こっそり持ち込ませないワン! 「探知犬」が空港で大活躍

手荷物受取所で乗客の荷物を調べる検疫探知犬のタンク号=福岡市博多区の福岡空港国際線ターミナル
手荷物受取所で乗客の荷物を調べる検疫探知犬のタンク号=福岡市博多区の福岡空港国際線ターミナル

 訪日客が急増する中、九州の玄関口・福岡空港で、犬たちが家畜伝染病や違法薬物の流入阻止に存在感を増している。肉製品や果物を見つけ出す「検疫探知犬」と、薬物を探す「麻薬探知犬」。どちらも鋭い嗅覚(きゅうかく)を武器に、こっそり持ち込まれようとする禁止品と水際で闘っている。


■検疫犬 禁止品、座り込み合図


 中華圏の旧正月(春節)を迎え中国人客でにぎわう1月末の国際線ターミナル。手荷物受取所で北京発の到着便から降り立った人たちが荷物を次々と手に取る。そこに検疫探知犬のビーグル犬、タンク号(オス・5歳)と、指示役で飼育管理などを担当する委託業者の紙田陽平さん(29)が現れた。


 検疫探知犬は生肉やハム、ジャーキーといった肉製品や果物を嗅ぎ分ける。鳥インフルエンザや口蹄疫(こうていえき)の蔓延(まんえん)につながる恐れがあるため、海外からの持ち込みが禁止されている。


 タンク号は小柄な体を揺らしてテクテクと歩き、旅客が手に取ったスーツケースを嗅いで回る。その足が、ある中国人女性客のバッグの前で止まった。座り込み、紙田さんを見つめる。発見したサインだ。


 検疫カウンターでバッグを開くと、手作りした生の肉ギョーザが三つの箱にぎっしり。「売るわけではない」などと女性は訴えたが、没収された。他の客の荷物からはピータンやクルミ、ドライフルーツも。加熱処理されているものなどは持ち込みを許された。


 農林水産省動物検疫所によると、福岡空港では2013年度に2頭の検疫探知犬を迎えた。日本に入る国際線を1日3~4便チェックする。15年末までに3372件の持ち込み禁止品を見つけた。


 全国で初めて成田空港に導入されたのは05年。鳥インフルエンザの世界的な流行や、海外の検疫犬が家畜伝染病拡大の防止に貢献していたことが契機になった。現在は関西、那覇など7空港に計24頭いる。いずれもビーグル犬で、嗅覚が優れ、かつ愛らしくて客に恐怖心を与えないためという。紙田さんは「犬が苦手な人もいるので、急に後ろから行かずに笑顔で声をかけ、止まってもらうようにしています」。


 日本政府観光局によると、昨年の訪日外国人客は全国で2403万9千人で過去最多だった。動物検疫所門司支所の小岩井正博次長は「検疫を申請しない客もいる中、犬の嗅覚で効率的に摘発できる」と意義を強調する。能力を買って、福岡空港では新年度にもう1頭増やすという。


(伊藤繭莉)

 

■麻薬犬 偽装工作も嗅覚で感知


 旅行者がうっかり持ち込むこともある肉や果物と違い、巧妙に隠して持ち込まれるのが不正薬物だ。


 台湾から到着し、手荷物受取所のベルトコンベヤーに載せられた、黒いスーツケース。その側面のジッパー部分で、犬の鼻がぴたりと止まった。他の荷物へ行かせようとリードを引いても応じない。


 おかしい――。税関に通報し、検査官がケースを調べると、衣類の間に覚醒剤4・15グラム(末端価格29万円相当)が隠されていた。昨年10月、福岡空港であった事件だ。40代の台湾人の男が覚醒剤の密輸容疑で逮捕された。


 見つけたのは麻薬探知犬のシェパード、マメ号(メス・4歳)。ペアを組む門司税関の男性職員(23)は「甘えん坊で我が強いマメ号ですが、息の合った捜査ができて良かった」とはにかむ。


 財務省関税局や門司税関によると、麻薬探知犬は全国の空港や港に計約130頭いる。犬種は主に、嗅覚が優れているとされるラブラドルレトリバー、ゴールデンレトリバー、シェパードの3種。麻薬探知犬訓練センター(千葉県成田市)で4カ月以上の訓練を積む。合格すれば全国の空港や港で任務に就き、7年間で定年を迎えるという。


 昨年1年間に全国の税関が摘発した覚醒剤や大麻、危険ドラッグといった不正薬物は892件。押収量は1649キロで前年の3・2倍に増え、過去最多だった1999年(2186キロ)に次ぐ規模になった。


 税関関係者によると、麻薬犬が見つけるケースは年間数十件あり、ここ数年増えているという。導入開始の1979年から昨年までに麻薬犬が発見した不正薬物は全国で3・8トンに及ぶ。「犬は先入観を持たないので、人間が気づかないような偽装工作に強い」。門司税関の阿部修・麻薬探知犬管理室長は言う。


(比留間陽介、小野大輔)

朝日新聞
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