犬の専門家を育成「PRODOG」スクール開校

ピースワンコPRODOGスクールの学生募集チラシ
ピースワンコPRODOGスクールの学生募集チラシ

 ピースワンコ・ジャパン事業に携わるスタッフは、保護や譲渡の頭数増に対応して増え続けている。現在、広島県神石高原町の本拠地と、広島、湘南の譲渡センターを合わせ、約35人。事業主体のピースウィンズ・ジャパンは、紛争地の難民支援から日本の過疎地のまちづくりまで幅広く取り組む団体だが、そのなかでもワンコグループは断トツの「最大勢力」になった。

 スタッフの多くは、専門学校や大学で犬の飼育やトレーニングについて学んだ経歴を持つ。しかし、たとえば私たちが手本にするドイツの飼い主テストを受けさせてみると、基礎知識の不足や、動物福祉についての考え方の違いが目に付くことも少なくない。それは個人だけの問題ではなく、学校の教育内容そのものに海外の研究成果を含む最新の知見が反映されていないことも、一因ではないかと思う。

 殺処分ゼロの実現にも、他のあらゆる事業と同じく、優秀な人材こそが何より大切である。そこで私たちはこの秋、欧米の著名なトレーナーや獣医師を含む講師陣から専門的な知識を学べる「ピースワンコPRODOGスクール」を開校することにした。現在、10月に入学する第1期生を募っている。

 スクールは、ドイツのプロドッグスクールとの提携による世界水準の教育内容が最大の特徴だ。スウェーデン、ドイツ、米国からも特別講師を招き、犬種、解剖学、生理学、トレーニング理論、栄養学といった犬に関する基礎知識をみっちり学んでもらう。これらは犬にかかわるすべての人が知っておくべきだが、人に対して警戒心が強く、病気を抱えていることも多い保護犬を扱うとなれば、なおさら重要だ。

 また、シェルターワークに必要な保護・譲渡についての考え方のほか、NPOなどの組織運営や、広報・コミュニケーションの手法などの教育にも力を入れる。実習の場はもちろん、ピースワンコの保護施設。半年間のカリキュラムの終盤には、希望によりドイツへの短期留学もできる。優秀な人はぜひ修了後にピースワンコのスタッフとしても活躍してもらいたいと考えている。

 6月下旬に東京、大阪、福岡などで開いた説明会には、約30人にご参加いただいた。資料請求や問い合わせ、さらに神石高原の施設を見学に来る方も多く、より高い専門性を身につけたいという強い意欲を感じる。

 願書の受け付けと並行し、10月の開校に向けて学生寮の準備などを急ピッチで進めている。このスクールが、殺処分ゼロを支える人材を育て、日本の動物福祉の水準向上にも貢献する場となるようにしたい。

大西健丞
1967年生まれ。NPO法人「ピースウインズ・ジャパン」代表理事。広島県神石高原町にシェルターを設け、捨て犬の保護・譲渡活動に取り組むプロジェクトを運営している。

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この連載について
大西健丞のピースワンコ日記
NPO「ピースウインズ・ジャパン」代表の大西健丞さんが、殺処分ゼロをめざして犬の保護活動に取り組む日々を語ります。
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