有名で大好き。また会いたくなるので、観光に役立つと思う」と喜んでいた。映画「ハチ公物語」のハリウッド版「HACHI 約束の犬」を見て、魅了されたという。
あこと飛鳥は交代で、土・日曜の午前9時45分から約30分間、観光客らを出迎える。奈良隆模(たかのり)駅長(55)は「海外では富士山より有名と聞く。多くの方に大館を訪れてほしい」と期待を寄せる。
県も、秋田犬を活用しようと乗り出した。狙いはインバウンドの強化だ。東北6県の中で、秋田は外国からの延べ宿泊者数が最も少ない。昨年は5万6810人で、最多の宮城(18万930人)、2番目の青森(14万5370人)などとの差が目立った。
そこで、秋田の観光ポスターの新キャラクターに秋田犬を起用。昨年11月から今年1月、首都圏の主な駅や車両に貼ったところ、外国人に好評で、ツイッターやフェイスブックで海外へ発信された。
県観光振興課は「秋田を海外にPRする方向性を打ち出せた」と手ごたえを口にする。県内インバウンドで最大の4割を占め、チャーター便も増加中の台湾に狙いを定めることにした。
昨年12月には台湾の人気ブロガー3人を秋田へ招き、秋田犬と観光地を巡る動画を作成。インターネットでの再生数が9万回を超え、台湾から「遊びに行きたい」との声も県に寄せられた。台北の地下鉄では秋田犬が登場する観光動画を放映し、さらなる誘客増を図っている。
その台湾で最も注目される映像の一つが、秋田犬をアイドルに見立てた音楽とダンスの動画だ。大館市など周辺4市町村でつくる観光地域づくり法人「秋田犬ツーリズム」が昨年11月に制作した「Waiting4U(フォーユー)~モフモフさせてあげる~」。再生数は半年間で123万回を超え、その8割が台湾からという。
秋田犬ツーリズムの阿部拓巳専務理事(52)は「今後は秋田に来ていただいてからの楽しみ方を伝えることが課題になる」と話す。県民に身近な存在だった秋田犬が、「ここ掘れワンワン」とほえるかのように、思わぬ「功徳」をもたらしている。
(渡部耕平)
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